蛙の子は蛙
何を迷っているのです?殺してしまえばよいのですよ、フフフ
キランと眼鏡を光らせて冷たい目線で微笑む和服姿の彼
ああ、彼ならそう言いそうだと思って目が覚めた。
私がハマっていた乙女ゲームの推しキャラの彼。
なんで今この夢を見たんだろう・・・。
私の中にお花畑に対する殺意があるのかな、あるかも?いやいやダメダメ。
そう言えばずっとディーヴァの姿が見当たらない。
どうしたんだろう?大丈夫かな・・・。
『心配ない。今戻った。』
タイミング良く現れたディーヴァはやっぱり疲れてヘロヘロになっていた。
「大丈夫?」
『この大陸の各国の聖女とそれを守護する精霊に会ってきた。』
それは・・・時間かかるし疲れるよね・・・。
気休めにしかならないけどお茶とお菓子を差し出す。
『まず魔国の聖女だが・・・まだ3歳の幼子であった・・・。』
えぇぇぇ・・・。
『物事が解るようになるまでは精霊と遊ぶだけでもよいと判断したのであろう。
他に聖女候補も居なかったようだ・・・。』
なるほど、確かに何事も起きて無ければ精霊と遊ぶだけでも最初はいいよね。
大きくなって色々解るようになったら各所を周ればいいだろうし。
『次に山河の国だが・・・。ここは聖女がおらぬ。必要ないと言った方がよいか。』
と言うと?・・・
『山河の国はエルフが多いのでな。聖女がおらずとも精霊と交流が出来るのだよ。
エルフの長からは可能な範囲で協力すると言って貰えたよ。』
なるほど。それはありがたいね。
でもエルフの事は本には書いてなかったな・・・。
『普段はエルフの特徴を隠して暮らしておる。
太古にはエルフを利用しようとしたものも居たのでな。
ちなみにこの国にもエルフが少しは居るぞ?』
なんですと?! それは気付かなかったなぁ。
でも正体を隠したい気持ちは解るかも。
長寿だったり魔力の扱いが上手かったり、変に利用されても嫌だもんね。
私もなるべく目立たないようにしてるしね・・・。
『鉱石の国・商の国・海の国 この3国については消極的ではあるが協力は可能だと返事を貰った。』
なるほど。クレハが自然がない場所はキツイって言ってたもんね。
私だってそんな場所出来れば行きたくないよ・・・。
協力してくれるのはいいけど、何をどうするかよね・・・。
魔の国は魔導士を追放する時に何も魅了対策をしなかったんだろうか・・・。
『それなのだが・・・。
魔封じの枷をはめさせたらしいのだがな・・・。』
「その枷を姫巫女が外したとか?」
『いやその枷を外せるのは一部の高魔力の者だけだ。』
「つまり国王とか宰相とか?」
『うむ。その宰相の娘が追放された魔導士だ・・・。』
ちーんっ
頭の中で仏壇にあるお鈴が鳴った。
娘が可愛くて枷外しちゃったかぁ・・・
そっかぁ、魔の国の宰相の娘だったかぁ・・・。宰相も馬鹿だったかぁ・・・。
だめじゃん。
そうなるとバルドさん達の会議はどうなってるんだろう・・・。
なんだろうね、こういうのを平和ボケって言うのかなぁ?
今まで国同士の大きな争いも無く平和にくらしてたから危機管理能力が麻痺してますみたいな?
禁術使って国追放されるのに枷外すとかないわー・・・。
追放されるまで親子であっても接触避けなさいよぉー。
見張りも付いてなかったの?それともワイロでも渡した?
他国になら被害が出てもいいとか思ってるのかな?
ああーもお考えるのも嫌になって来る。
ムカつくなぁ、私のまったりスローライフを返せー。
ルシェやラファを返せーー!!
ばふっと枕を投げたら、丁度ドアを開けたバルドさんに当たってしまった・・・。
『ロゼ・・・。』
「ごめん・・・。」
『いやいいんだ。気持ちは解るからね。
会議は一旦中断したよ・・・。』
「そっか、お疲れ様だね・・・。」
お互いに力なく笑う。
『今後は魔の国抜きで話し合う事になりそうだよ。』
「そうなんだ。やっぱり宰相が問題あり?」
『国王もだな・・・。』
「国王もかーいっ!!」
思わず叫んでクッションまで投げてしまった・・・。
どうなってるのよ魔の国・・・。
『宰相は娘と約束を交わしたから大丈夫だと思ったと。
国王は宰相を信じているから大丈夫だと思ったと・・・。』
んな訳あるかぁぁぁぁと叫びたかった・・・。
約束が守れるならまず魅了と言う禁術を使わないでしょうよ。
信じるのはいいけどしっかり確認はしようよ。第三者の目でさぁ・・・。
そもそも自分の王子も攫われて・・・るよね?あれ?
魔の国の王はそんなに焦って無さそうだよね?どこか他人事みたいだよね?
「バルドさん、魔の国の王子は攫われてないとか?」
『うむ、魅了が使われた事が発覚した後に王族には耐魅了の魔道具が使われているらしい。』
「いやいやいやいや、だったらその時に各国にも警戒を呼びかけようよ・・・。」
『まったくだ。私を始め他国の王も呆れていたよ・・・。』
「聞きたくないけど一応聞くね? 魔の国は今回の件をどう始末するつもりなの?」
『捕まえて遠い島にでも連れていくと・・・』
「いやそれ駄目でしょ・・・。
距離とか関係なく攫われたじゃない。
遠くで同じ事繰り返すだけじゃないよ。
遠い他の大陸の人まで巻き込む事になるじゃないよ。
なんの解決にもならないよそれ。
ルシェやラファは戻って来れるの?
魅了状態の他の王子達は解除して貰えるの?」
『言い聞かせるからとしか言わないんだ・・・。』
「・・・。駄目過ぎる・・・。」
殴っていいかな? 親子共々殴っていいかな?
落ち着け私・・・。
「他の国の王達は何と言ってるの?」
『何が何でも息子を取り戻すと。
鉱石の国などは国交を断つとも言っているよ。』
「取り戻すといっても・・・。あのお花畑がすんなり返すとも思えないし。
あっさりと魅了解除をするとも思えないよね・・・。」
『ロゼ。やっかいなのはそれだけではない。
相手が魔導士と言う事がやっかいだ。
魅了が使えると言う事はそれなりに魔力が高いと言う事だ。』
ディーヴァ?
『ルシェやラファが捕らえられている部屋に転送防止の魔法陣が描かれていた。
故に念話は出来ても連れ帰る事が出来なかったのだ。』
魔法陣て物があったのね・・・、それはまたやっかいだよね。
魔法陣手物理的な破壊でも壊せるのかな?
それとも魔法攻撃のみかな?
『どちらも無理だ。術者が解除するか死亡時のみ・・・だな。』
・・・。
やっかいていうか、めんどくさいというか・・・。
いっそ・・・。
殺してしまえばよいのですよ、フフフ
推しキャラの顔が浮かんだ・・・。
気分的には「ですよねぇー」と言いたい。言いたいよ?
でもさぁゲームの中じゃないし夢の中とかでもなくて現実なんだよね?異世界だけど・・・。
ゲームだったらまだよかったのに・・・。
ゲーム?・・・
「ねぇ、この世界にリフレクって魔法はあるのかな?」
『古代魔法にはあったと聞く。』
「今は?使える人居ないの?」
『居ないと思う。』
「そっかぁ。じゃあさ魔法は鏡に反射する?」
『普通の鏡では無理だな・・・。』
「魅了は目が合うと掛かるの?それとも目が合わなくても見つめられたら掛かる?」
『目が合うと掛かる、だったはずだ。』
魔法とかエルフとかファンタジーな世界ならリフレクとかあって欲しかったよ、うん・・・。
無いのなら仕方がないよね・・・。
じゃあ目が合わなければ魅了は掛からないのよね?
解除させるにはどうする・・・。
そもそも魅了掛けられた状態ってどうなってるんだろう?
『そうだな。解り易く言えば強制的な盲目的な愛の状態とでも言えばよいか。』
ゴフッ・・・
何かなその盲目の愛って・・・
ん?でもさ・・・。
盲目的な・・・ていうなら、よくある 真実の愛を見つけたから・・・的なので目が覚めて解除されたりはないのかな?・・・




