第5話
"失敗した。"
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「あぁ、その石は崩さない方がいい。」
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「簡単に言うと、中に入ることで今のタイムラインと過去のタイムラインと未来のタイムライ……」
装置の起動と同時に、さっき聞いた説明をするエイトが隣に現れた。
「信忠、そっちのボクじゃなくてこっちのボクが本物だからね?」
「いや、わかってるけど、さっきの説明がこうやって実物を見てみると分かりやすいなぁって……?」
と言うよりは、エイトの説明が基本的に分かりづらいのだが。
「まぁ、いいですけど……」
不服そうにじっとりとした視線をこちらに向ける。
「さて、幸福郷に向かうって言ったって、一体どうやって向かうんだ?」
過去か未来か、半透明の人々が隣を何か掘っている。
「そうですね、まずはこの場所を過去を通って下山するところからかな。」
「下山って、ここは昔山だったのか?」
「はい、生命の爆風前は水位が低かったから……」
言葉を詰まらせ、怪訝そうな顔で空を見つめる。
「エイト?」
「あぁ、隕石はもう降らないので気にしないでいいよ。」
「何で急に隕石なんだ!?」
会話が成立していない?
エイトは一体何を……?
「っっ、ごめん信忠、過去の歴史に何か欠損があるっぽくて。」
「……エイトは、大丈夫なのか?」
「ボクは大丈夫……でも、ロストした部分には関わらない方がいいかも。」
「……わかった。」
きっと、その隕石もロストした部分なんだろうか?
エイトの後ろを着いていくと、そのまま願峰灘にへと入っていく。
……
意を決して着いていくと、水中でも呼吸が出来た、というよりはエイトの言う通り、水位が低かった時代を歩いているのだろう。
空を見上げると綺麗な満月と夕日と共に、半透明に薄く光る魚や魚人種が御伽噺のように泳ぎ舞っている。
時折、地面に足を取られそうになりながらもゆっくり、ゆっくりと山を降りる。
起こらなかった未来の僕が、時折滑落するのを尻目にひたすらにエイトを追いかける。
いや、もしかしたら……
「信忠、どうかした?」
「ここって過去と未来と現在が同時に存在してるんだよね?」
「うん、そうだね?」
「僕が滑落した未来が見えているのに、なんで僕は滑らず着いていけてるんだろうね?」
「あぁ、それは……」
エイトが止まると、未来のエイトがエイトからズレて歩いていく。
「ボクらが失敗しない時間軸を選んで歩いているだけだよっ。」
「……しれっと言ってるけど、相当の事じゃないか?」
課題の答えを丸写ししているような、カードの内容を見ながらハイアンドローをしているかのような所だろうか?
「信忠、やっと地上まで着いたよ!」
「僕にとっては海底みたいなものなんだけど……」
巨大なイカやグロテスクな魚が隣を泳ぐ。
エイトは掘っ建て小屋のような場所まで小走りで走ったかと思うと、こちらに振り返る。
「信忠、こっちこっちー。」
「そこに何があるんだー?」
掘っ建て小屋まで歩みを進めると、背後に巨大な何かが止まる。
「ここからは、このバスで空港まで向かうよ。」
エイトはまた僕の知らない単語でここからの道先を伝えてくれた。