第九十一話 学校をつくろう。 その1
予定通り更新。
学校をつくる。
そう決めたジュンは直ぐに行動に移した。
開発が進んだ女神交差区の敷地内では場所が無い。
という訳では無く、文化施設を構築する予定地として幾つか用意してあった。
この候補地を見て回り、サイズ的に頭を悩ませた。
「やっぱ、五歳から二十歳の間は勉強できる方が良いよな。」
この世界は国よって成人年齢は若干の違いはあるが、およその場所で15歳が成人とされている。
その上で、地球の知識における幼少期の勉学の重要性を取り入れると、5歳から20歳となるのだが、そうなると規模的には将来を見据えて大きな物を用意する必要があるとジュンは考えたのだ。
「新しい区を用意する方が良いのかな?」
そうなると、ジュンだけの力では足りず、ザバルティとラムザを巻き込む必要が出る事は本人も分かっている。
独り悩んでいるジュンは先王アンディスに相談する事に決めてアンディス先王の元へと向かう。
学校をつくる構想をアンディス先王に話すとアンディス先王はニヤリとする。
「ほぉ。また面白い事を考えておるのぉ~。」
「そうですかね?」
「5歳からの教育と言えば王族の教育ぞ。それを平民にもさせるとはな。じゃがそうすれば平民のレベルもあがり国力増加に繋がるのは間違いないのぉ。しかし平民では5歳から親元で働くと聞く。そこが問題になるのではないか?そもそもそれだけ小さい子供にエリアを跨いでまで行かせようとは親が許すまい。」
「なるほど。」
先王アンディスが言う通りである。
いくら早熟のこの世界であっても5歳の子供を別のエリアに行かせるのは親心的に難しい。
そもそもこの世界での平民は子供を直ぐに働かせる。
日本とは違うのだ。
「そこは義務教育と言う事で法律によって縛れませんか?」
「縛るのは難しくないが・・・。う~む。」
「では、お昼は給食として支給する。後は大人に開く夜の部を併設するのはどうですか?」
「なに?大人にも教育するのか?」
「はい。大人達が身を持って経験すれば理解も早いと思います。」
「なるほどな。百聞は一見になんとやらという奴であるな?」
「そういう事です。もちろん学費は国が持つ必要がありますよ。義務なんですから。」
「むむむ。資金かぁ。」
「先行投資は必要ですが、学校の整備をしっかりすれば、学園都市としての発展も夢ではありませんよ。」
「たしかにそうじゃが。う~む。」
「では、5歳から9歳までは義務教育として都市の中に散りばめて用意しませんか?そこでは初等教育として、基礎的な語学に算術に基礎剣術や基礎魔術を教えるに留めて、10歳から14歳は中等教育としてより実践的な教育の場として成人になるまでに苦労しない様な教育を施し、15歳から19歳は高等教育として専門的な教育の場としてはいかがでしょうか?中等教育は義務とする事で事実上の人手不足の管理者側の補充に繋がると思いますし、成人以降の年齢での高等教育は有料にして色々な専門分野の発展に貢献させるという方が良いかも知れませんね。」
「よかろう。お主に任せよう。では早速サーストンに許可を貰いに行こうではないか。」
先王アンディスが認めた事でサーストン王が反対するはずも無い。
そもそもジュン名誉公爵を信頼しており、国に有益であると分かっているのも大きい。
先ずは初等教育の場を整備する事が決定したジュン達は初等教育を午前中のみとし、エリア毎に設置する事で決定した。
中等教育と高等教育は新しくエリアを構築し、そこに建て集める事にした。
枠はドンドン決める事が出来るのだが、人をどうするのか?という事に頭を悩ませる事になる。
「貴族でも次男や三男等の継承権の無い者達もおるが、適任者ばかりとは思えんのぉ。」
「そうですね。公募しますか?」
「うむ。例の公務員扱いであろう?」
都市国家オヒューカスにおいて公務をする立場は貴族が請け負っている。
貴族でなければ公務の任に着く事は難しい。
だからといって貴族を増やすのは財政を圧迫するだけである。
もちろん下働きレベルには平民も利用されていたが、契約社員的なモノであり正規とは言い難い。
そこで公務員制度をジュンは利用する事にした。
公務員であっても貴族ではないというモノで、平民であろうが貴族であろうが出自不問とする事で、出自に関係なく有能な者を重宝するシステムに切り替えたのである。
それを女神交差区において採用する事で民営からの優秀な人材確保を可能にしたのである。
「はい。そのつもりです。」
この時、先王アンディスの胸中には複雑な思いもある。
貴族位の者に優先的な仕事の斡旋が出来なくなるという懸念があったのだが、そもそも教育を平民に施す以上、本人次第であると割り切った。
この世界の一つのルールである自己責任を採択したのである。
「平民からジュンの様な人物が産まれてくる可能性があるからのぉ~。」
ぼそりと呟く内容が先王アンディスの本音であろう。
知恵があっても知識が足りなければうまく出来ず、知識が有っても知恵が無ければ活用できない。
共に揃う事が重要なのである。
それを人生の経験で理解している先王アンディスの考え方なのである。
「楽しみじゃ。」
個の発展ではなく国の発展を願う先王アンディスらしい言葉であった。
次回更新は
明日、2021年9月12日(日曜日)20時
よろしくお願いします。