第1話
"真っ暗な世界と2つの死体。
取り残された1人と大きな後悔。
認識が形を作り、全を成すのであれば……
ゆっくりと手を伸ばすと応えるように光は強くなった。"
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「はぁ、はぁ……」
「ゆ、夢……?」
時刻は午前5時18分"、軍隊なら18分遅刻だが、僕は軍人でも無ければ軍艦や銃器でも無い"。
二度寝をしたいところだが、この時間からの二度寝は流石に厳しいと判断し、7時30分のアラームを解除してベッドから降りる。
カーテンを開けるとまだ夜明けは遠いのか、ただ薄ら明るい曇天だけが視界に入った。
"小説や漫画ならば晴天の青空が視界に入り、目にダメージを与えつつ欠伸と涙の1つでも誘発するものなんだろうが"、残念ながら今日も昨日も明日も曇り、5年後に僕が仕事をする時の気持ちを反映でもしてくれてるのだろうか。
戯言も程々に。
欠伸をカミ殺しながらキッチンに向かう。
残り1枚の食パンを袋から出し、ゴミを丸めて捨てようとした時、違和感に気付かされる。
何かを巻きとる音、水の流れる音、1枚足りない食パン。
"これが、シルベスターやトムなら「なんだ猫か」なんてありきたりな言葉で済ませられるが、もしルパンや石川五右衛門ならサインでも貰わなきゃならない。"
取り敢えず"後頭部か側頭部のサインを貰うために"フライパンを手に取りトイレへと忍び寄る。
ガチャリ、と鍵が外される。
「えっ、まだ起きる時間じゃなぁぁ!?」
可愛い女の子の泥棒(推定)が出てきたので大きく振りかぶっ……
パンッ
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振りかぶったフライパンを拳銃のような物で撃たれて弾き飛ばされる。
"次元の方だったか。"
「何考えてるですか!?」
「そのまま返させてもらうね?」
不法侵入と食料の窃盗をして、そのまま人の家のトイレを無断で借りた上に銃で撃ってきた、"リーヅモに併せて裏が乗れば3倍満くらいには到達するんじゃないか? "
「挨拶も無しに攻撃されるなんて産まれてこの方始めてですよ!」
「僕も不法侵入した側に説法垂れられるのは始めてだよ。」
あまりにも話にならなすぎる。
朝からうるさいと変なおっさんが"猟銃持って"乗り込んできても文句を言えないくらいの言い合いをしながらどうこいつを追い出すかを考える。
「ケイリを呼ぶと高くつくしなぁ……」
「ちょ、ちょっと待って、まずは話を聞いてくださいよ!?」
電話を取る手を遮られる。
あ、もう6時53分なんだ……。
「まず、ボクは不審者じゃなくて、キミの守護天使だから!!」
僕はボーッとしていた。
カストゥ……、"なんとかさんは不審度を+233ポイントかくとく(いみがない)"
「カストゥ何とかさん、もうケイリ呼んでいい?」
「あ、それは名前じゃなくて、名前は、エイトです!」
初対面にいきなり専門用語で話すな。
そう突っ込みたい気持ちを強く抑えながらそのエイトなる人物の話に耳を傾ける。
僕は不審者傾聴ボランティアか?
「じゃあ、エイトさん、僕は……」
「碧砂江 信忠、ですよね。」
「……合ってるけど、どこで知ったの?」
「キミの守護天使ですから!!」
「いやそのカストゥルドゥティの説明をしてくれ。」
僕のカストゥルドゥティって何だよ、"厄介なカスタマーセンターか?
ここでは僕の分かる言葉で話せ。"
「まぁ、平たく言えばキミを守る存在ですね。」
「生活圏を勝手に侵してる存在に言われても全く納得いかないな?」
「しょうがないですね……」
エイトは深くため息を着くと立ち上がる。
ケイリを呼ぶチャンスと思い携帯に手を伸ばす。
"その時不思議なことが起こった。"
エイトの背後の壁から光が差し、2対の翼を背中から生やしたのであった。
「……天使?」
「いや、だから最初からそう言ってるじゃないですか!?」
突っ込みが飛んでくると、午前7時30分に到達した携帯からは朝のアラームが鳴り響いた。