1.僕のせい
正直に言って、僕の顔は誰もが息を飲むほど綺麗な顔だと思う。
アルデール公爵家 次男 フレディオール・アルデール それが僕だ。
父親は宰相。母親は元伯爵家の令嬢。兄はこの家の跡継ぎと決まっている。
兄の名前は グレン・アルデール。そんな兄もまた顔が綺麗だ。
兄は男爵家の令嬢と恋愛をし、結婚することが決まっていた。
けれども、その婚約は破棄となった。
それは他の誰でもなく、僕自身が原因だった。
あろうことか、兄の婚約者は僕に言い寄ってきた。
兄に近づいた事から、彼女の計画は始まっていた。
彼女の計画は、全て僕に近づくため。そ 兄と恋に落ちる振りをしたのも全て彼女の計画のため。
でも、彼女の計画は失敗した。僕に言い寄っている所を、兄に見られたから。
それから何人もの人間が、彼女が僕に言い寄ってきた事を証言し、怒った兄はそのまま彼女とすぐさま婚約破棄をした。
父も、母も、周りの人間も、兄も、誰もが口を揃えて言った。
「あなたは悪くない。」
でも、僕にはそんな言葉は届かなかった。
全て悪いのは、この顔が原因だから。
慕っていた兄の幸せを壊してしまったこと。そのことが僕の頭から離れなかった。
だから僕は、婚約をすることにした。
僕自身が婚約すれば、今回みたいな事は二度と起こらない。
誰かの幸せを奪ってしまうこともない。
それが最善だと思った。
幸いにも、僕の婚約者はすぐに決まった。
彼女は侯爵家の長女で、名前は フィーネリア・イブリント
彼女の噂は聞いた事がある。
彼女もまた美しい令嬢で、僕と同様 友人の婚約者に言い寄られてしまい、その友人が婚約破棄になったという。
現在、彼女はそのことが原因で人前に出なくなったらしい。
彼女の身に起きたことは、僕ととても似ていた。
だから、もしかしたら僕と彼女は似ているのかもしれない。