第七話 誕生日と年越し
いつもより少し長めです。明日は投稿少し遅いかお休みです。
「誕生日おめでとー!」
「おめでとう。」
「声がちいさーい!誕生日おめでとー!私っ!」
「おめでとおおおお!!」
祝われる側のテンションがおかしいのは毎年のことだ。
「今年でいくつになったんだっけ?」
「ちょっとー!レディにそれを聞くわけ?」
「いやだって誕生日……。」
「仕方ないなぁ。特別だからね?」
まあ聞かなくてもわかるんだけどな……。
「○○年私の年齢はなんと28歳でーす!」
「いよっ若いねおねーさん!」
「まだまだピチピチだよ〜!」
「いやそれはちょっと無理が……」
「何か言った?」
すごい形相で睨まれ、いいえ。と一言答えるしか無かった。
「ちょっと待って?28?」
「そーだよ?もしかしてまた忘れてたのー?」
「一年経つの早いもんだな……。」
「……そうだね。」
この流れはまた志乃を怒らせてしまう気がする。何か他の話題を……。
「と、ところでさ。」
「……なに?」
「プレゼントまだ渡してなかったなって。」
「プレゼント?!」
毎年あげているのに今年も反応が同じ妻。そんなところが俺はずっと好きだ。
「今年は……これだ!」
大きなクマのぬいぐるみを渡す。
「……クマ。」
「クマ嫌いだった……?やっぱりウサギのほうが良かったかな?」
「……すき。すっごい好きだよ!」
「良かったー!」
「でも……ウサギの方が良かったかも。」
「え。」
「うそうそ!今夜から一緒に寝ようねー。」
「ちょっと待って?そのぬいぐるみと一緒に寝たら俺寝る場所無くなるよ?」
「……ソファー?」
「ぬ、ぬいぐるみがだよな?」
「……。」
「志乃さーん?」
「仕方ないから私とクマの間で寝ることを許可します。」
今夜はかなり寝苦しくなりそうだがそれもまたいいのだろう。
「では誕生日の特権を使わせてもらいます!」
「特権なんてあったのか?」
「南家では誕生日に一つ命令権を手に入れられます!」
「初耳なんだが?!」
「では命令!今日のことを絶対に忘れないように!!」
「……それだけ?これ食べたい!とかこれを買ってくるように!とか言わなくていいのか?」
「これ以上の命令はないの。」
「それならいいが……。わかった。絶対忘れない。」
「……約束ね。」
そう言って彼女は頬にキスをした。付き合い始めたばかりのような初々しいキス。凄くドキドキする……忘れらない誕生日になった。
11月15日(木)
今日は志乃の誕生日。大きなクマのぬいぐるみをあげたらとても喜んでいた。今年から命令権を一つ使えるらしい。
「今日のことを絶対忘れないように」と頬にキスをされた。こんなの忘れたくても忘れられないな。
俺の誕生日には何を命令しようか今から楽しみだ。
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「メリークリスマス!」
「メリークリスマス?」
今日は12月31日。世間では大晦日というはずだが。
「いやーお互い仕事忙しくてできなかったじゃん?」
「確かにそうだけどさ……。」
11月月末からつい先日まで、お互い朝と夜寝る前くらいしか顔を合わせていない。それほどまでに仕事に追われていた。
「クリスマスプレゼントは残業、残業、残業ってね……。」
「悲しいこと言うなよ……。」
「だから午前中はクリスマス気分で夜は年越そうかなって!」
「随分欲張りだな……。キリスト教徒が見たらなんて言うか、、。」
「そんなことは気にしない!さあメリークリスマス!」
大晦日の朝から七面鳥がテーブルに並ぶ家庭は他にあるんだろうか?
「はい。ということで?」
クレクレポーズをする妻。欲しがっているのは言わずもがなあれだろう。
「いや買ってきてないよ……?今日やると思わなかったし、、。」
「毎年30日にやってるもんね……。あえて今年はずらしてみました!想像つかなかったしょー!」
何故か不気味な笑みを浮かべる彼女。だが……。
「おめでとう。これ。」
「え?」
「サプラーイズ!はっはっは。」
「なんでよー!!」
確かに毎年30日にクリスマスをやるのが南家である。だが今年は何故かクリスマスをやらず不思議に思っていた。
……つまり30日にはプレゼントを買ってあった。タネは凄くシンプルだ。29日にやられていたらあげられなかったかもな。
「……まあ受け取っとく。ありがと。」
「中身開けてみて。」
「……後でじゃだめ?」
「午後になっちゃうだろ?そしたらクリスマスが終わってしまう。」
「そうだった。じゃあ……開けるね?……黒い箱。」
中身はパズルだ。
「いやー普通のパズルは答えの絵が箱に書いてるだろ?それじゃあ普通すぎると思って、真っ黒な箱に変えてみたんだ。」
「……。」
「完成するまでなんのパズルかわからない。なかなか面白いと思わないか?」
「うん。黒い箱。完成するまで……。」
「……志乃?」
どこか上の空だ。
「ちょっといいかい?」
返事をしたのは彼女ではなくクマだった。志乃がいる前でクマと会話はできない。トイレに行ってくると適当に理由をつけその場を離れた。
「どうしたんだ?話しかけてくるなんて。」
「僕としても基本的には見守るんだけどね。ちょっと危なかったから。」
「まさか!?」
「どこか奥さんぼーっとしてたでしょ?今一瞬あの世に戻ろうとしていてね。慌てて押さえ込んだって訳さ。」
「……何か志乃がそうなった理由はあるのか?」
「心当たりはあるよ。だからそれを僕は治してくる。その間君にはここで待っていて欲しいんだ。この治療は君には危険なものだからね。」
「……わかったよ。終わったら呼んでくれ。」
「○○○○○○○○。」
「○○○○○○○○!」
「○○○○○○○○?」
「……○○○○○○。」
なにやら呪文のような、それともクマの独り言?
「終わったよ。とりあえずまた様子を見よう。もう大丈夫だと思うけどね。」
「そうか。すまない。」
「こちらこそ貴重な時間を奪ってしまってごめんね。良いお年を。」
「……志乃?」
リビングに戻った俺は彼女に声をかける。
「うーん。寝ちゃってたみたい。」
寝てた……?あ、クマがそういうことにしたのか。
「おはよう。いきなり眠るからびっくりしたよ。」
「うん……。なんか眠くなっちゃって。あっ!」
「どこか痛いのか?」
「あはは。そんなわけないじゃんー。寝すぎてもう夜になっちゃったなって!」
「ほんとだ、、。年越しの用意しないとな。」
七面鳥が無くなっている。テーブルにはご馳走様とクマが書いたであろう文字が残されていた。
「浩史一人で七面鳥食べたの?」
「あ、ああ。腹減っててな。」
「じゃあ年越しそばは少なくしよっか?」
「いや大丈夫だ。たくさん食べて残業で疲れきった体を回復しないとな。」
「それもそっか!それにしても今年もいろいろあったね〜。」
「確かにな……。」
蘇る数々の思い出。
「お花見、プール、海、ハロウィン、花火、月見、マラソン大会でしょー。あとは……あれとこれと、、。浩史は何が一番記憶に残ってるの?」
「俺は……志乃の誕生日かな。」
「そっか……。なんか恥ずかしいね。話題変える!」
恥ずかしさのあまりかこれ以上深堀はされなかった。
「今年もまもなく終わりますが皆様いかがお過ごしでしょうか?」
「いやー今年は長く感じた一年でしたね。いろいろありましたしね。」
「そうですねぇ。特に○○は盛り上がって……。」
テレビの時間はまもなく0時を迎える。年越しの瞬間だ。
3.2.1.ハッピーニューイヤー!
「「ハッピーニューイヤー!」」
「今年もよろしくね浩史!」
「ああ。今年もよろしくな志乃。楽しい一年を過ごそうな。」
「うん!」
「……クマもあと5ヶ月よろしくな。」
「何か言ったー?」
「いやなんでもない。そば……伸びてるな。」
「あーっ!食べ忘れてた!!早く食べよっ!」
12月31日(月)
大晦日andクリスマス。いつもは30日にクリスマスだが今年は新たな取り組みらしい。プレゼントにはパズルをあげた。完成が楽しみだ。来年も楽しく過ごそうな志乃。




