相談
入浴剤の説明は簡単に終わらせた。
香りを楽しみながらゆっくりお風呂に浸かってリラックスする物だと。
バスソルトやバスシュガーだったら角質除去とかもあるんだけど、詳しくは説明無理!
アロマオイルの種類と効能の説明からになっちゃうし、作らなきゃいけなくなりそうだし・・・。
だから詳しくは知らないで押し通した。
重曹っぽいのはこの世界にも有ったけど、クエン酸が無いのでバスボムは無理。
そこでハーブティーを代用する事にした。
まぁ結局はハーブの選定と収穫からになるんだけど・・・。
庭のハーブを収穫させてもらいながら、私はちょっと考えている。
バルド家の皆は凄く優しくて、よくしてくれている。
でも私の今の状況って居候なのよね。
申し訳ないから何かお手伝いでもと思ったけど、侍女さんには侍女さんの仕事があるので無理に手伝って仕事を奪う事になってもだし。
牧場とか町に行って・・・とも思ったけど、こちらの都合で呼んだのだから気にしないで欲しいと言われてしまったし。
何よりも
『ちゃんと責任取ってロゼを幸せにするから!苦労はさせないから!』
とルシェに言われちゃったのよね・・・。
責任て・・・。呼びだしたことならもう気にしないでと言ったら、裸を見てしまった事だと言われてしまった・・・。
いや、もう忘れて貰えませんかね?・・・。
そもそも裸みたから責任取るって・・・
そんなの気にしてたら銭湯とか温泉とか行けなくなるじゃん・・・。
あれ?・・・こっちの世界は混浴ってないのかな?・・・
だとしたら・・・そういう考えになってしまうのかな?・・・
ん? 責任取るってなにさ?
まさか結婚・・・とか?・・・
ゴフッ ゴンッ
テーブルに思い切り突っ伏した・・・。
落ち着いて私。
私28よ? ルシェはまだ16よ? 12歳差・・・有りかな?有るかもしれない?
んでも第一子だから王太子って事になるのよね?忘れがちだけど。忘れてたけど・・・。
王太子なら立場上の政略結婚とかあるんじゃないのぉ?
宰相とか側近が家柄がー!とか言うんじゃないのぉ?
あ・・・そうか小さな島国だからそういうの無かったんだっけ。
じゃあいいかな。
いやよくないだろ私。
まだ16よ?未成年よ?犯罪になるじゃん!
あ、異世界だから関係ないのかな?・・・
じゃぁいい・・・よくないから!
そもそも責任取る=結婚と決まった訳じゃないし。
ルシェの気持ちも大事だし!
私の気持ちだって・・・ うん、考えた事なかったや。
ただ3兄弟見て可愛いな、微笑ましいな。だったし!
妄想広げ過ぎだよ私。うん、いったん忘れよう。
これからの事ちゃんと考えないとね!
このままここに居るのもどうなんだろうな・・・。
あまり向こうの文化や風習持ち込むのもなぁて思うし、でも自分の好きな事もやりたいと思うし。
3兄弟やバルドさん一家に影響が出過ぎてもなぁ・・・。
もし、また精霊が増えたりしてこの屋敷に集まったりしたら精霊屋敷とか噂になりそうじゃない?
皆声は聞こえなくても姿は見えるらしいからね。
噂になったら海の向こうの他国にも聞こえそうじゃない?
貿易や国交はある訳だし。
そうすると、面倒な事になったりしたら嫌じゃない?本当に面倒だし・・・。
この家族巻き込むとか国を巻き込むとかもっと面倒だし嫌だしね。
だから、ここを出て小さな家でスローライフでもいいかなぁと思って居るのよね。
それをどうやって切り出そう・・・。
「すみません。相談があるんですけど。」
夕食後のティータイム。私は意を決して口を開いた。
混浴とか裸見られたとかは置いておいて。
向こうの知識や風習・文化をあまり持ち込みたくない事。
でも自分のやりたい事はひっそりとやりたい事。
このまま精霊が増えたりしたら他国で噂になって面倒事になるのが嫌な事。
自立してスローライフをしたい事も伝えた。
『私達が嫌いになったとかでは無いのね?』
「勿論! 感謝してるし大好きですよ。」
『自立したい・・・か。なるほどな。
ロゼは自立して働いていたんだったな、向こうでは。』
「はい。働いて独り暮らしでしたから。」
『確かにさ、ハーブソルトもロゼには特別な物ではないんだよな?
でも他国にまで噂は広がっているし。』
「うん、まさかあんなに噂になるとは思わなかったのよ。」
『他国の聖女様とロゼとはちょっと違うのよね。
まあロゼは異世界から招いたから仕方がないのだけど。』
『あまり目立たない方が良いという考えは僕も賛成かな。』
『遠くへ行ってしまう訳ではないのよね?ロゼ姉様。』
「うん、ここの北にある森が広大でしょ?
だからバルドさんの許可が貰えれば森の何処かに住みたいなと思ってるの。」
『森か。よし、いいだろう。 ただし条件がある。』
「条件? なんでしょう?」
『月に1回は元気な顔を見せて、一緒に食事をする事。
これまで通り家族として接する事。
どうだろうか?』
「え? それが条件ですか?」
『ああ。』
『だめよ、まだあるわよ。』
「え?」
『一人で無理をしない事。困ったら私達に遠慮なく相談する事。』
ニコリと微笑むアルテシアさん。
本当になんて優しい人達なんだろう。
私の気持ちや考えを理解して受け入れてくれる。
否定したり、ここに縛り付けようなんて考えは全く無くてなんて有難いんだろう。
むぎゅぅー
バルドさんとアステシアさんに抱き着いてしまった。
『じゃあ俺、毎日会いに行く。』
『僕も!』
『私も!』
「あ、それは駄目!」キッパリ
『『『 ええー・・・ 』』』
「だって3人共勉強があるでしょ?社交とかもあるでしょ?」
『『『 ぅぅ・・・ 』』』
「何も予定が無い時、バルドさんとアルテシアさんの許可が出て夕方までには帰宅する。
それが守れる日ならいいよ?」
ショボンとしてた3人の顔がパッと明るくなった。
うん、可愛い。すごく可愛い。この可愛い笑顔がまったく見れないのは嫌だ。
だから住むならこの敷地内の北の森だと思ったのよね。
『ならば話は纏まったな。
森の何処に住むか、それを考えないとだな。』
バルドさんが地図を持って来て広げた。
うわあ、これバルドさんの個人所有の土地よね? 広すぎない?・・・
と眺めていたら、すっと1か所指差された。
『ここがよいのではないか?』
「?!」
『『『『 !!! 』』』』
そう言ったのは先日ラッコとカワウソを連れて帰ったお兄さん。
行き成り湧き出てくるのは止めてもらっていいですか?心臓に悪いんですが?
『此の方は? 精霊か?』
「そうみたいです。」
『ふむ、指差した場所がよいと精霊が言っているのか。
ならば明日 見にいってみるか。』
「そうですね。実際に場所をみないと判らないですし。」
『じゃあ明日は皆でピクニックね。』
アルテシアさん、すごくポジティブ・・・。
でも楽しいからいいよね。
やっぱりこの家族って素敵だなぁと思う。
皆がこうやって優しい雰囲気で包み込んでくれるから
私はここに呼ばれても自分でも意外なほど馴染めたし悲観する事も無かったし。
もう少し落ち着いてきたら、勇気を出してお父さんお母さんと呼んでみようかな。
2人はどんな顔をするだろう。驚くかな。笑ってくれるかな。ふふふ
もう少し待っててね、まだまだ恥ずかしいから。
読んで下さりありがとうございます。
明日から更新が 1日に1~2話づつとなります。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。




