お茶屋さん
目を覚ますと2人はすでに起きていた。
うーん、なんだか疲れが取れてない気がする・・・。
まぁね、あの状態でリラックスして眠れる方が不思議よね。
気を取り直して、着替えて朝食を済ませたら町の散策といきますかぁ。
・・・。
「着替えるから後ろ向いててくれないかな?」
『気にするな。』
『僕は気にしないからどうぞ。』
2人でニッコリしてないで!
強制的に後ろを向かせようと首をグイグイやってみる。
『イタタタタ、首が痛いではないか。』
そうでしょうね。わざとだもん。ほらさっさと後ろ向く!
『気にせずとも・・・』
スパコーンッ
次は拳にする? ん?
その様子を見ていたラファは静かに後ろを向いていた。
ふぅ、おかしいな。私こんなキャラだったっけ?
もっと大人しいキャラだった気が・・・しないね。
最初から片手桶投げてたね、アハハ・・・。
着替えた後は1階に降りて朝食をいただく。
ふわふわオムレツ美味しい~。
わかめスープも美味しい。
乾燥わかめか塩蔵わかめが在ったら買って帰ろうかな。
今日の予定はお茶屋を探して、屋台でお昼を見繕って、公園で精霊と交流かな。
後は港も見てみたいかも。運河よければ水揚げしたばかりの魚とかありそうだし。
よし、まずは港へ行ってみようー!
「ラファ港へまず行こう。水揚げされた新鮮な魚がみれるかも!」
『いいね。行ってみよう!』
港では人だかりが出来ていた。
なんだろう?
近くに居たおじさんに聞いてみた。
「どうかしたんですか?」
『ああ、なんだか見た事も無い魚が網にかかったらしい。』
『それがデカくてな。誰も見た事がないから食えるのかもわかんねえんだよ。』
なるほど? 見た事も無い大魚が獲れて騒いでるのね?
どれどれ、どんな魚だろう。
ぶっ
クエじゃん・・・。
私が知ってるクエよりかなりデカいけどクエじゃん。
たぶん食べれるよね?これも。
『食べれるよ。美味しいよ。』
うんうん、そうだよね。刺身か鍋だよね。
って、ん? 今の声は誰?
『ここだよ。』
人混みの中に これまた小さな男の子が。
て事は君も精霊だね?
『うん、皆に教えてあげて?美味しいんだよって。』
解ったよ。クエのおいしさは知ってるからね。任せて!
「あのぉー。その魚、美味しいですよ?」
おぉ?と声があがる。
「クエと言う名前の白身魚で 程よく脂ものっているので刺身か鍋がお勧めですね。」
『姉ちゃんは食った事あるのかい?』
「私の故郷では高級魚でしたよ。頻繁には食べる事が出来ませんでしたが美味しかったです。」
『『『 ほぉー 』』』
『じゃあ捌いてみるか。』
『これだけデカいから皆で食えそうだしな。』
『姉ちゃんも食うか?』
「食べたいです!あ、でも私旅行者なので。」
『じゃあまたウチに食いに来るか?』
「トマスさん!いいんですか? 夕飯に頂きたいです!!」
『おう、任せときな。刺身と鍋でいいんだよな?』
「はい! やったね、ルファ。 クエだよクエ!高級魚だよー!」
『ロゼがそんなに喜んでるって事は美味しいんだよね?楽しみだね!』
うんうん、思わぬ所で夕食が確定したよ、ラッキー。
楽しみだなぁ。ふふふ。
ついでに魚市場もウロウロ。
さすがだな、新鮮な魚がいっぱい!
でもちょっと持って帰るのは無理よねぇ、残念だ・・・。
ん?あれは・・・。本節じゃない!マジかー!!
買うわよ、買ってかえるわよ!
密封に近い状態で冷蔵保存すれば1~2年はいけるはず。
まあ早めに使い切りそうだけど。
取り敢えず2本買ったわよー!昆布と塩蔵ワカメも買ったわよ! 満足!
おっと忘れない内にお茶屋さんも探さないと。
見つけたー。
日本茶というよりは中国茶に近かった。 緑茶も黒茶も白茶もあるじゃなーい!
茉莉花茶に菊花茶もある。
買うわよ、勿論買うわよ! ふふふ、うふふふふ。
ヤバイ怪しい笑いになっちゃった。
あら? 不思議そうに菊花茶を見てるわねラファ。
ああ、そうか。馴染みがないと不思議よね。
「ラファ。菊花茶に興味がある?」
『うん、これって花だよね?』
「そうよ。菊って花のお茶だよ。目の疲れにいいし香りもよいんだよ。」
『これはどうやって煎れるの?』
「カップにこの花を1つ入れてそのままお湯を注ぐの。
じっと待ってるとね、花がゆっくりと開いていくのよ。」
『へぇ。面白いね。父上と母上に買って帰ろうかな。』
『よかったら試飲してみるかい?』
「え?」
店主らしきおばあさんに声を掛けられた。
試飲と言っても菊花茶は1杯につき1花使うし・・・。
『遠慮はいらないよ。お姉さんは知ってるみたいだけど、そっちのお兄さんは飲んだことが無いんだろ?まずは味を知ってもらった方がいいと思ってね。』
いいのかな?けして安いお茶じゃないよね?
『ばあちゃんが良いって言ってるから飲んであげて?その方がばあちゃんも嬉しいと思うから。』
おや?君はおばあさんに懐いているね。
そうだね、ありがたく頂こうか。
「ラファ、ありがたく試飲させてもらおうか。」
『うん、おばあさんありがとう。』
おばあさんは菊花茶と一緒に小さな月餅も出してくれた。
まさかこの世界で月餅を食べれるとは思わなかった。
『うわぁ。本当だ。凄いね。カップの中でゆっくりと花が咲いてるよ!』
ラファの眼がキラキラしている。うん、可愛いねラファ。
結局私は小袋のお茶を5種類と茉莉花茶の大袋を1つ買い、ラファは菊花茶と茉莉花茶を買っていた。
「ごちそうさまでした! 無くなったらまた来ます!」
『また来ます!!』
お茶屋を出て、お昼が近くなったので公園に向かいながら露店を見て回る。
貝の浜焼きや烏賊焼きの香ばしい匂い。
魚屋肉の串焼きもある。どれも食欲をそそるいい匂いだ。
キュゥーとラファのお腹が鳴った。
笑っていたら私のお腹も鳴った。 ぐぅ・・・。可愛くないな私のお腹の音。
「1つづつ買って半分こしようか。」
『うん!その方が色々食べれるよね。』
『私はあそこで売っているまあるいフワフワの揚げ菓子が食べたいのだが。』
「はいはい、クレハも一緒にたべようね。」
見た目は美青年なのにこうゆう子供っぽいとこもまた可愛いよね。ふふふ
じゃあクレハ希望のフワフワ揚げ菓子を買って、他は何にしようかな。
「ラファはどれが食べてみたい?」
『そうだな。あそこの魚の串焼き食べてみたい。』
「じゃあそれも1つ買おう。私は・・・あっちの唐揚げっぽいのにしようかな。
あのサラダもおいしそうね。」
幾つかの食べ物と飲み物を買って、公園で座る場所を探していると
『ここ。ここから港が見えるよ。』
漁港に居たさっきの精霊が教えてくれたのでそこに移動する。
「おぉ~、確かに港が一望出来ていいねぇ。」
『うん、海がキラキラして綺麗だね。』
これ夕日が沈む頃も綺麗なんだろうなあ。
そう思いながら買ってきた昼食を食べていると精霊たちがチラホラ集まって来た。
持って来ていた焼き菓子をテーブルに広げてどうぞと声を掛けておく。
精霊たちは食べながら色々と話して聞かせてくれる。
この町の人は皆働き者で明るくて元気なんだとか。
逃げ出したタコを捕まえようとして墨を掛けられたとか。
お互いに言葉は解らなくてもお菓子屋果物をくれるとか。
うん、この町の人達は精霊とも上手く共存してるみたいだった。
どの精霊も皆いい笑顔だもんね。見ているこっちまで嬉しくなっちゃう。
精霊から聞いた話をラファにも話してあげたらやっぱりラファも嬉しそうだった。
クレハもお菓子を食べながら嬉しそうにニコニコしていた。
気が付けばすっかり夕方になっていたので、ついでに夕暮れの港も少し眺めてトマスさんのお店に移動する事にした。
精霊達はまたねと手を振りながらそれぞれの場所に帰って行った。
『お腹空いたね、ロゼ。』
「うん、お腹空いたね。お店に行こうか。」
『うん。』




