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牧場の老夫婦

フンス フンスッ


今日はベロンベロンは避けられたみたい。

私だけだと魔法が使えないからね。涎まみれは遠慮したい・・・。

ナディも今日は大人しい。

と言うか元気ないね?

どうしたんだろう?


「ナディ元気ないね?どうしたの?」

『おばあちゃん 腰 痛い ご飯 出来ない』


なるほど? ここのおばあちゃんが腰痛でご飯が作れないと。

ここは老夫婦と町から来てる従業員だけなんだっけ。

んじゃ夜は老夫婦だけになるのよね?

従業員も男性ばかりだし、ご飯の用意までは無理そうよね?

それでナディは心配してるのかぁ。

うーん・・・。

これはどうしたものか。

料理は出来るけど、こっちの味付けとか解らないのよね?

食べてるからなんとなくは解るけど・・・。

うーん・・・。


『どうかしましたかの?』


考え込んでたらおじいちゃんが来ちゃった・・・。


「えっと・・・。おばあちゃんの腰は大丈夫ですか?」

『おや? 気を遣わせてしまったかのう。

 大丈夫じゃよ。 たまに痛みが出るようでな。寝ていれば治るさね。』

「そうなんですか。たまに私も腰を痛める事があるので辛さは解ります。」

『おや、お若いのに。』


あはは・・・。肥料抱えたりするとたまにギックリ腰やってたのよね・・・。

どうしよう、食事とか大丈夫か聞いた方がいいのかな。


『ロゼ おばあちゃん ご飯 食べてない おじいちゃん お芋だけ』


えぇ・・・。

それは確かに心配になるよね。

うーん、聞いてみるかぁ。


「あの不躾ですみません。お食事はちゃんと食べてますか?

 精霊が心配してるみたいです。」

『精霊が・・・ですか。

 お嬢さんはもしかして聖女様ですかの?』

「みたいです?」

『何故疑問形なんですかの?』

「何故でしょう?なんとなく?」

『なんとなくですか・・・。』

「です・・・」


おじいちゃんは苦笑していた。

そうよね、どう反応していいか困るよね。 うん、私も困ってる。ここからどう切り出そう。


「その・・・精霊がですね。

 おじいちゃんが芋しか食べてないと・・・。」

『え?・・・ ゲホッゴホッ』


ごめん。当たり障りない言い方が浮かばなかったのよ。


「おばあちゃんも何も食べてないと心配してまして・・・。」

『ああ、それは精霊に心配させてしまいましたな。

 なんでいつもばあさんに任せきりで、ワシは料理が出来なくて。』


お恥ずかしいとおじいちゃんは苦笑する。

それは仕方ないよね。


「よかったら、何か作りましょうか? 簡単な物しか作れませんが。」

『それはありがたいんじゃが、お嬢さんに迷惑がかかるのではないかの?』

「大丈夫です。むしろここで何もしなかったら精霊が家まで押しかけて来そうです。」


まぁナディが押しかけてくるのはいつもの事だけど。


『僕だけ 違う 他の精霊 おばあちゃんの所 心配』


「この精霊だけではなく、他の精霊も心配してるようです。

 この牧場もおじいさんもおばあさんもとても精霊に好かれているんですねぇ。」

『それは・・・ありがたいことですのう。』

「なので、是非作らせてください。」

『ははは、ではお言葉に甘えますかのう。』

「はい。押しかけられても困りますし?」


そしてキッチンに案内してもらうとまずはハーブティーを煎れる事にした。

さっきフェンネルを見つけたのよね。

抗炎作用があるから腰痛のおばあちゃんには丁度いいと思う。


コンコンッ


『どうぞ』

「こんにちは。」

『おや、いつものお嬢さん。こんな格好でごめんなさいね。』

「いえ、お気になさらず。腰の具合はいかがですか?」

『おじいさんから聞いたのかしら。大丈夫よ。寝ていれば2~3日で治るから。』

「おじいちゃんからではなく、精霊から聞きました。」

『精霊? ああ、ここでフヨフヨしている子達かしら。』

「はい、牛の中にも紛れて居たりもしますよ。」


会話をしながら、煎れて来たハーブティーを手渡す。


「熱いので気を付けて、ゆっくり飲んで下さいね。」

『これは?』

「フェンネルと言うハーブのお茶で腰の痛みにも効くんですよ。」

『おやまあ。そうなのかい?ありがとう。』

「苦手な味かもしれませんけど、薬だと思って飲んで下さいね?」

『気を遣わせてしまったわね。』

「いえいえ、精霊に家まで押し掛けられても困るので?」

『ふふふ、確かにこの子達が家に押し掛けたら・・・賑やかね。』


そう、おばあさんの周りを ふよふよと綿毛みたいな精霊が5人?5匹?飛んでいるのよね。


「キッチンをお借りしてもいいですか?

 精霊達が心配してるんです。おじいちゃんはお芋だけ。おばあちゃんは何もたべてないって。」

『まあ、この子達ったらそんな事まで。

 おじいさんは料理が出来なくて。それでもお芋を蒸かしてくれたのだけど。

 私、お芋は得意じゃないのよ。』


おじいさんには内緒よ、と教えてくれた。

なるほど、あまり得意ではないなら食べないわよね。

蒸かし芋だと口の中がパサつきやすいし。


「では口当たりの良い、お芋以外の物を何か作りますね。」

『ごめんなさいね。』

「いえいえ。ではちょっと待っててください。

 あ、そこの精霊さん達。おばあちゃんの腰、少し温めてくれると嬉しいな。

 温めると少し楽になるんだよ?」


綿毛達は腰のあたりに集まってフワフワモジモジしていた。

なんだろうあの光景。可愛いじゃないか。


さて、キッチンに戻って来たけど、何を作ろう。

あまり時間が掛からないものがいいなぁ。

鶏肉がある・・・キノコと生姜がある・・・。

人参とカブもあるな。

鳥団子スープが出来るね、よしそうしよう。

アバラで出汁を取る間に むね肉を包丁で・・・叩く。とにかく叩く。ひたすら叩く。

粗挽きミンチでいいかな、ちょっとこれ以上は私にはきつい。

生姜のみじん切りと塩をミンチに混ぜて。

お鍋の方は灰汁を取ってアバラも取り出して。

乱切り野菜とキノコ。それに千切り生姜。スプーンでミンチを丸めてぽいっ。

ローリエ・タイム・オレガノもぽいっ。

火が通って野菜が柔らかくなったら塩胡椒で味を調えて、仕上げにオリーブオイル少々。完成ー!

後はスライスしたパンも一緒に出せばいいかな。


おばぁちゃんのベットにサイドテーブルをセットして

椅子を1つ持ってくればおじいちゃんも一緒に食事が出来るよね。

これでよし!


「少し多めに作ったので、明日の朝も食べれると思います。

 口に合わなかったらごめんなさい。」

『すっかりお世話になってしまって。ありがとう。』

「いえいえ。無理しないでくださいね。では私失礼しますね。」


と挨拶をして外に出ようとして思い出した。


「あ、牛乳・・・」

『ははは、用意してあるよ。』


食事のお礼だからお代はいらないと言われたけど、それはそれ。

ちゃんと受け取ってとお願いした。

代わりにおばあちゃんが元気になったら何か料理を教えて欲しいとお願いしておいた。

さあ帰ろうか。青藍よろしく! 虎徹は牛乳をよろしく!

荷台を引く虎徹は牛乳が乗っているせいで益々フランダースに見えた。ふふっ


読んで下さりありがとうございます。

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