第五話 月見
「綺麗だねぇ〜。」
「綺麗だな。」
二人並んで空を眺める。そう、9月と言えば月見だ。
時は数時間前に遡る……。
「9月と言えばー?」
「急にどうした?」
「いいからいいから!9月と言えばー?」
「……なにかあったっけ?」
「もー。月見だよ月見!」
言われてみれば各飲食店が今時期月見フェアをやっていた気がする。
「月見バーガーでも買ってきたらいいのか?」
「それはそれで魅力的だけど、、今回それが目的ではありません!」
「……?」
「せっかくだから二人でお団子作って空眺めようよ!」
「団子ねぇ、、。」
いつもの俺ならめんどくさいから断るところだが……。いつ何が起こるかわからないと知っているからな。
「作ろうか。」
「やっぱりだめだよね〜。浩史の面倒くさがりな所は私が一番よく知っているんだか、、え?いいの?!」
「ああ。たまにはいいんじゃないか?」
「やったー!昨年も一応言ったんだけど断られちゃってたからねー。今年もダメかと思ったよー。」
喜んでくれたようでよかった。でもなんだ?この頭の片隅にあるモヤモヤは。
……パッとわかりそうなものではないな。今は志乃との会話に集中しよう。
材料はこれとこれとこれを買えばいいでしょー。
彼女と言えばとてもわかりやすくウキウキしながら材料をメモ用紙に書いている。
『……いいの?』
「何か言ったか?」
「え?独り言うるさかった?ごめんねー。」
……気のせいか?今の声は志乃だと思ったが、、。
「メモ終わりー!さあ買いに行こー!」
「お、おう。」
スーパーでは団子の材料だけでなく、どう見ても食べきれないよな、、と思えるほどのお菓子や軽食がカゴに入れられていた。
あれはここにあったかな?……お、あるな。妻には内緒で買っておこう。
「お会計8560円です。」
「たかっ!」
「志乃が買いすぎなだけだから。1万円でお願いします。」
「1440円のお返しになります。ありがとうございましたー。」
少し不満げな顔をしながらレジ袋に商品を入れる彼女。そんな彼女の頭の上に233の文字が見える。
あれは……なんで、、。慌ててトイレへ移動し誰もいないことを確認して悪魔を呼び出す。
「おいクマ!なんで死体の識別番号が出てるんだよ!」
思わず声を荒らげてしまう。
「言ったでしょ?蘇生は一年間は不安定な状態だからたまに出てきちゃうのさ。でも数字はすぐ消えるし今のところ奥さんにはなんの問題もないから安心していいよ。」
「信じていいんだよな……?」
「僕は悪魔だからね、信じるかは任せるよ。」
そう言ってクマは消えてしまった。
今はクマの言うことを信じるしかないのか……。なにも言わずに志乃を一人にしてしまっているし早く戻ろう。
……なんの問題もないよ。凄く順調さ、あとはいつあれを渡そうか。楽しみだね。
「ごめんいきなりトイレ行っちゃって。」
「いいよいいよー。すっごい我慢してたんだなって思うとこっちこそごめんね!気づかなくって!」
なんか申し訳ないがそういう事にしておこう。
「早く帰って作り始めないと夜になっちゃう!」
「そうだな。パパっと準備しよう。」
そして一時間後現在に至る。
「何度見ても綺麗だねぇー。」
「綺麗だな。」
「私とどっちが綺麗?」
「志乃。」
「えっ。」
「え?」
「少しは悩んでくれないと凄く恥ずかしいんだけど?!」
「俺は志乃より綺麗な人も美しいものもないと思ってる。一番大切な人だからな。」
「ちょ、ちょっと。」
「何があっても守るから。もう……。」
これ以上は言ってはいけない。
「恥ずかしいからやめてよー!私だって浩史よりかっこいい人いないと思って、、。うっ。」
「無理しなくていいぞ。写真集のアイドル達が可哀想だからな。」
「ご、ごめん。でも私だって一番大切な人は浩史だからね!ずっと一緒にいようね!」
「もちろんだ。ずっと一緒にいような。」
離れ離れになってたまるものか。この一年なにも起きなければきっと上手くいく。そう自身に言い聞かせた。
「なんか冷えてきたね……そろそろ戻る?」
肩に手を当て寒そうなアピールをする彼女にそっと毛布をかけてあげる。
「こんなの家にあったっけ?」
「買い物の時買っておいたんだ。せっかくの月見だからな、もう少し見ていこう。」
「浩史……。ありがとう。」
二人はそれから30分無言で月見を楽しんでいた。
9月22日(土)
今日は志乃と月見をした。買い出しの時買いすぎていたお菓子るいは案の定残ってしまい、これからコツコツ食べていくのだろう。
やっぱり俺の一番大切な人は志乃だと再確認できた。志乃の気持ちも。
「10月と言えばー?」
なにやら聞き覚えのあるフレーズが聞こえてくる。
「10月と言えばー?」
「それ先月もやらなかったか?」
「9月は月見だったねー!じゃあ10月はー?」
「そうだな、、。読書の秋ということで読書をしよう。」
俺は続きが気になっている小説を手に取り読み始める。
「……違ーう!!」
「……。」
「読むの止めてよー!」
「……違うのか。」
「確かにね、スポーツの秋、食欲の秋、読書の秋というのはあります。それは私も分かってます。」
「じゃあ正解じゃないか。」
「今日は何日かご存知?」
「……31日だな。」
「秋終わって冬になりかけてるんだよ!そして31日はあれしかないでしょ!」
「……あ。」
「そう!ハロウィン!今年も仮装しちゃうよー!」
月末なのをすっかり忘れていた。時間が経つのはあっという間だな。
「……という訳で、制限時間は3時間!各自材料を買って仮装するべし!」
「そんな話いつしてた?!」
「よーいスタート!」
なんか昨年?一昨年?もこんな感じだったな。きっと仮装が同じだと何か言われてしまうだろう。
何か新しい仮装を考えながら買い出しへ行くか。




