僕も私も
『こっちのお皿がいいかしら、それともそっちのお皿がいいかしら。
お鍋はこれがいいかしら?
服も選ないとだわ。
そうね、どれがいいかしら。』
準備に一番張り切っているのはアルテシアさんだった・・・。
必要最少限でと言っているのにどんどんと増えていきそうで怖い・・・。
「あ、あのマミィ?
荷物は最小限で・・・。」
『だってあれもあった方が、これもあったほうがって思うと・・・
これでも減らしたのよ?』
可愛らしく首を傾げても・・・可愛いんだけども。
「マミィ、私は1人暮らしだから、そんなに荷物はいらないのよ?
マミィも見たでしょ?この屋敷より小さい家なんだから、置き場も困るのよ?
それに・・・ドレスもいらないから・・・。」
そう、アルテシアさんはきらびやかなドレスまで持って行かせようとしてる・・・。
庭仕事や畑仕事にドレスは必要ないから・・・。
胡服とか作務衣とかでいいから・・・。無いだろうけど。
動きやすくてシンプルなのがいいんだけどな。
デールもどきやサリーもどきとかアオザイもどきとか。
『アルテシア、ロゼが困って居るよ。
ロゼの希望を聞いてあげないと。』
『だってバルド。ロゼったら生成りでいいとか言うのよ。女の子なんだからもう少しお洒落も楽しむべきよ。』
「生成りのほうがお洒落だったりもするのよ?
それに、私は社交とかも興味ないし苦手だし。
ハイデアを可愛くする方がいいと思うんだけどなぁ。」ちらっ
『わ、私はもう十分持ってるもの!』
なんでこっちに振るのよと恨めしそうな目付きのハイデア。
あの様子から察するに、きっとこんな調子であれこれと用意されているんだろうな・・・。
チラッとルシェとラファを見れば、振るなと言わんばかりにブンブン首を振っている。
なるほど、テンション上がって衝動買いするパターンですね、アルテシアさん。
ここはバルドさんに頑張って阻止してもらいましょうー。
結局収拾がつかなくなるからと、私と侍女さんで決める事になった。
侍女さんは私の希望を聞いて的確に荷物を揃えてくれる。
お陰で荷物は最小限で収まった。よかった。
生活費をどうやって稼ぐかも考えていたのだけど、バルドさんが森の管理人という名目で手当てを出してくれる事になった。
なんだか申し訳なくて辞退しようかと思ったのだけど、聖女となった人にも手当てが出る事になっているらしいので遠慮はいらないからと言われた。
私が目立ちたくないと希望したから名目を森の管理人にするそうだ。
せめて金額は見習い侍女さんくらいにと言ったのだけど、ハーブソルトの提案料もあると言われれば断り切れなくなったのよね。
ハイデアはこれだけは譲れないから絶対持って行ってとお気に入りのベアドールをくれた。
可愛いけどさ・・・可愛いけど大きいのよ・・・。 持って行くけども!
ラファは自分で作ったという木彫りのバレッタをくれた。手のひらサイズで猫の柄が可愛い。
ルシェは自分の瞳と同じ色の宝石が付いたネックレスをくれた。
それにはちょっと驚いた。お小遣いで買ってくれたのだろうか。
小振りのサファイアのネックレス。デザインもシンプルで普段使いにはちょうどいい。
センスいいね、ルシェ。
『いつも身に着けていて欲しいから。邪魔にならないように小振りなのにしたんだ。』
「そうなのね。ありがとう。大切にするね。」
『ロゼ、後ろを向いて。着けてあげる。』
そう言われて振り返れば
うっ・・・
バルドさんとアルテシアさんの視線が・・・
なんかうっとりしてませんかね?
あ。 まさかこれって恋人に貰ったネックレスを着けて貰うの図になってたり?
えぇぇ・・・まさかね?
『僕だって負けないから。』
ボソッと呟くラファ。
何を? 誰と? なんの勝負してるんですかね?
なんとなく予想は出来るけどしたくない。知りたくない。考えたくないよ!
嫌いじゃないよ?むしろ好きだよ2人共。
でもまだ若いし未成年だし。君達にはこれからきっと素敵な出会いもあるんだよ?!
パチンと金具が止まる音と同時に
『うん、似合っているね。頑張って作った甲斐があったなルシェ。』
『ち・・・父上! それは内緒だと約束したじゃないか!』
「ルシェが作ったの?! 凄いじゃない!」
『う・・・ 金より銀の方が好きだと言ってただろ?
銀のネックレスはあまり売っていないから・・・その・・・』
モゴモゴと真っ赤になってしまった。ルシェ可愛いー。
『僕だって次はちゃんと銀で作るから!』
ラファはちょっと悔しそうに言う。その顔も可愛かったりするんだけど。
「ラファのバレッタも手作りでしょ?
2人の気持ちがこもっててとても嬉しいのよ?」
ラファを呼び寄せて ルシェと2人を抱きしめる。
『私も何か手作りすればよかったわねぇ。』
『うむ、次の機会は私も何か作るとしよう。』
『私だってロゼ姉様に何かつくるんだから!』
いぁいぁそこは家族で張り合わなくても。
でも私も何か皆に手作りであげたいなぁ。
クリスマスまでなら時間があるし、何か作れるかな?
・・・
クリスマスってこの世界にあるの?・・・無いよね?
代わりの季節イベントってあるのかしら。
『初雪が降る頃に星祭りがあるぞ。』
星祭り? どんな祭りなんだろう。
『澄みきった夜空に輝くエリダヌスに家族と共に一年の健康を願う祭りだ。』
エリダヌス、星の名前かな?
星を見ながら一念の健康を願うのか、素敵だろうなぁ。
初雪っていつ頃振るのかな、まだ時間はありそうだけど。
それまでに何か考えて用意しておこう。
『私も欲しい。』
はぃ?!
『私もロゼの手作り欲しい。』
あー・・・。そうね。ログハウス貰っちゃったし。
うん、何か考えておくよ。