表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/40

ルシェの受難

今回はルシェ目線の話です。

最近、朝晩が冷え込んで来た。

後1ヵ月もすれば本格的に冬となるだろう。

ロゼを呼び出したのは初夏の頃だったろうか。

家族の中で俺が一番魔力が強かった。

だから俺が儀式を行ったのだが・・・。

まさかあのような姿で現れるとは思わなかった。

だから咄嗟に動く事も視線をそらすことも出来ずに固まってしまった・・・。

結果としてロゼの姿は俺の脳裏に焼き付いてしまった・・・。


裸で片手桶を握って・・・


思えばすぐに俺のマントなり服なりで覆い隠せばよかったのだ。

だが俺は動かなかった。いや動けなかった。

初めて見る女性の・・・裸姿・・・。

あの片手桶が スパコンと飛んでくるまで・・・。

額に受けた衝撃で我に返りはしたが、正直どうしようと思った。

異世界から来たばかりの、おそらく未婚の若い女性。

女性が裸を見られるなどと、あってはならないだろう。

これは責任を取るべきだろうなとも思った。


どうやら彼女は入浴中にこちらへ呼ばれてしまったようで、俺が呆けてしまったせいで湯冷めし風邪をひいてしまったようだった。

更に申し訳ない気持ちになってしまった。

俺が手早く対応していれば少なくとも彼女が風邪を引き熱を出す事は防げただろう。

詫びる俺に気にするなと微笑んでくれたが、その微笑みは少し困って居たような顔だった。


  【あの時は申し訳なかった。

   まさかその・・・予想外の姿で現れたもので・・・。】


うん、あの言い方は駄目だったな・・・。つい自嘲してしまう。


その後彼女と過ごすうちに 俺の中になんとも言えない感情が芽生え始めた。

大人びているかと思えば 子供っぽく無邪気な時もある。

向こうでは28だったと聞けばそれもどこか納得が出来た。

そんな彼女は前向きで、彼女が笑えば俺もつられて笑い

彼女が喜べば俺も嬉しくなり、彼女が悲しんでいれば守りたい、傍に居たいと思う様になっていった。

最初は単に責任からだったかもしれない。

だが弟が、ルファが彼女にくっついて甘えたり、彼女の傍に居るとなんとも言えない気持ちになった。

弟の事は好きだ、妹も。 溺愛してると言ってもいいかもしれない。

そんな弟でさえ、彼女の近くに居るとなんとも言い難い気持ちになってしまうのだ。


その気持ちが何なのか、それが解ったのはハイデアの見合いでだった。

隣国の王太子との見合いで、頬を染めるハイデアを見て何とも言えない気持ちになった。

ああ、これが嫉妬という物なのかもしれない。

ハイデアがこの手を離れてしまうのが、寂しくもあり悔しくもあったのだ。

だが妹の恋を邪魔する気はない。

その時思った、ルファが彼女と傍に居ると沸きあがるこの気持ちも嫉妬だったのだなと。

常に傍に居たい。彼女を笑顔にするのが自分で在りたい。彼女の笑顔を守るのが自分で在りたい。

彼女の笑顔を曇らせぬ様、この手で守り続けたい。


この気持ちが愛と呼べる物に育っているのか、自分ではまだ解らずにいた。

産まれてからずっと恋だの愛だのとは無縁だったからだ。

町に出かけた際 何度か女の子から声を掛けられた事はあったが、ただそれだけだ。

興味が持てなかった。

いずれは両親の様に恋愛をして結婚したいとは思って居た。

だがそう思えるような相手とは出会ってこなかったのだ。

だから彼女に、ロゼに対する気持ちが愛と呼べる物なのか自信が無かった。

自分のこの気持ちにどうすべきか迷いもしたが、ハイデアに婚姻話が持ち上がったくらいだ。いつか俺にもそういった話が出てくるかもしれない。

そうなった時に迷っていたら・・・。

後悔するかもしれないと思った。自分のこの気持ちが何なのかはっきりさせたいとも思った。



「父上、母上。相談があるのですが。」


庭でティータイムを楽しんでいた両親の元へ声を掛けた。


『あら、どうしたの?』

『なんだい?改まって相談とは。』


俺は自分の気持ちを素直に両親へ話した。

そして自分の気持ちを確かめる為にもロゼと共に一冬過ごしたいと伝えた。

両親は少しだけ驚いていた。

少しだけと言う事は薄々俺の気持ちに気付いていたのかもしれない。


『そうねぇ。ロゼは成人済みだし。ルェももうすぐ成人だし。』

『まあ精霊達も居る事だし万が一も起こらんだろう。』

「万が一とは?」

『え? あらやだ。バルド、あなたまだ教えてなかったの?』

『ん?私から教えるのだったか?』

『私から教えるなんて無理よ?そこは男同士でしょう?』

『あ・・・ああ。そうだな。』

「父上、母上。いったい何の事ですか?」

『夫婦の営み?』

「はい? 夫婦の営みとは?」

『子作りだ。』

ブハッ  ゴホッゴホッ ゲホッゲホッ


父上もう少し言葉を選んでいただけませんか?

いや言葉を選んで母上が言ったか、それでも俺に伝わらなかったから父上がストレートに・・・。

ストレート過ぎるでしょうが、父上!!

思い切り茶を吹いて赤面してしまった。

そもそも俺は詳しい子作りのやり方とか知らなかった。

以前結婚までには教えると言われていたが・・・。

まぁ今はその話ではない。


「それで 許可はしていただけますか?」

『ロゼが嫌がったら諦めるのよ?』

「はい、それは勿論です。」

『ラファやハイデルには?』

「ロゼの了承が貰えたら話します。」

『あの子達ずるいと騒ぎそうね。』

『そうだな。』

「まずは明日 ロゼの所へ行って話してこようかと思って居ます。」

『解ったわ。』


そして森へやって来た。

冬支度を手伝うと言う名目でだ。

まだ朝も早かったのでロゼは寝ているのだろう。

庭に置かれたテーブルの上には見慣れない服を来た小さな老人が居た。

きっとこれも精霊なのだろうな。

その精霊は俺に気が付くとここに座れと手招きをしてきた。

向かい合って座るとニコニコと見つめられている。

なんだか気恥ずかしい。

トテトテと近寄ってきて俺の頭を(正確には額だったが・・・)撫でた後 グッと親指を立てて笑っていた。

それは何の合図なのだろうか。

そうこうしている内に窓が開きロゼが顔を覗かせた。

俺に気付くと慌てて手櫛で髪を整えていた。そういう姿も可愛いなと感じた。

朝食をとるロゼを見つめながら俺はいつ話を切り出そうか悩んでいた。

いざとなるとなかなか勇気が要る物だな・・・。

今日の予定を立てて森へ向かい 倒木を斧で切る間もそうだった。

どのタイミングで言うべきか。

結局作業を切り上げるまで言えなかった訳だが。

やっと言えたのは帰る前ギリギリの時間だった。我ながら不甲斐ない・・・。


   ロゼ。あの話覚えてるか?


もう少し気の利いた事は言えなかったのだろうかと自分でも思う。


   じゃあ3ヵ月だけね?


最終的に了承は得られたのでよしとしよう。

ますは3ヵ月。

その3ヵ月の間に俺の気持ちもハッキリとするだろう。

さて、後はルフェとハイデアだな・・・。



後日 父上に例の説明を受けた・・・。教本を見せられながら・・・。

教本があるのにも驚いたが、父上これは俺には無理じゃないか?

皆こんな事もしているのか?嘘だろ・・・。

つつぅーと鼻血が垂れた・・・。


『む?基本だぞ?・・・おや? 上級者向けと書いてあるな・・・。

 ふむ、どうりで私の知らない事が・・・。』


ぶほっ・・・父上・・・。おや?じゃないし、ふむでもないだろ!

ちゃんと確認してくれよ。

だいたい父上が知らない事が書いてある上級とか見せないでくれよおーーー!!!

読んで下さりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ