第八十七話 夏祭(サマーフィスティバル)in都市国家オヒューカス(新エリア) その3
予定通り更新。
「さぁ、それではこの夜空に一輪の花を咲かせましょう。」
その実行委員会会長になったアンジェラ王女殿下の言葉と共に花火が始まった。
ひゅ~♪・・・ドッカーン♪・・・パラパラパラ♪
日本の花火と敢えて一緒になる様に、効果音を付けたオリジナル魔法。
そのなも『一輪花』。
「「「「おぉ!」」」」
「綺麗!」
「凄い!」
色々な声がこの都市国家オヒューカスに響き渡る。
そして数秒の余韻の後に、連続した『一輪花』が都市国家オヒューカスの夜空を照らし出す。
最初の一発以降は連続して発動する事で連続花火になっている。
次々あがる花火に感嘆と驚きの声があちこちから上がる。
この世界には魔法がある。
しかし、その魔法を余興に使う事はない。
なぜなら、魔法は敵を粉砕する為か、生活の向上に利用する。
余興に使うという発想は無かったみたいだ。
生活するので精一杯なのに、そんな余興を考える程余裕があるのは王族や貴族だけだろうし、この世界の花火は打ち上げて音を鳴らす程度のモノでしかないと聞いた。
音で合図をするというモノで爆竹レベルの単体と考えると分かり易いかも知れない。
そもそも、地球においても花火は日本の文化的な意味合いが大きく、長い間平和な時代が続いたとされる江戸時代に発展したらしいのだから、この魔物が跋扈する異世界では当たり前の事なのかもしれない。
「家が焼けないかな?」
そんな心配をしている人も居るがもちろん焼ける事は無い。
そういう事も計算して創られた魔法なのだ。
創造者はザバルティさんだ。
あの人は凄すぎる。
チートオブチートであるとまた改めて思わされた。
『いや。元々考えていた魔法だから。』
と本人は言っていたが、考えていたからって直ぐに創れるモノではないと思う。
魔法は想像力が大切と言うけど、これは常識外ではないだろうか?
そんな事を考えている間に、予定の300発は終了した様だ。
パラパラという音と共に、最後の花火『一輪花』が終わりを迎えた。
「続きまして、闇夜を斬り裂く紅蓮をお届けします。」
『ヒューイ♪』
口笛とも魔物の音とも思えない音が鳴り響くと、ケンドラゴの洞窟の山頂の方から明かりがさす。
太陽が上がって来ているかのように見えるそれは真っ赤に見える。
暗闇の中なので目立つそれは、徐々に近づいてくる。
ざわざわする会場を他所に、その真っ赤な存在は割れた。
そしてその欠片の様なモノの一つが会場の方へと向かって来る。
徐々に向かって来るそれは姿が分かる様になってくる。
「あれは?鳥?」
「うそ?」
「精霊様?」
『ギャオォォオン!』
響き渡るその声は魔物のそれに聞こえるのだが、威圧感は無い。
そして、バサリと羽を動かす様な仕草をすると真上に旋回を始めた。
「一匹じゃない?」
「まだいる?」
一匹目に目を奪われていた観客達は、後に続く同じモノに気づき始めた。
数が多く、鳴き声を上げるので、心配になって来た観客はザワツキが止まらなくなりそうになっていた。
「ご安心ください。あれが【闇を斬り裂く紅蓮】です。」
アナウンスが入る事で落ち着きを取り戻してきた観客を前にして、真上に旋回した【闇を斬り裂く紅蓮】達は、上空で旋回を繰り返している。
10匹の炎の鳥は一度ケンドラゴの洞窟の方へ向かっていくと、列を作り飛び回る。
航空飛行ショーの様子を見せ始める。
曲技飛行としては、急降下、急上昇、失速、宙返り、横転、きりもみ、およびこれらの変形や、いくつかを組み合わせた複雑な経路をもつ飛行がある。
特殊飛行、アクロバット飛行、エアロバチック、エアロバット、スタント飛行などいろいろの呼び方がある。
そして数を利用した編隊飛行も見せてくれた。
早さを利用したそのショーは15分程度であったけど、観客を魅了するのに十分であった。
そして次々、花火の様に炸裂し、夜空に吸い込まれていった。
その中で一匹だけは上空で旋回していた。
「それでは皆様。今宵は特別にもう一つ会場を用意しております。【闇を斬り裂く紅蓮】の後に続いてお進みください。」
そのアナウンスを合図に【闇を斬り裂く紅蓮】はケンドラゴの洞窟側から飛んできて、その真逆の方へ進んでいく。
その先には例の特設ゲートがある扉へ繋がっている。
先ほど迄、護衛の様にそこに立っていた兵士達は横に避けており、道を造っている。
『次の会場はこちら』と書かれた案内板?誘導板が用意されており、観客達は進んでいく。
次々ゲートを潜り消えていく。
暗闇なので、大きな違和感は憶えない様だ。
「あれ?」
「ここはどこ?」
「壁が無い?」
全員の移動とはならなかったが、恐怖心より好奇心が勝る人が多かった様で三分の二は移動しているみたいだ。
「では、海の部開催です!」
その言葉を合図に見渡す限りの会場に明かりが灯る。
そして【暗闇を斬り裂く紅蓮】が海とは真逆から遅れてやってきて、観客の真上を通り抜けて海上へと進んでいき、遠くの方で花火となった。
「「「「「おぉぉぉ!」」」」」
「うみ?!」
あちこちから、驚きの声と歓声が上がった。
驚きのまま観客は次から次へと上がる『一輪花』と会場からあふれ出る様な感じの『噴火花』に魅了されていく。
「きれい。」
「すごい。」
いたる所から、ほぉ~となっている様子が伺える。
爺ちゃんも婆ちゃんも、子供も大人も、男も女も、年齢も性別も関係なく喜んでいる様子が伺えた。
大変だったけど、実行して良かった。
少しほっこりしました。
次回更新は
明日、2021年8月29日(日曜日)20時
よろしくお願いします。