第9話
「エイ……ト?」
エイトが僕に拳銃を向けている。
いや、そもそも僕のことを主と言ったか?
とにかく、どうにかしないと命の危機だ。
「主よ、ボクはあなた様を倒して、世界に革命を起こします!!」
「待てエイト、僕だ、信忠だ!!」
弾丸が放たれる。
どうしようもないかと焦る思考は世界すらもゆっくりと動かして見せる。
いや、よく見ると……
「止まってる……?」
「なんで、そんな、なんで、なんで忠信が、なんで、なんで、ここに、なんで……?」
エイトが強く狼狽する。
いや、狼狽するどころか、もはや壊れた機械のように同じフレーズを繰り返しながら僕の顔と撃った弾丸に目配せしている。
ともかく、1度落ち着かせなければ今度はエイト自身が危ないような気も感じさせてしまう。
「エ、エイト、落ち着け……」
「"緊急停止装置作動"」
エイトが現れた暗闇から声が聞こえたと思うと、エイトが項垂れたまま動かなくなる。
「"はぁ、調整が足りなかったか……"」
「鳴田、お前、エイトに何をした!?」
「"あっはっは、俺はただエイトを慮って止めてやっただけさ"!!」
「それだけじゃない、あの机の資料に……そもそもなんで僕の場所にお前が居るんだ!!」
鳴田はシニカルに嗤いながら、不快な見下した目で見てくる。
「"ホント、6番目は今までの最高傑作だな、まさかそこまで理解してくれるとは俺も思わなかったよ"」
「何を、言ってるんだ……?」
僕を無視して机まで歩みを進めると、机上の資料を手に取り、こちらに向ける。
「"せっかくだ、やり直しでお前が消える前に全部説明してやるよ。"」
「消え……!?」
「"あぁ、エイトのために7番目をつくってやらないとだからな……7番目だし、戸蓋江ってとこか? "」
机の上の羽根ペンを取ると、メモを取る。
「"ま、冥土の土産だ、俺とお前とエイトと世界の話をしてやるよ。"」
「"と言っても、お前には分からねえかもしれねえが、俺はたまたまこの終わった世界に流れ着いただけの流浪者なんだよ。
この世界自体、設定と残滓を残してほとんど無くなってた訳だが、その残滓の中に俺好みの奴が居た訳だ。
お前の言う資料に有翼の少女を描いてたろ、アイツが気に入ったから、蜂みてえなカミサマとニコイチしてエイトを作ったわけだ。
だがな、その設定ってやつのせいでエイトは俺を見なかった。
どうも確認したところ、最初のカミサマに反逆したカミサマじゃねえと、エイトは恋に落ちてくれない設定らしいんだ、笑うだろ?
俺が神不在の世界で最初にカミサマになってエイトを作ったせいで、俺とエイトの理想郷へ遠退いた訳なんだ。
だから、いくつかあった登場人物の残滓を組み合わせて、俺を設定に組み込んでお前らを作ったわけだ。
そうすれば、俺に反逆に来たところで取替子すれば、晴れて俺はエイトと一緒にカミサマになれるって訳だ"。」
「ふざ、けるな、つまり僕は……」
「あぁ、ただの俺の踏み台に過ぎない。」
最悪だ、今までの人生全てすら、コイツのためだけに存在していたという事実に吐き気さえ覚える。
「"6番目お前は唯一俺と取替子出来るとこまで来てくれたからな、まぁお前の失敗は次の7番目で取り返してやるよ。"」
どうにか、何が出来ないか?
こんなクソ野郎に、僕は何も出来ずに終わるのか?
いや、何か……
『大丈夫、ただの人間のキミなら、なんにだってなりたいものになれるよ。』
これなら可能性が……
「"それじゃあ、さよならだ。"」
["再起動"]