第4話
「信忠、2ヶ月前の言葉はまだ覚えてる?」
2ヶ月前……
何か言ったかな、こいつが来た時に。
「あー、ごめん、忘れ……」
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あれから2ヶ月、手伝うとは言ったものも特に何事も無く日常は過ぎていった。
"ヒーロー物みたいに現れる大きな敵と戦ったり、異能バトルの様な血で血を洗う"争いに巻き込まれないようで、安心とともに少し物足りなさすら感じる。
「冬休みの間にハメを外しすぎないようになー。」
担任は毎年お決まりの言葉を掛けながら、HRを終える、クラス委員に着任したエイトの掛け声で皆がそれぞれ教室から出ていく。
僕は『何故エイトが来るまでクラス委員が決まっていなかったのか?』という疑問に違和感を覚えつつも、それを考える度に後頭部の痛みに思考を遮られる、"あぁ、またこれか。"
「信忠、帰りましょうっ!」
「……」
「信忠!!」
「あぁ、ごめん、考え事しててね。」
答えの出ない疑問は1度置いておき、僕らは帰宅することにした。
「信忠、2ヶ月前の言葉はまだ覚えてるっ?」
"「2ヶ月前というと、僕が出来ることなら手伝うって話か?」"
出来れば冬休みか始まる日に聞きたくない話が始まるが、以前放った言葉を飲み込む訳には行かないため話を続ける。
「うんっ、やっと長期休暇が来たから、早速手伝って貰おうと思ってね!」
そのまま手を引かれ、アパートの裏側まで連れていかれる。
そこにはぐにゃり、と空間がひしゃげ渦巻く、謎のオブジェクトが配置されていた。
「何これ……?」
「ふふーん、聞いて驚くと思いますが、内部組込式統合平行時間統合線世界分線装置内蔵型三時間線混線型平行世界生成装置です。」
「……ごめん、もう1回聞くけど何これ?」
専門用語から入るのがエイトの悪い癖だ。
"江戸時代の奇妙奇天烈な発明家でももっと分かりやすい名前を付けるだろう。"
「簡単に言うと、中に入ることで今のタイムラインと過去のタイムラインと未来のタイムラインをもつれさせて、現在と過去と未来が同時に存在する神域に近い平行世界を作る装置です。」
「めた……?」
専門用語の説明に新しい専門用語が出た。
"パルスのファルスのルシがコクーンでパージか? "
「神域は神性を持つ者が顕在することの出来る独自空間でのことで、私たちが今いる物語の時間沿線上のどこにでもあり、どこにもない空間ですね。」
「ストップストップ、これ以上聞いたら頭がパンクしちゃうよ。」
"電子辞書のように"知らない言葉の説明に新しい知らない言葉が出てきてしまう。
「まぁ、話を聞いた感じだと、それを使えば上司に会えるってこと?」
「半分正解で半分違いますね。」
「えっ、どういう意味だ?」
しまった、"[説明を聞く]なんて選んだら、また長い説明が挟まれてしまう。"
「ボクたちは神域に招かれてませんので、正攻法では神域に入れません。」
「また、死をトリガーに到達することも、ボクが懲戒処分を受けてる手前、不可能と言っても過言では無いでしょう。」
「……ですので、過去時間軸幸福郷に向かい、生命の爆風によって生まれた物語の亀裂を利用します。」