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第八十二話 白い空間。

予定通り更新。


「ふぅ。やっぱり緊張するなぁ。」


扉を目の前に、ドキドキする心臓の鼓動を感じながら、ジュンはノブに手を掛けて扉を開く。


ジュンの前に広がるのは白い空間である。

その空間には黒い肌と尖がった耳という特徴を持つ人が数名居る。

そう、彼等はダークエルフ族だ。


「どうも。お疲れ様です。」


ペコリといつもの感じで頭を下げるジュン。


「これはジュン様。お疲れ様です。我が主がお待ちですよ。」


にこやかな笑顔と共に、優しい声で返事を返すダークエルフ族の青年。


「そうですか。では今日もお願いしても良いですか?」


「もちろんです。では参りましょう。」


数回目となるやり取りであるが、ジュンは慣れない。

偉そうにする事は簡単だが、したいとは思っていないのだ。

それに、この空間は彼等ダークエルフ族が守護している場所でもある。

『郷に入れば郷に従え』ではないが、聞く方が良いだろうという判断もある。

自分の場所では無いというのが大きいのだろう。


ダークエルフの青年はザルバトワ・セリンエンデスという。

セリンエンデス家はこの空間を守護するダークエルフ族達の家の名前であり、現在は守護名となっている。

ザルバトワは、若いが実力を認められた存在である。


ザルバトワの先導によりジュンは奥の扉へと進む。

その中へ入ると、目の前の中央には建造物がドンと設置されている。

そしてこの空間は広いのだが、壁には沢山のドアが設置されており、幾人かの人達が歩いている。

それを見守るダークエルフ族の人達もかなり居る。


そんな中を、迷う様子も見せず、ザルバトワは中央の建物へと進んでいく。


「おっ。ザルバ。お疲れ。」


「お疲れ。通らせて貰っても良いかな?」


「うん?ああ、聞いている。良いぞ。」


簡単な挨拶とやり取りをした後、そのまま建造物の中に入り、その建物の中央にある扉を開き中に入る。

その中にも幾つかの扉があるが、迷わず進むザルバトワを見て、いつも感心してしまう。


「いつ来ても、迷ってしまいそうですよ。」


「あっ、そうですね。色々仕掛けもあるので、そうかもしれませんね。」


「仕掛け?があるんですか?」


「ええ。お話しできませんが、ありますよ。」


「さぁ、もう直ぐです。行きますよ。」


その中の一つの扉を通ると、最初に居た様な空間に出る。先には一つの扉があり、手前にはダークエルフ族が5名居る。


「おお。ザルバ。お疲れ様。」


「お疲れ様です。」


「さぁ、ジュン様はこちらへ。」


ダークエルフ族の人が椅子から立ち上がり、奥にある扉へと誘導してくれる。

誘導先の立派な扉を開けると、目の前にはメイドさんが居た。


「ジュン様。ようこそ、おいでくださいました。」


「シーリスさん。ご無沙汰しています。」


「さぁ、どうぞ、こちらへ。」


シーリスさんに誘導されて、ソファに腰を下ろす。

この屋敷で話をするメイドさんはこのシーリスさんの他にミーリアさんとアイリーンさんにコーネスさんの四人だ。

ミーリアさん以外はハイエルフ族で、ミーリアさんは人間族だ。

本来は人間族ではなく人族と呼ぶと思うけど、人という括りは大きい意味を持っていて、ここで言う人族は二足歩行をおこなえるエルフやドワーフ等も含まれるので、それとは括り分けする為に人間族と呼ぶらしい。

ややこしい事だ。


「今日も紅茶でよろしいですか?それとも麦茶かウーロン茶にされますか?」


「紅茶でお願いします。」


「ではいつも通りミルクを多く入れてアイスでお出ししますね。」


「はい。」


うふふふ。

という笑顔と笑い声をする上品な人で、美人だ。

というか、ここのメイドさんは、いや、ザバルティさんに関わる人達は皆、美人か美男子だ。

少なくとも、不細工だと言える人は居ない気がする。

うう~ん。


「待たせたかな?」


ガチャという音と共に扉が開くと、絶世の美男子が入ってきた。

そう、ザバルティさんだ。

後ろにはミーリアさんが従っている。


「いえ。いま来たところです。」


という返事を返した。

時間は5分前じゃないかと思う。

時間に正確な人だから、ほぼ間違いないだろう。


ここから一時間ぐらい話し合いをした。

ザバルティさんは現在、学生と実業家と貴族と冒険者と研究者等、いくつものわらじを履いていて、忙しい身だ。

学生としての活動が中心という事で、午前中は学園に行き、午後からその他の事をしているという感じのようだ。


今日は、学生活動を終えて昼からは研究者としての活度をして、今に至るらしい。

転生者ってみなこんな感じで忙しいのだろうか?

誰かに丸投げでも良いのではないだろうか?


「今日はご飯を食べてから帰るかい?」


「良いんですか?」


「もちろんだよ。アイツなんかいつも来るぞ。そろそろ来る時間じゃないかな?」


ザバルティさんが言うアイツとは?


「おお。ジュンじゃないか?お前も来てたのか?」


僕が入ってきた扉が開いたと思ったら、ザバルティさんが言うアイツが入ってきた。


「ええ。打合せです。そんな事より、本当にいつもラムザさんは来てるんですか?」


「ああ。そうだな。便利なモノがあるからな。」


ラムザさんは自分が入ってきたドアに振り返る。


「この【転移ゲート】は本当に便利だからなぁ。」


【転移ゲート】となずけられた装置は魔法の力によって、色々な場所へと一瞬で行ける夢の装置だ。

現在はザバルティさんの本拠地となるアスワン王国の王都テースト内の屋敷に来ているのだ。


「まぁ、昔に比べたら使い勝手が悪い部分があるけどな。」


「仕方が無いだろう?ブリエンドの要請で、防衛上の為に改造したんだ。そもそもその大きな理由はお前の商会の所為だろうが。商会が利用できるように改造しなければいけなかったんだからな。」


「わかっている。すまない。」


ラムザさんが愚痴ると、ザバルティさんが責任はお前にあると追求した。

それにはすかさず謝罪をするラムザさん。


「で、今日の食事は何だ?」


「はぁ?!」


ケロッと本日の食事の話に変えてしまうラムザさんは本気で悪いと思っていないと僕は思った。


「今日は、寿司だよ。」


「そっかぁ。楽しみだ。」


僕の驚きを他所に、二人は当たり前の様に食事の話に進んでいった。

そんな僕を見てミーリアさんとシーリスさんは笑っていた。


次回更新は

2021年8月14日(土曜日)20時

よろしくお願いします。

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