表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

僕の幼馴染がエスパーな理由

作者: 井村吉定

 今日の昼休み、クラスのイケメン――茂川(もがわ)くんが、彼女の作った弁当で舌鼓を打っていた。


 正直言って羨ましい。茂川くんの彼女は美人、僕もあんな美人にあーんとかしてもらいたいものだ。


「いいなぁ……。僕も彼女にお弁当を作ってもらえたらなぁ」


 何気ない独り言。誰に聞かせる訳でもなく、ただ1人自分の部屋で愚痴る。それが僕の日課だ。


 僕――鷲津(わしづ)康孝(やすたか)に彼女はいない。だから嘆いたところで僕の願いは叶わない。だけど次の日――。


「ヤスくん、お弁当作ってきたの。ヤスくんに食べてほしいな」


 幼馴染の上沢(うえざわ)神無(かんな)が僕のために、お弁当を作ってきてくれた。


 彼女はいつもそうだ。愚痴を溢した次の日には、どういう訳か僕が望むことをしてくれる。


 まるでエスパー。心の中を覗き込んでいるんじゃないかと思えるくらい、僕の気持ちを見透かしてくる。


「茂川くんは土曜日に彼女とデートか……。いいなぁ、僕も女の子とデートしてみたいよ」


 こうして部屋で1人ぼやくと、また次の日には――。


「ヤスくん、親戚の人から水族館のチケット貰ったの。今度の土曜日一緒に行かない?」


 長い付き合いの幼馴染だからこその阿吽の呼吸―――とも言えなくもないけど、流石に正確すぎるような……。


 まあ、いいか。別に害がある訳でもないし、むしろ神無のおかけで僕は毎日が充実してる。


 …………。


 でもやっぱりちょっと気になる。


 独り言を言うと、必ず幼馴染が願いを叶えてくれる。なら、彼女が叶えられないような望みを言ってみたらどうなるのか。


「ああ……神無のことが好きなんだけど、告白するのが恥ずかしいよ。神無の方から告白してくれたりしないかな? アハハハ、そんなことある訳ないよね」


 つい僕は言ってしまった。もしかしたら次の日、神無が僕に告白してくれるのではないかと思って。


 そして、案の定――。


「ヤスくん、あのね。私、ヤスくんのことがずっと好きだったの。だから私と付き合って下さい」


 またしても僕の願いは叶った。


 しかしどうやって、幼馴染は僕の気持ちを察しているのだろう?

 彼女は僕の身振りや手振りで、僕が何を考えているのか分かると言っていたけれど、本当にそうなのだろうか?


 ――パタン


 部屋で考え事をしていると、本棚の上に立て掛けていた写真立てが不意に倒れた。


「?」


 立て直そうと写真立てに近づくと、写真立ての足の部分に黒いコードが伸びていることに気付く。


 そして写真立ての裏の部分を見てみると、そこにはビニールテープで小さなマイクが張り付けられていた。


 ああ……そういうことか。


 神無は僕の心を読んでいたのではなく、僕の独り言を盗聴していた。


 いつ盗聴器が仕掛けられたのかは分からない。でもそこまでして、願いを叶えてくれる幼馴染に僕は胸が熱くなった。


 僕は意外と変わった女の子が好きなのかもしれない



最後まで読んでいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 面白い
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ