紅葉さんいらっしゃーいっ
一頻り泣いた後にやっと涙は止まってくれた。
なんで上手く共存する事を考えないのかな。
いやあの脳内お花畑の姫聖女には無理か・・・。
「助けると言ってもどうすればいいんだろう?
国に干渉するとかは嫌だからね?」
『勿論だ。
この庭や森に我らが移り住む事を許して欲しい。』
「ん?それは私の許可ではなく精霊王の許可が必要なんじゃ?」
『その精霊王が ロゼの許可があればよい と。』
ぶはっ こっちに振ったんかーいっ。
「うーん、元々居る精霊達はどう思うんだろう。
喧嘩とかにならないのかな?」
『それは無い。 精霊同士で傷付け合う事はほぼ無い。』
「何人くらいが来るのかな? あまり多くても。」
『国全体ですでに50も残っておらんのだ・・・。』
「え?」
結構大きな国だよね?・・・
それで50人も残ってないの?・・・
もしかしてその50人も急がないと消えてしまうとか?・・・
「この国には森は幾つか点在してるから、一か所に固まらずバランスよく別れて住んで貰えるなら。」
『よいのか?』
「後は私が対話したり、人々と共存していけばいいんだよね?
ただ最初は、そうだな。1ヵ月くらい?
この庭か森に滞在して体力を付けて貰ってそれから分散って形になるのかなぁ。
きっと皆体力も落ちてるよね?」
『ああ。助かる。』
「うん、じゃあいつでもどうぞ。
そっちの皆のタイミングで来てもらって。」
『感謝する。』
来てもらってとは言ったけど、移動手段はなんだろう?
まさかずっと空をフヨフヨ飛んで? それともテクテク歩いて?
『飛ばぬし歩かぬ。泳ぎもせんぞ?』
ブフッ 聞かれてた・・・。
『精霊王の泉が此処に有るのだ。皆ここへ来ることが出来る。』
なるほど? 泉がどこでも〇アみたいな感じかな?
『どこでも〇アとは何だ?』
いや気にしないでください、なんでもないです・・・。
あ、そうだ。
「ディーヴァ、その泉から私も部の国の森に行けるのかな?」
『む? 何をしに行く気だ。』
「もしも、もしもだよ?
まだ幼木が残っているなら全部は無理でも少しだけでも・・・
連れてこれたらなって・・・。
これは私の我儘なんだ。完全に自己満足だと思う。」
『行く事は許可できない。危険すぎる。』
『だが私が他の精霊達と共に 幼木を見つけたら連れて来よう。』
「そっかそうだよね。 危険だよね。
ごめん。つい何かしたくなっちゃって・・・。」
『その気持ちだけで十分だ。』
赤毛の精霊は私の頭をポンポンと撫でて一旦戻って行った。
『あまり気に病むな。
ロゼが森を想い精霊を想い獣達を想って涙を流してくれた。
その気持ちが嬉しかったとこの国の精霊も彼の国の精霊も言っておる。』
そっか。皆優しいね。私に出来る事は会話をする事くらいだけど・・・。
武の国の精霊の皆が無事にこっちへ来れますように。
そう願わずは居られなかった。
バルドさんにも話をしたほうがいいかな。
今後武の国は荒れるかもしれないし。交易は控えた方がいいよね。
めんどくさい事になるのも嫌だし。
と思ったら 交易は無かった。ここからは一番遠い国みたいだしね。
考えてみたら自然と共存してる国だもんね。武力とは縁がないよねぇ。
うん、よかったよかった。
脳内お花畑な姫聖女の話もしておいた。
皆『は?』と固まってしまっていた。
普通そうなるよね。よかった皆がこの反応で。ハハハ・・・
そう言えばハイデアの方はこのまま何度か行き来したり手紙で交流を続け
何事も無ければ来年正式な婚約をして
15歳から2年間あちらの文化や礼儀作法を習う為に留学し、成人後に結婚と言う事になるらしい。
ハイデアはとても嬉しそうにしていた。よかったよかった。
それからしばらくすると武の国の精霊達はそれぞれ幼木や苗を手にこちらにやって来た。
皆悲しそうな疲れた顔をしていた。
その顔を見ると どうしても心がズキンと痛んでしまう。
『受け入れてくれてありがとう。』
『ここは素敵な国なのね。』
『人々の優しい気持ちが溢れているのね。』
そんな声が聞こえてくる。
この精霊達にとって武の国はどう見えていたんだろう。
自分達の家が、故郷が壊されていくのを見るのは辛かったよね・・・。
この国が第二の故郷となって笑って暮らせるようになってくれるといいなぁ。
『私で最後だ。』
そう言って赤毛の精霊が現れた。手には紅葉の若木が抱えられていた。
『私の新しい家にしようと思ってな。』
湖の傍に植えるのだと言った。
元々住んでいた樹も紅葉だったけど老木だから連れて来れず、傍にあったこの若木を連れて来たんだそうな。
紅葉の老木かあ、見て見たかったなぁ。凄く立派な木なんだろうな。
『見るだけなら、見せてやろう。』
ディーヴァが手の平で弧を形作ると ホワワンとホログラムみたいなのが浮かんだ。
幹がずっしりと太く枝葉が大きく広がり
これって神木と呼ばれてもいいんじゃないの?ってくらい立派な紅葉だった。
これを伐採するって? こんなに立派な樹なのに? 馬鹿じゃないの?!
勿体無い。凄く勿体ない。
でも大き過ぎて持ってこれないよね。それは私でも解る。
でも、勿体無い。ここまで育つのに何年、いや何百年かな。
盆栽とは言わないけど、せめて小振りな老木だったらよかったのに。
そしたら連れて来れたかもしれないのに。 勿体無いなぁ・・・。
そう思ってたら目の奥が熱くなって、なんか光った?光線でもでた?
ででんっ!
目の前に 盆栽があった・・・。
盆栽と呼んでもいいのかな?
ちょっと大きいよね?
鉢植えになったあの紅葉の老木があった。
えぇぇぇ、なんで?
そりゃちょっと盆栽になった紅葉とか考えたけども! 小振りな老木とかって思ったけども!
まさか目の前に現れるとか思わないじゃん!
なんで? 何が起きたの?
『ロゼ。眼だ。』
眼? 私の眼が何?どうしたのさ。
『魔法陣が浮き上がっておる。』
はい? 魔法陣? んな訳・・・・あるわぁ・・・。
そう言えば最初に鏡を見た時 虹彩部分がうっすら魔法陣に見えたっけ。
え?あれ魔法陣だったの? っぽく見えたんじゃなくて? マジかぁー。
つまり 私がそうイメージして願ったから魔法が発動して具現したって事?
私そんな素敵魔法持ってたの?
もしかして聖女ってこんな魔法持ってたりするの?
『いや、それはない。これまでの聖女がそんな魔法を持っていたとは聞いた事も見た事も無い。』
なるほど?・・・
じゃあなんでだろう?
勿体無い連呼したから特別に?
それとも盆栽がキーワード? 勿体無いがキーワードだったり?
うーん、解らない・・・。
まあ深く考えたらだめよね・・・。
取り敢えずこの鉢植えの紅葉。どこに置こう。玄関横がいいかな?
リビングからも見えるしね。 よしそうしよう。
いらっしゃい紅葉さん。 他の精霊達も草木達も。
これからよろしくね。 いっぱい笑って楽しんでね!