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毒舌メイドは後輩?

 学校という仕組みが苦手だ。

 余り人と関わる事に対して積極的で無い人間からすると、最低限以上に人と会話しなくてはいけない学校は、苦である。


 まぁ、ただ毎日決められた時程に沿って行動すれば日常が終わると言うのは、嫌いじゃない。

 今日もこうやって、逐一その戦いで使用された武器を解説しなくちゃ、次に進めない社会教師の授業をダラダラ聞いている。これはこれで面白いけど、受験勉強に歴史を使う生徒からは評判悪い。bgmにして聞きながら、ノートに日本刀のイラスト何かを落書きしたりしてみる。




「……ーい」


 ……。


「おーい、雪」

「……!? は、はい! 」


 やばい、ぼーっとしてた。


「なんでいきなり元気の良い挨拶なんだよ」

「……なんだ、日向ひゅうがか」


 先生かと思ったじゃないか。


「なんだとはなんだ」


 名前は矢原日向やはらひゅうが。数少ない僕の友人の一人である。去年同じクラスになった時に話すようになって、今でもクラスで唯一僕に話しかけてくれる。

 茶髪でピアスを開けて、ワックスで髪型を整えてるイケメンだが、僕との交友関係があるというマイナス面がチャームポイントだ。


「何かぼーっとしてたからさ。授業なんてとっくに終わってるぞ。ほら、周りを見てみ」


 言われた通りに周りを見渡すと、確かに授業なんてとっくに終わっていて、皆お昼ご飯の準備を始めていた。


「雪、何かあったのか? 」


 ……何があったかと聞かれれば、あった。昨日からうちにメイドが住み着いたという事だろう。しかし、それをここで言う訳にもいかない。まぁ、心配してくれるのは嬉しいけど、やっぱりイケメンはムカつく。


「顔が評価されてる癖に、内面まで評価されたいのか! 」

「いや、どういう意味だよ。……まぁ、いいや、一緒に飯食おうぜ」


 日向は誰も座ってない目の前席を、動かしてこちら側に向ける。そして、机の上に弁当を広げ始めた。日向の弁当はかなり豪華で、美味しそうな弁当だった。毎日そんなお弁当を作って貰えるなんていいなぁって言ってみた所、自分で作ってるらしい。何だこの完璧イケメン。


 僕だって自分で作っていたけど、今日は藤花が弁当を作ってくれていた。自分だと手抜きをしてしまうので、正直な所楽しみにしてた部分もある。

 そういうわけで、鞄の中を見て弁当を取り出そうとしたのだが……見当たらない。

 やばい、これは忘れたパターンだ。


「弁当忘れたのか? 」

「……みたい」

「俺の半分食べるか? 」

「い、イケメンからの施しは受けない! 」


 後、そんな事したらクラスの他の女子から僕は刺されるだろう。


「食堂行ってくる」

「行ってらっしゃい」


 僕が席を立って、廊下へ出る。多分、さっきまで座ってたあの席は、日向を狙う女子でもう、いっぱいになっている頃だろう。

 ちょっと食堂行ってくるみたいなニュアンスで日向は受け取っていたが、本当は今日は一緒にお昼ご飯を食べられないという意味だ。


 廊下を真っ直ぐ行って、階段を一階分降りた。下の階は下級生のフロアの為に、廊下の雰囲気が少し変わる気がする。


 そして僕は、次の階段へと足を踏み出した時、僕は見つけたんだ――そこに。


 そこに、顔を見知りのメイドがいた。

 勿論、メイド服では無く制服だったけど。



 ◆ ◆



「そんなに私の事が好きなんですかご主人様? ハッキリ言って気持ち悪いです」


 会うなり、藤花は表情も変えずにそんなことを言ってきた。


「いや、僕が居るのは、この学校の生徒だからで……、藤花こそ、どうしてここにいるんだよ」

「私はこの高校の1年生です。知らなかったんですか? 」

「知らないって! 」


 クラスメイトすら認知度が危ういのに、下級生なんて把握している訳が無い。


「それで、ご主人様はこんな所で何をしてるんですか? 」

「あの……」

「何ですか? 」

「学校で『ご主人様』はちょっと……」


 誰かに聞かれたら絶対勘違いされる。恋人同士に見られてからかわれる……みたいなラブコメ的展開では無く、普通にドン引きされそう。それはどっち側の趣味なんだって。


「ご主人様の分際でメイドに文句ですか」


 問題無いと言うと語弊が生まれそうだが、別にそれは問題無いんじゃないかなと思う。


「でしたら、『雪先輩』と呼ばせて頂きますね。もし気に入らない様でしたら、屑男とか鬼畜ご主人とかプルトニウムとかありますけど……」

「その中なら……最初のかな」


 最後のはどういう遠回しの嫌味だったのか分からないけど。


「では、雪先輩と呼ばせて頂きますね」

「口調も、もう少しラフでいいと思うよ」

「何ですか、自分好みにメイドを改造して楽しいですか。変態ですね」

「違うって、今の感じだと僕が君に堅苦しい言い方を強要してる様に見えるからさ」


 藤花は少し考える様な顔をして、小さな声で「そういう趣味はお持ちじゃなかったですか」と言った後、了承してくれた。だから僕はどんな奴に見えてるんだよ。


「それで、特に用がない様なら私はもう行きますけど、先輩の相手をするのは家の時だけで充分です」

「と、特に用があったわけじゃないんだけど驚いたから……」

「なら、私は先輩と違って友達を待たせてるので、いきますね」


 僕も待たせてるっちゃ待たせてるんだけど。

 まぁ、いいや。これ以上遅れるとご飯食べる時間も無くなる。


「じゃあ、また家でね」

「……はい。……あっ、先輩ちょっと待ってください」

「ん? 」


 藤花から引き留められる。すると、藤花は背負っていたリュックに手を入れる。そして、何やら取り出して手渡してきた。


「これは……お弁当? 」

「……折角、私が作ってあげたのに持っていくの忘れるなんてほんと先輩は馬鹿です。愚鈍と言ってもいいです」

「えっと……ごめんなさい」

「それでは、私の用は済んだので行きますね」


 藤花はそう言うと、振り返りもせずに行ってしまった。どうしたらもう少し打ち解けられるんだろうか……。


 その後、教室に戻った所予想通り居場所が無かった為、屋上で1人で食べた。

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