第六十七話 国家プロジェクト その6
☆誕生祭☆開催中。
一挙七話更新の第6弾!
「う~ん。兵士の増員が必須ですなぁ。」
「左様。当然ながらそれを指揮する存在も必要であります。」
「国のサイズが1.5倍ですからなぁ~。いきなり集めても、それなりにしかなりますまい。」
「困りましたな~。」
都市国家オヒューカスの重鎮達。
つまり貴族達は面を合わせながら、唸っていた。
それは当然だ。
国の規模が1.5倍に急になり、人員配備をお願いされたのだから。
そもそも領地持ちの貴族であれば、その者が雇えば済む話である。
しかし、この都市国家オヒューカスにおいては領地を持つ貴族は初の試みとなるのだ。
更に、期限付きの貴族席の者が初代の領主となるのであるから、気を遣うのは当然であろう。
そして、一つの領地であると共に、同じ都市内である事も悩ませる結果となった。
「たしかに、今後の事を考えれば、領主専属の兵士のみというのは難しい話ですな。」
「ええ。同じ都市国家内であるという事で、国が見るべき対象でもありますからな。」
都市国家オヒューカスはあくまでも自治の一つである。
大きな枠組みとしてはロックフェラ連合国内の一つなのであるから、一都市としての役割も担っているのだ。その都市内に領地貴族が発生するだけとも言えるからであるし、今後の領地持ち貴族に対する処置も同等になり得る訳だから、慎重に決定しなければならないのである。
1案
・同じ都市内として、国が全ての警護を担当する。
2案
・外枠の壁、国外に対して国の警護対象とする。
3案
・外枠の壁も含めた領地内の全てを領主が警護する。
長い討論の末におよそこの三つの案に纏められた。
細かい案もあったのだが、それでは早急な対応が必要な時に遅れるという事で、単純な内容へと纏められたのだ。
「で、摂政殿はどれが希望ですかな?」
「僕はどの様なモノでも構いません。ただ、前提として僕は摂政の任期期間しか、領主をするつもりはありません。出来るのであれば、あそこはアンジェラ王女殿下の領地にして頂きたいと考えております。アンジェラ王女殿下が女王陛下になる可能性はゼロではありませんでしょうから、その先は元首となられる方によって任命して頂ければよろしいかと考えております。その先も領地持ち貴族として一族で見る方とは少し違うでしょうが、そこも念頭に置いて考えて頂きたいのです。」
「なっ?!貴方はあの領地を手放すと?!」
「ええ。僕にとって、領主は荷が重い事です。それに、僕が領主に留まってしまえば、あらぬ噂や誹謗を受けないとは言い切れません。敢えてお願いするとすれば、あの領地の中の一画に僕の屋敷を造らせて頂けたらと思います。出来れば税金が掛からないと嬉しいんですがね。」
「そんな事で良いのですか?そもそもあの領地の開拓は摂政殿がおこなわれたのです。それ位の我儘は許される事でしょう。皆も良いな?」
同意する意見ばかりで少し怖い。
もしかするといつまでも領主として居座られる事を危惧していたのかもしれない。
気持ちは分かるし、屋敷を認めてもらえるのなら、別に問題は無い。
まぁ、現在の権力者である摂政が僕であるので、そんなに難しい訳では無いけれど、この先の事まで考えると、権力を失った後の方が重要だと思うから、先ずは根回しだ。
「まぁ、その話は追々するとして、今は警護の話です。」
無理矢理、元の問題に話を戻す。
その後、色々と意見を交わしたが中々決まらなかった。
「人員の不足も考えられますし、現状として考えるならば、国の負担は大きくなりますが2案目の国外に対する警護を国がおこない。領地内の警護は領主がおこなうという事で良いでしょう。」
「現状では妥当案ですな。」
「ええ。仕方がありません。」
と言う事に落ち着いた。
そして、貴族内での話し合いの結果、領主をアンジェラ王女殿下にして頂ける様に提案する事となった。その結果、当面は僕が代行する形になる訳だ。
摂政の期限までは。
しかし、これらも前提がある。
『王と王妃の復活』
これが成し得ねば、その話も無くなるのだ。
よって、現状の開発段階においては僕が陣頭指揮をとり、ある程度の完成までの間に、王と王妃の復活を成した上で、王と王妃より承諾を貰わなければいけないという事になった。
とりあえず、今は決したので先の事は先で考えよう。と言う事になり会議は解散した。
僕はアンジェラ王女殿下の元へと報告をする為に赴き報告をする。
「そうですか。ジュン様はどうしても残る気は無いのですね?」
「えっと、屋敷は持ちますから居ますよね?貴族としては残りますとは言えませんけど。それに僕は異界人です。いつ戻る事になるかは、わかりませんからね。」
そうなのだ。
僕は国樹神様に召喚された人間でしかない。
現状で戻りたいとか戻るとかは考えない様にしているけど、急に戻れる事になったり、戻されたりする可能性がゼロじゃない。
一応、国樹神様に帰れるのか聞いた事があるけど、必ず帰れるとは仰ってもらえなかった。異世界召喚には色々と条件が揃う必要があるらしい。
それには、国樹神様より上位の神々の意向も反映されるらしく、国樹神様のみの独断での行動は出来ないそうなのだ。
だから、いつでも帰れる用意をしつつ、今僕に出来る事を一生懸命しておく事が重要だと考えたのだ。
色々と偉そうに言っているが、正直、僕は戻りたいのか、それともこの世界に居続けたいのか、よくわからないのだけどね。
次回更新は二時間後。
20時。
よろしくお願いします。