帰宅
「うわぁー、凄いね。ここだけ春みたい!」
お昼休憩を兼ねて立ち寄ったのはクレハが教えてくれたエリカの群生地だった。
色とりどりの小さな花が一面に咲いていて綺麗な場所だった。
活気あふれる港町も素敵だったけど、やっぱりこうゆう自然豊かな場所の方が好きだなと思った。
たまに行くぶんにはいいと思うのだけど、人が多すぎるのはやっぱり苦手だった。
「癒されるー。」
『うん、そうだね。』
クレハは花の中に埋まって寝そべっている。
やっぱりクレハも疲れていたんだろうなぁ。
何事もなければ明日の夕方には森に到着予定だ。
2~3日ゆっくりしたら、村へ出発かな。
出来れば早めに廻って戻って来たい。
留守の間もルシェとディーヴァで冬支度を進めておいてくれるとは言っていたけど
保存食の準備とかは私がやらないとだしね。
それにちょっと作ってみたい物もあった。
あのミニチュア翁に座布団とちゃぶ台をね? 似合うと思うんだぁ。
囲炉裏とか火鉢とか畳とかドールハウスみたいに作ってもいいかなと思ったけど
残念な事に私はそこまで器用ではないのよ・・・。
半纏とかも作って見たかったけど・・・裁縫は苦手なのよ・・・。
なので座布団とちゃぶ台くらいなら、なんとか出来そうかなと・・・。
『座布団とは?・・・ちゃぶ台とは?・・・』
えーっと・・・。
四角いクッションみたいな感じ?・・・床に座る時に底冷えを防ぐ物?かな?
ちゃぶ台は・・・丸いローテーブルみたいな物かな。
『ふむ・・・。』
うん、この世界では想像しにくいかもしれない。
家の中で床に座って食事をするって事がないもんね。
でも翁に似合うと思う。
『私には似合わないのか?』
その服だと・・・どうなんだろう?似合わなくはないと思う。
でもクレハなら着流しとか似合いそうよね。
『着流し・・・』
う・・・説明しにくい。うーん。帰ったらイラストで説明しよう・・・。
着物から説明になるだろうし。
そんな会話?をしながら昼食を済ませ、再び移動を開始する。
青藍は久々に自分が活躍できるとご機嫌だ。
港町滞在中もちゃんと覚えてたからね?忘れてた訳じゃないからね?
そりゃちょっと刺身でテンション上がった時は忘れてたけど・・・。
ブフゥー
ちょっとぉ。溜息付かないでよぉー。
夜は森の手前の少し開けた場所でデントを張った。
夕飯はなんとクレハがポトフを作ってくれた。
精霊って料理もできるの?!
『ディーヴァと私はやろうと思えば可能だ。』
なるほど?・・・理屈がよくわからないけども。
まぁ美味しかったからいいや。 美味しいは正義だと思う。
そして宣言通り、寝る時はラファの腕枕・・・。
『ロゼ 良い匂いがする。』
「えぇ?!」
フフフとラファは嬉しそうだったけど、私は落ち着かない。
この状態で眠れるのかな私。
なんて心配はどこへやら。ぐっすりと熟睡しました、はい。
私の危機感何処行った? 疲れてたのかな?疲れてたんだよね?疲れてたって事にしておこう。
昨日の残りのポトフとパンで朝食を済また後、テントをたたんで焚火の始末もして出発。
パカポコと青藍に揺られて森林を進んで行く。
『この分なら数日のうちに初雪が降るやも知れんな。』
『そうだね、そろそろ降るかもだね。』
「そっかぁ、初雪が降ったら星祭りがあるんだっけ。」
『うん、その時はロゼもうちに来るんでしょ?』
「うん、そのつもりだよ。」
楽しみだねぇなんて話してて何かを忘れているような気がした。
なんだっけ?・・・
・・・。
まぁそのうち思い出すでしょ・・・。
星祭りかぁ、楽しみだな。初めての季節イベントだし。
クリスマスの代わりに星祭りかなんて思ったのよね。時期がずれるけど。
こっちにはクリスマスが無いんだもんねぇ。
まぁちょっとした飾りつけをしてチキンとケーキでクリスマスもどきをやってもいいかもしれない。
プレゼントも用意して・・・ん?
プレゼント?! そうよプレゼント!
星祭りで皆にプレゼントをって思ってたんじゃないよ。
思い出したー。サシェにしようと思ってハーブも乾燥させてあるんだった。
帰ったら作らなきゃ。
リースもいいなと思ってドライフラワーも用意してあったハズ・・・。
思い出してよかったぁ・・・。
遠くに見慣れた風景が見えた。
帰ってきたー!たった1週間なのにすごく懐かしい気がした。
青藍の足も心なしか早まった気がする。
「ラファ、一旦家に荷物置いてからお屋敷に行くね。」
『解った。待ってるね。』
ラファと別れて家に着けばデイーヴァ・マルス・ヴィー・ナディが待っていた。
「ただいまー!」
『『『『 おかえり! 』』』』
荷物を降ろして家の中に運べば 虎徹が駆け寄って来た。
ばふっと飛びついて来てベロンベロンと顔を舐めながら尻尾をブンブン振っている。
それを見ていたマルスとヴィーもモフモフ姿になってやって来る。
ベロンベロン スリスリ
わかったから、わかったから虎徹落ち着いて?マルスとヴィーも落ち着いて?
翡翠は やっと戻ったの?ふーん みたいな顔をしてソファから降りてこない。
このツンデレさんめ!甘えたいくせにー。
『息災でなにより。』
「うん。ディーヴァも元気にしてた?」
『うむ。見ての通りだ。』
うん、元気そうだね。
でもその手はなにかな? 両手を大きく広げてニコニコしてるけど。
何故首をかしげているのかな?
もしかしてそこに飛び込んで来いと?・・・
「あ、そうだ。」
見なかった事にして荷物をガサゴソ漁った。
あったあった。
「はい、ディーヴァにお土産。」
『お土産? 私の?』
「そうだよ。約束したでしょ?」
それは白い珊瑚で出来たアンクレットだ。
似合いそうだと見つけた時に買っておいた。
ディーヴァはさっそく右足に着けて
『どうだい?似合うかい?』
ふふふと嬉しそうにしている。
うんうん、似合うね。
「じゃぁちょっとバルドさんの所に顔出してくるね。」
『解った、気を付けて行ってくるのだよ。』
青藍に乗って屋敷に向かえば、中から楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
ラファも久しぶりに家族と会えて嬉しいのかな?
「ただいまぁ。」
と声を掛ければハイデアが駆け寄って抱き着いて来る。
ルシェもおかえりと駆け寄って来るけど、抱き着くのはハイデアによって阻止された。
『えー、なんでだよ!』
『ルシェ兄様は冬の期間ロゼ姉様と一緒に過ごすんでしょ!』
『それはそれ、これはこれだろ。』
『だめ! ラファ兄様も来ないで! 今日は私が独り占めするんだから!』
『えー、ハイデアそれはないだろう。』
『じゃぁ母様はいいでしょう?』
『だめ!母様は父様で我慢して!』
『えー、だって父様はいつも居るじゃないー。』
ぶふっ アルテシアさんもだめなの?
って、バルドさんで我慢してって、ハイデア言い方をね?
アルテシアさんも えー じゃなくてね?
あああ、バルドさんが拗ねちゃった・・・。
「ハイデア、ちょっと離れようか? お土産が渡せないよ?」
『お土産! なにかしら?』
「あっちでソファに座ってからね。」
ラファと2人で皆にお土産を渡しながら港町での出来事を報告した。
アルテシアさんとハイデアは南部の小物に興味を持ったようだ。
バルドさんは魚介に興味を持ったようだった。
ルシェは刺身を食べてみたいと言った。
それは港町まで行かないと無理だねぇ。
いつか皆で行けるといいね。バルドさんは仕事が忙しいかもだけど。
結局話が盛り上がって夜遅くなってしまい、その日はそのまま泊まる事になった。
一緒に寝ると言ってた皆を追い出してハイデアは満足そうに私にくっついて寝ていた。
そろそろ一人でゆっくり寝たいんだけどな・・・。ハハハ・・・。




