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第九十四話 学校をつくろう。 その4

予定通り更新。


「学園長ねぇ。学園長は色々と持ってないと難しい職務だからなぁ。」


「そうですよね。」


学術的知識に学術的知名度、さらに経営者としての側面もあり教壇に立った経験も必要となる。

誰でも良いという訳にはいかないのだ。

もちろん全てを持っていなくても優秀な部下が居ればよい。

ただしヴィジョンがないと厳しいのは事実だ。


「どういった学園にしたいんだい?」


「どういった?そうですね。優秀な人材を育てる学園ですかね?」


「それは何処の学園もそうだろうね。特化するモノとかはあったりするかい?もしくは目的意識とか。」


「特化ですか?特には考えて無いです。目的は人材確保ですね。貴族でない優秀な人の採用をして国の運営を確実なモノにするって事ですかね。」


「それでは、より難しいね。」


「あっ、そうですね。あえて言えば、学園長に色々と任せたいとは思っています。」


「うん?そうか、そういう方法もあるか。分かった。探してみるよ。」


「すいません。お願いします。」


ザバルティさんの屋敷の食堂でチキン南蛮定食を食べてお腹を満たした後別室でお茶を飲みながら話しました。


「そうだ。暇なら私と一緒に学院にいってみないかい?」


「学院って王立アスワン学院ですか?」


王立アスワン学院。

アスワン王国における最高水準の教育を受ける事が出来る学校である。

学術・武術・魔術を勉強する場所であり、アスワン国内の15歳になったモノは全員が受験資格を与えられる。

試験結果によってクラスは分類され、能力テスト等の結果により定期的なクラス替えがおこなわれ、SからDまでのランク分けがあり、同ランクでも成績に応じて1から始まる数字によって分けられる。

五年間のカリキュラムが組まれており、全学年を合わせると生徒数は恐ろしく多いマンモス校の一つである。


「そうだよ。」


ザバルティが所属しているのはザバルティが入学すると同時に設立されたSSクラスである。

Sクラスが特待生であるなら、SSクラスは超特待生クラスという事になる。

基本的に学院で教わるレベルの外にある知識や教養や技術を持っている存在だけが許された特別の中の特別、スペシャル・オブ・スペシャル。

そしてその中でもずっと主席を独走しているのがこのザバルティ・マカロッサである。

SSクラスのメンバーが授業を受ける時はSクラスのメンバーと同じモノを受ける事になる。

理由は単純明快でSクラス以上の授業が存在しないからである。

その為、基本的には出たい授業のみ参加するというシステムである。

定期的な試験があるので、クラス替えもありえるのだが、出なくても点が取れるなら出なくて良いという訳だ。

では出ない間はどうするのか?

自由である。

各自に与えられた部屋で研究に没頭するのも良いし、出席しなくても良い。

とにかく在籍し何かしらの研究結果を残せばそれで良いという驚異のシステムである。

それだけ、このSSクラスの人材が凄いという証明でもあろう。


「わかりました。勉強させてください。」


「ミーリア。準備をお願いできるかな?」


「かしこまりました。ジュン様。しっかりと勉強してくださいませ。」


ジュンは自分が授業を受ける訳ではないのに、ゴクリと唾を飲んでしまう程の緊張感を味わった。

それだけミーリアのただの言葉がジュンに圧力を与えたのである。


「はい。神明に誓って勉強させて頂きます。」


「「えっ?」」


「はい?」


逆にそこまで畏まられたミーリアとザバルティはジュンの心理に気がつかず驚く、そして空気を読み間違えたかとジュンも驚く。


「あははは。」


「ふふふ。」


「なんか空気を間違えましたかね?」


「いや。今のはミーリアが悪いね。」


「申し訳ありません。つい。」


「えっと・・・。」


「すまない。こっちの話さ。気にするな。」


「そうです。癖が抜けないだけです。」


「そ、そうですか?あははは。」


ジュンは二人について行けなかったが、人間とは不思議でそういう時は笑って誤魔化してしまうモノらしい。


「では、準備をしてくるから少しここで待っていてくれ。あっそうだ。ミーリア、アレをジュンに出してやってくれ。」


「アレですね?かしこまりました。」


さっとミーリアとザバルティが部屋を出て少ししてシーリスが入ってきた。


「そ、それは?!」


「ジュン様が好きなハズだと主がおっしゃっておりました。」


シーリスが持って来てお盆の上には、ガラスのコップが乗っていた。

そのガラスのコップの中には黒っぽい液体がシュワシュワという音を立てながらコップの底の方から泡が出ている。


「こ、コーラ?!」


「さぁ、どうぞ。」


ジュンの前に出された飲み物は、コーラである。


「先日、完成したばかりでございます。ご賞味ください。」


「あ、ありがとうございます。」


ジュンは口では感謝した言葉を発しているが、既に意識はコーラに集中していた。

その様子を見ているシーリスがクスクスと笑っているのだが、気がついていない程に。

全集中。


最初の一口を口に入れてシュワシュワと炭酸を感じながら独特な薬の様な匂いと甘みを感じつつ喉を通る感覚を楽しんだジュンの頬を滴る水滴がとめどなく流れるのは仕方がない事かもしれない。

100年以上の体感の訓練をして、疎まれた異世界人。

大好きなコーラを飲んで溢れかえる感情。

彼もまた一人のただの人間なのであるから。



◇◇◇◆◇◇◇



「つい。癖が出てしまいました。」


「その様だね。だが彼は思い出したのかもしれないな。」


「そうでしょうか?」


「ああ。あの様子は君も憶えているだろう?」


「・・・忘れるハズもありませんよ。」


「数奇な運命に翻弄されるモノだな。」


「そうですね。」


二人は扉の向こうに広がる青空を見上げるのであった。


次回更新は

明日、2021年9月20日(月曜日・祝日)20時

よろしくお願いします。

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