第3話
どうやら朝に通り魔事件があったらしい。
被害者の名前は聞き取れなかったが、犯人が捕まっていないため安全第一という事で臨時休校となった、ご安全に。
通り魔事件の説明中にエイトのドヤ顔がウザかった、もしやこれの被害を逸らしたとでも言うのか?
だとしたら、僕の代わりに死ぬことになった奴は不運を通り越して理不尽な目にあった物である。
「仮にその被害者が僕の代わりとして、守護天使サン的には問題じゃないの?」
「大丈夫ですよ。」
問題ない、とでも言いたげだが様子がおかしい。
周囲の空気がピンと張り詰める、何だこの絶望的な空気感。
お願いだから問題を増やさないで欲しい、1番いいのを頼む。
「だって、一個人の運命を捻じ曲げた時点で天使失格、堕天したも同然ですから。」
「大問題じゃないか?」
「いえいえ、信忠の命を救うためならボクの職程度大したことないですよ。」
守護天使力高いな、元守護天使になったのに。
「まぁ、ボクは元から上には文句があるので、信忠が良ければ、手伝ってくれると嬉しいんですよねー?」
チラチラとこちらを見てくる、いつの間にか下の名前呼びだし、彼女面か?
しかし、救われた感覚がないままに、僕のせいで天使辞めさせられた、なんて言われても実感が全く湧かない。
狐に爪で抓まれてる気分だし、助けてくれとも言ってない、なんなら平穏のために早く居なくなって欲しい。
まぁ、それらを見繕って肯定する理由がない。
時には人は何よりも残酷になり得るのだ。
「あー、助けてくれた(仮)のはありがたいんだけど……」
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"「まぁ、僕に出来る程度のことなら手伝うよ……?」"
「やったぁ、流石信忠、ボクが守護ると決めただけはあるね!」
頭痛。
いや、おかしい、僕の思考から導き出された答えじゃない。
「いや、ごめんエイ」
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"「そんなに言われると照れるな"、いや、違」
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"「助けてくれたんだから気にしなくていいさ"、待っ」
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断ることが出来ない。
"[▶いいえ]が選べないレベルの拒否権の無さに、往年のローラ姫でさえ『そんな、ひどい……』と一言コメントをくれるだろう。"
「はぁ、はぁ、わかった、わかったから、ちゃんと手伝う、それでいいんだろ?」
エイトが不思議そうな顔で首を傾げる。
「信忠、手伝ってくれるのはさっき聞いたよ?」
「だから、何度もやり直すのはやめてくれ……」
「えっ、やり直すって?」
「さっきからやってる、エイトの都合が悪くなると都合の良いようにする奴だよ!!」
「待って、信忠、ボク、そんなの知らない、ホント、ホントだよ?」
エイトが目に見えて狼狽える。
図星を突かれて焦ったのか、と思ったがそうとも見えず、本当に知らない様子だ。
「じゃ、じゃあどうやって助けたんだよ!?」
「それは登校時間が変われば自動的に被害者が変わ……」
エイトが止まり、何かに引っ掛かる。
「待って信忠、何で、何で信忠とボクは朝のHRに間に合ったの……?」
「なんでって……」
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"どうやら朝に通り魔事件があったらしい。
被害者の名前は聞き取れなかったが、犯人が捕まっていないため安全第一という事で臨時休校となった、ご安全に。
通り魔事件の説明中にエイトのドヤ顔がウザかった、もしやこれの被害を逸らしたとでも言うのか?
だとしたら、僕の代わりに死ぬことになった奴は不運を通り越して理不尽な目にあった物である。
「仮にその被害者が僕の代わりとして、守護天使サン的には問題じゃないの?」
「大丈夫ですよ。」
問題ない、とでも言いたげだが様子がおかしい。
周囲の空気がピンと張り詰める、何だこの絶望的な空気感。
お願いだから問題を増やさないで欲しい、1番いいのを頼む。
「だって、一個人の運命を捻じ曲げた時点で天使失格、堕天したも同然ですから。」
「大問題じゃないか?」
「いえいえ、信忠の命を救うためならボクの職程度大したことないですよ。」
守護天使力高いな、元守護天使になったのに。
「まぁ、ボクは元から上には文句があるので、信忠が良ければ、手伝ってくれると嬉しいんですよねー?」
チラチラとこちらを見てくる、いつの間にか下の名前呼びだし、彼女面か?
しかしまぁ、胡散臭さと後出しジャンケン感は否めないものも、僕を助けた上、天使を辞めさせられたのも事実なんだろう。
はぁ、平穏な生活というものは求めれば求めるほど遠くなるものなのか。
「わかったわかった、まぁ、僕が出来る程度のことなら手伝うよ。」
「やったぁ、流石信忠♪」
無邪気に喜ぶエイトを見て微笑ましいと思う"と同時に、
後頭部が少しだけ痛んだ気がした。