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悪魔のクマ  作者: ib
2/12

第二話 失ったものは……?


「「いただきます。」」


今日の朝ごはんはパンに目玉焼きとベーコンを乗せた志乃特製のエッグトーストだ。


とは言っても朝ごはんの6.7割はこのエッグトーストになる。レパートリーが少ない訳ではなく、貴重な朝の時間を朝ごはんに費やして欲しくないからそうして貰っている。


「あのさ……どこか体痛いとか変だとかないか?」


「……?ないよ?」


「で、でもさ。何か起きてても嫌だから今度一緒に人間ドックでも行かないか?」


「真剣な顔してどうしたの急にー。」


「……だめか?」


「そこまで心配なら一緒に行こっか。私よりも浩史のほうが何か見つかったりして!」


「や、やめろよな!」


顔を見つめ笑い合う。もう叶わないと思っていた妻の笑顔をまた見れた。



先に出る妻を見送り自分の支度を始める。携帯電話は…無いな。


「なあクマ。」


「どうしたんだい?」


何も無かった空間にクマが現れる。本当に一年は一緒にいるのだろう。


「携帯電話は事故で無くなったのか?」


「さあ?」


「それとも些細なものってこれなのか?」


「さあ?」


答えてはくれないようだ。仕方が無いから仕事の帰りに新しい携帯電話を買いに行こう。



……あれ?そういえば今日は何日なんだ?そもそも今日俺は仕事なのか?


会社へ連絡すると思わぬ返事が返ってきた。


「もしもし南ですけど……。今日って……。」


「おー南か。どーした?今日はお前有給取ってたよな?」


「え?……あ、はいそうです。……はい、はい、ではまた明日。失礼します。」


有給……?記憶にないが、、。


だが休みなのは都合がいい。一旦身の回りのことを確認する日が欲しかったところだ。


まずは……。テレビを付ける。


本日は5月14日(月) 天気は晴れ 雲一つない良い天気となるでしょう。


今日は14日、、事故のあった次の日か。平日だから志乃は仕事へ行ったという訳か。


次は……。親へ電話をかける。


「もしもし?俺、浩史だけど、、。」


「あら、どうしたの?」


「父さんも母さんも何か変わりないか?」


「特に無いけど、、久々にかけてきて第一声がそれって変な子ね。たまには帰ってきなさいよ、志乃さんと一緒にね。」


「あぁ。わかったよ。そっちの身の回りで不幸なこともないんだよな?」


「……そうね。何かあったか思い出して見たけど特に不幸な事は、、あっ。」


「誰か死んだのか?!」


「大切にしてたお皿昨日割っちゃって……。」


「驚かせるなよ、、。また連絡するから。」


「うん。元気でね。」


親との電話を終えた後今度は親友、その次に友達と電話を掛けまくった。特に誰一人欠けていなかった。


一番大切なものってなんだ?俺は何を失ったんだ?


思い出す限りの人間関係の中で亡くなった人は誰もいなかった。


となると……。考えられそうなのは俺や志乃の身体に何か異変が起きている、または人ではなく物が何か無くなった?


携帯電話は確かに見当たらないが、あれを一番大切なものとはとても呼べない。せめて些細な物だと思う。



気づけば外が暗くなり始めていた。時が経つのは早いものだな。


固定電話だけでも困ることはないが、家にいない時連絡が取れないのはやはり不便だろう。


店が閉まる前に携帯ショップへと出かけ新しい携帯電話を買った。縁起が悪そうな前の型はやめ、別のガラケーに念の為変えておいた。


家に戻り一息つく。コーヒーを飲んでいると、ピンポーン。と音が鳴る。ドアを開けると宅配便だった。


「ここにサインお願いします。」


「えーと、あ、ここですね。ご苦労様です。」


荷物を受け取りドアを閉めようとして異変に気づく。


「ちょっと待って!」


「どうかされました?」


「この……20○○年って?」


「……それが何か?」


「いやいやいやいや。○○って?」


「今年が何年か書いてあるだけですけど、、もしかして間違えてました?」


「○○じゃわからなくないですか?」


「いや書いてますよね……うん。やっぱり。しっかり○○年って書いてますよ。それでは。」


書いてる?どう見ても○○としか書いていない。


……そうだっ!問題の紙を写真で取り志乃へ送る。彼女のメアドは暗記済みだった。そもそもこまめに連絡する人達のは全て記憶に残っている。


何か変なところはないか?


数分後返事が来る。


んー?特にないんじゃない?


そっか。ありがとな。ご飯作って帰り待ってるよ。


やったー!早く帰っちゃおっ!



これでハッキリした。


「なあクマ。」


「なんだい?」


「俺が失った些細なものは今年何年かわからなくなるってことか?」


「おー正解ー!早いね〜。」


やはりそうなのか。じゃあこれも聞いておかないとな。


「俺が失った些細なものは携帯電話か?」


「違うよ。」


前回とは聞き方を変えてみたらクマはハッキリとそう答えた。

曖昧な質問ではYesかNoか答えてくれないのだろう。


「あと二つ。早く見つけられるといいね。」


そう言ってクマは見えなくなった。



今年何年かわからなくなる……か。確かに不便ではあるがさっきの会話から察するに、俺が○○と言えば相手には今年の年数だと聞こえているのだろう。


後は文字か。紙に2000から順に数字を書いてみる。


しかし俺から見えるのは全て20○○と書かれた文字だった。

まあそうだよな。特定の数字だけ○○ならすぐ俺が気づけてしまう。



その後もいろいろと試行錯誤を重ね、帰ってきた志乃に試すことで事態を把握できた。


年数について

・相手からの言葉は○○になる

・書いてある年数も○○になる

・俺から発した年数は相手からは「何言ってるのかわからない」とのこと。



つまり年数というよりも2000~2099までの数字が使えない。そう覚えてしまっていいだろう。


頭の中に思い浮かべたりはできるし、今年の年数を書きたい!など曖昧な書き方で○○と書くと相手からは今年の年数に見えているらしい。


それで伝えた数字を志乃に聞くと○○でしょ?とやはり俺にはわからないようになっていた。


些細なことだがこれは中々に不便だな。だが対策できない訳じゃない。


仕事の書類は曖昧な書き方をすれば相手からはそう見えるし、家で何か書く時は志乃に頼むことにしよう。



今日はここまでだな。明日からは仕事をしながら一番大切なものと残り一つの些細なものを探すことにしよう。


「おやすみ志乃。」


「おやすみ浩史。」

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