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悪魔のクマ  作者: ib
7/12

第七話 誕生日と年越し

いつもより少し長めです。明日は投稿少し遅いかお休みです。


「誕生日おめでとー!」


「おめでとう。」


「声がちいさーい!誕生日おめでとー!私っ!」


「おめでとおおおお!!」


祝われる側のテンションがおかしいのは毎年のことだ。


「今年でいくつになったんだっけ?」


「ちょっとー!レディにそれを聞くわけ?」


「いやだって誕生日……。」


「仕方ないなぁ。特別だからね?」


まあ聞かなくてもわかるんだけどな……。


「○○年私の年齢はなんと28歳でーす!」


「いよっ若いねおねーさん!」


「まだまだピチピチだよ〜!」


「いやそれはちょっと無理が……」


「何か言った?」


すごい形相で睨まれ、いいえ。と一言答えるしか無かった。


「ちょっと待って?28?」


「そーだよ?もしかしてまた忘れてたのー?」


「一年経つの早いもんだな……。」


「……そうだね。」


この流れはまた志乃を怒らせてしまう気がする。何か他の話題を……。


「と、ところでさ。」


「……なに?」


「プレゼントまだ渡してなかったなって。」


「プレゼント?!」


毎年あげているのに今年も反応が同じ妻。そんなところが俺はずっと好きだ。


「今年は……これだ!」


大きなクマのぬいぐるみを渡す。


「……クマ。」


「クマ嫌いだった……?やっぱりウサギのほうが良かったかな?」


「……すき。すっごい好きだよ!」


「良かったー!」


「でも……ウサギの方が良かったかも。」


「え。」


「うそうそ!今夜から一緒に寝ようねー。」


「ちょっと待って?そのぬいぐるみと一緒に寝たら俺寝る場所無くなるよ?」


「……ソファー?」


「ぬ、ぬいぐるみがだよな?」


「……。」


「志乃さーん?」


「仕方ないから私とクマの間で寝ることを許可します。」


今夜はかなり寝苦しくなりそうだがそれもまたいいのだろう。



「では誕生日の特権を使わせてもらいます!」


「特権なんてあったのか?」


「南家では誕生日に一つ命令権を手に入れられます!」


「初耳なんだが?!」


「では命令!今日のことを絶対に忘れないように!!」


「……それだけ?これ食べたい!とかこれを買ってくるように!とか言わなくていいのか?」


「これ以上の命令はないの。」


「それならいいが……。わかった。絶対忘れない。」


「……約束ね。」


そう言って彼女は頬にキスをした。付き合い始めたばかりのような初々しいキス。凄くドキドキする……忘れらない誕生日になった。



11月15日(木)

今日は志乃の誕生日。大きなクマのぬいぐるみをあげたらとても喜んでいた。今年から命令権を一つ使えるらしい。

「今日のことを絶対忘れないように」と頬にキスをされた。こんなの忘れたくても忘れられないな。

俺の誕生日には何を命令しようか今から楽しみだ。





┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「メリークリスマス!」


「メリークリスマス?」


今日は12月31日。世間では大晦日というはずだが。


「いやーお互い仕事忙しくてできなかったじゃん?」


「確かにそうだけどさ……。」


11月月末からつい先日まで、お互い朝と夜寝る前くらいしか顔を合わせていない。それほどまでに仕事に追われていた。


「クリスマスプレゼントは残業、残業、残業ってね……。」


「悲しいこと言うなよ……。」


「だから午前中はクリスマス気分で夜は年越そうかなって!」


「随分欲張りだな……。キリスト教徒が見たらなんて言うか、、。」


「そんなことは気にしない!さあメリークリスマス!」


大晦日の朝から七面鳥がテーブルに並ぶ家庭は他にあるんだろうか?


「はい。ということで?」


クレクレポーズをする妻。欲しがっているのは言わずもがなあれだろう。


「いや買ってきてないよ……?今日やると思わなかったし、、。」


「毎年30日にやってるもんね……。あえて今年はずらしてみました!想像つかなかったしょー!」


何故か不気味な笑みを浮かべる彼女。だが……。


「おめでとう。これ。」


「え?」


「サプラーイズ!はっはっは。」


「なんでよー!!」


確かに毎年30日にクリスマスをやるのが南家である。だが今年は何故かクリスマスをやらず不思議に思っていた。


……つまり30日にはプレゼントを買ってあった。タネは凄くシンプルだ。29日にやられていたらあげられなかったかもな。


「……まあ受け取っとく。ありがと。」


「中身開けてみて。」


「……後でじゃだめ?」


「午後になっちゃうだろ?そしたらクリスマスが終わってしまう。」


「そうだった。じゃあ……開けるね?……黒い箱。」


中身はパズルだ。


「いやー普通のパズルは答えの絵が箱に書いてるだろ?それじゃあ普通すぎると思って、真っ黒な箱に変えてみたんだ。」


「……。」


「完成するまでなんのパズルかわからない。なかなか面白いと思わないか?」


「うん。黒い箱。完成するまで……。」


「……志乃?」


どこか上の空だ。



「ちょっといいかい?」


返事をしたのは彼女ではなくクマだった。志乃がいる前でクマと会話はできない。トイレに行ってくると適当に理由をつけその場を離れた。



「どうしたんだ?話しかけてくるなんて。」


「僕としても基本的には見守るんだけどね。ちょっと危なかったから。」


「まさか!?」


「どこか奥さんぼーっとしてたでしょ?今一瞬あの世に戻ろうとしていてね。慌てて押さえ込んだって訳さ。」


「……何か志乃がそうなった理由はあるのか?」


「心当たりはあるよ。だからそれを僕は治してくる。その間君にはここで待っていて欲しいんだ。この治療は君には危険なものだからね。」


「……わかったよ。終わったら呼んでくれ。」



「○○○○○○○○。」


「○○○○○○○○!」


「○○○○○○○○?」


「……○○○○○○。」


なにやら呪文のような、それともクマの独り言?


「終わったよ。とりあえずまた様子を見よう。()()()()()()()()()()()()。」


「そうか。すまない。」


「こちらこそ貴重な時間を奪ってしまってごめんね。良いお年を。」



「……志乃?」


リビングに戻った俺は彼女に声をかける。


「うーん。寝ちゃってたみたい。」


寝てた……?あ、クマがそういうことにしたのか。


「おはよう。いきなり眠るからびっくりしたよ。」


「うん……。なんか眠くなっちゃって。あっ!」


「どこか痛いのか?」


「あはは。そんなわけないじゃんー。寝すぎてもう夜になっちゃったなって!」


「ほんとだ、、。年越しの用意しないとな。」


七面鳥が無くなっている。テーブルにはご馳走様とクマが書いたであろう文字が残されていた。


「浩史一人で七面鳥食べたの?」


「あ、ああ。腹減っててな。」


「じゃあ年越しそばは少なくしよっか?」


「いや大丈夫だ。たくさん食べて残業で疲れきった体を回復しないとな。」


「それもそっか!それにしても今年もいろいろあったね〜。」


「確かにな……。」


蘇る数々の思い出。


「お花見、プール、海、ハロウィン、花火、月見、マラソン大会でしょー。あとは……あれとこれと、、。浩史は何が一番記憶に残ってるの?」


「俺は……志乃の誕生日かな。」


「そっか……。なんか恥ずかしいね。話題変える!」


恥ずかしさのあまりかこれ以上深堀はされなかった。



「今年もまもなく終わりますが皆様いかがお過ごしでしょうか?」


「いやー今年は長く感じた一年でしたね。いろいろありましたしね。」


「そうですねぇ。特に○○は盛り上がって……。」



テレビの時間はまもなく0時を迎える。年越しの瞬間だ。


3.2.1.ハッピーニューイヤー!



「「ハッピーニューイヤー!」」


「今年もよろしくね浩史!」


「ああ。今年もよろしくな志乃。楽しい一年を過ごそうな。」


「うん!」


「……クマもあと5ヶ月よろしくな。」


「何か言ったー?」


「いやなんでもない。そば……伸びてるな。」


「あーっ!食べ忘れてた!!早く食べよっ!」




12月31日(月)

大晦日andクリスマス。いつもは30日にクリスマスだが今年は新たな取り組みらしい。プレゼントにはパズルをあげた。完成が楽しみだ。来年も楽しく過ごそうな志乃。


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