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第八十八話 祭りの裏側で。

予定通り更新。


「おい!あっちにデカい魔力を感じるぞ?!」


「いや、一つだけじゃないな。大量に何かが向かって来ているな。」


見張りの冒険者達が騒ぎ出した。

音と明かりに誘われて、深海から浮かんできたモノがいるらしい。


「あれだけ、狩りだして回ったのにな。」


「まぁ、陸地の方は大丈夫そうだから、成果はあったさ。」


二人の男はヤレヤレといった感じで、話し合うが特に慌てた様子も無い。

中央には神獣と呼ばれるフェンリルが陣取っており、こちらも少し鼻を動かしただけだった。


「最初の取り決め通り、海の方は私の方で対応するよ。」


「ああ。頼むぜ。」


神々しいまでのイケメンは相手の返事を待ってから、傍に仕えるメイドを見て頷くとその場から移動する。

それに付き従うメイドと一緒に船の上に飛び乗る。


「事前に話した通りだ。準備はいいかな?いくぞ。」


「「「おぉぉ!!」」」


船には150人ほどの人が乗っていた。

実際、戦闘に参加できるのはこのうち100人程で、残りは船の操縦に費やされる。

乗っていた者達は統一された鎧を身に纏っている。


「ザバルティ様。こちらです。」


「ああ。」


メイドに案内されるままにザバルティはついて行き、ブリッジへと辿り着く。

ブリッジには何個か椅子が用意されており、その一番奥に誘導されてザバルティは座った。


「ザバルティ。出発するぞ?」


「はい。ポワロ叔父上。よろしくお願いします。」


「ああ。船の事は任せておけ。」


【ザ・海の男】という風貌のポワロ叔父上はザバルティの父の弟にあたる。

この船の操縦はこのポワロを中心とした船乗りがおこなうのだ。


「だが、本当にお前が指揮しなくて良いのか?海の化け物は半端ないぞ?」


「ええ。大丈夫です。ユカ達なら問題ありません。」


「そうか。じゃあ、おめえらしっかりと俺達の腕を見せつけろ!出発だ!!」


「「「おぉぉぉ!!」」」


ポワロの発言に返事をする船の乗組員達は一斉に動き出した。


「帆をたため!面舵一杯!全速前進!」


普段は、帆船を装っているが、ザバルティ一味のダンバル一家の手によって魔改造されており、魔動力を搭載している。


「あまり、魔動力は利用しないから、荒くなるが許せよ?」


「いやいや。ポワロはいつも荒いでしょ?」


「うっせぇ!キーファ。お前に任せても同じだろうが?!」


「ちょっと。それどういう意味よ?」


「言葉のまんまだ!」


いがみ合う感じの二人を前にザバルティは苦笑する。

その横に後ろに立っているメイド姿のミーリアは、何も無いかの様に、ザバルティにお茶を奨めている。


他の船員も『また始まった!』という顔になるだけで、特に止めようとはしない。

いつもの事。

じゃれ合いに過ぎないという判断であろうか?


そんなじゃれ合いがおこなわれている間も船の中では船員達が慌ただしく動き回る。

帆はたたまれ、船は動き出す。


そのまま、船はリーダーたる船長と副船長の指示も無いしに、進んでいく。

指示出しを少ない言葉で出している存在がいるからだ。


「左舷35度。」


「「「了解(ラジャー)。」」」


このやり取りはじゃれ合いが始まると直ぐになれた会話である。

彼女の名はジューネ。

キーファの妹であり、ザバルティの家庭教師を務めた事のある人物である。

口数少ないハイエルフの女性は、寡黙ながら船員に慕われている様で、問題なく指示は遂行されるのである。


「距離10マイル。」


「「「了解(ラジャー)。」」」


双眼鏡を構えたジューネからの新たな言葉。

それに答えた船員の一人が双眼鏡を覗き込む。


「距離5マイル。」


「「「了解(ラジャー)。」」」


ジュールからの再度の言葉を聞いたじゃれ合い中の二人はピタリとじゃれ合いを止める。

そして二人とも双眼鏡を覗き込む。


「ザバルティ。本当に任せて良いんだな?」


「ええ。もちろんです。」


「何度も確認しない!」


「ちっ!エンジン停止!!総員待機!!!」


「「「了解(ラジャー)。」」」


ポワロはキーファのツッコミを苦々しい顔で反応しつつも、自ら拡声器を使って船体中に指示を飛ばす。

その指示を受けた船員達は停止姿勢になるが、代わりにユカを筆頭としたザバルティの部下達は一斉に動き出す。

ユカ達の3分1程は一斉に船底へと向かい始める。

徐に船体の横が開き始めると、そこから小さい船に乗った二人組達が20艇ほど出て行く。

更に、3分1程が看板にある板を手に取りそれに立ち乗るとブ~ンという音共に空中へと浮かび上がった。

そして残りは船体の端へと並び警戒態勢へと移行した。


「いつ見ても凄いわね。」


「そうだな。」


それを見て感嘆するキーファとポワロとは違いジューネは胸を張っている。

愛弟子の作成したモノが誇らしい様である。


「あれがジェットスキーであっちが空中ボートだっけ?」


「違うわよ。空中ボードよ。」


「うるせぇな!」


ちょっとした間違いでも食いつかれポワロはたじたじである。

どうやら、じゃれ合いが復活しそうな感じであるが、誰もツッコまない。


「クラーケンなら直ぐ。」


「ジューネ先生。訓練を兼ねているので、直ぐにはならないですよ。」


ジューネがザバルティの横に来て話しかけるが、ザバルティはそれを否定した。


「海上戦はなかなか出来ませんからね。」


「一理ある。が、彼等を低く見積もり過ぎ。」


ジューネの言葉通りの展開がその後おこなわれた。

ユカ達は一人の死傷者も出さずに、数分で5体のクラーケンを討伐してみせたのであった。


次回更新は

2021年9月4日(土曜日)20時

よろしくお願いします。

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