第六十一話 美味しい食事と悪戯っ子。
予定通り更新。
「そうか、そんな事になってやがんのか?」
「はい。」
報告を受けたちょい悪オヤジ風のオジサマは戸惑いと苦笑いの混じった反応を一瞬示すのだが、その後直ぐにニヤリと笑顔になる。
「流石に奴と関わりのある者だな。面白くなって来た。こりゃ、ひょっとすると、直ぐに回収の目途がたつんじゃねぇか?」
「可能性はございます。」
「よし、ちょっくら、アイツの顔を拝みに行くか。丁度、昼飯時だしな。エリザも来い。」
「うん。」
そう言って立ち上がるちょい悪オヤジはそのまま奥の部屋へと進むと、更に扉に手をかけて、奥へと進んでいく。
それに着いてエリザと呼ばれた女性は嬉しそうに着いて行く。
整った顔立ちをしているのだが、綺麗な美女というよりも可愛らしい女性と言う方がしっくりくる感じの女性である。耳はエルフ族の特徴を持っており尖った耳をもっているのだが、彼女はエルフ族では無い。ハーフエルフと呼ばれる種族だ。
エルフの持つ幻想的な美しさと人の持つ能動的な美しさを兼ね備えているのだが、彼女の性格の所為なのか、美しいという言葉より可愛いという言葉が似合うのだ。
そんな二人を待ち受けていたのは真っ白な空間となっている部屋だ。
その部屋には簡易的なテーブルとイスが置いてあり、そこには黒い肌を持つ、耳が尖がっている三人の衛兵の様な者達が出迎える。そうダークエルフと呼ばれる種族の者だ。
その者達に手をあげる。
「お疲れ~。」
「ラムザ様。エリザ様。お疲れ様です。」
挨拶を交わすとそのまま更に奥の扉へと入るといくつもの扉が設置された空間に入る。
「お疲れ~。」
「お疲れ様です。」
ここでも同じ様にダークエルフに声を掛けて挨拶を交わす。
そしてそのまま迷う事なく一つの扉へと辿り着き、開けて入る。
「お疲れ~。アイツは戻ってるか?」
「お疲れ様です。先程、ここを通られました。」
「わかった。サンキュー。」
ダークエルフの一人の返答を聞いてニコリとして先にある扉を進んでいく。
扉を抜けた先は品のある調度品が並べられた綺麗な部屋で、その中央にはソファが二つ向かい合わせに置いてある。
そこには、日本の世界の秘書を思わせるピシッとした服を着た女性が立っていた。
麗しエルフ族の中でもハイエルフという種族に属するその者は美しい顔と凛とした佇まいを見せており、街を歩けば幾人もの男を釘付けにしたしまうであろう美貌の持ち主だ。
「おう。コーネス。アイツは居るか?」
「お疲れ様です。ラムザ様。エリザ様。ザバルティ様はいらっしゃいます。」
「そうか、じゃあ、俺が来た事を伝えてくれ。俺達は食堂に行く。」
「かしこまりました。その様に伝えます。」
変な反応をされず、そのまま言葉の通り、ラムザとエリザは真っすぐに部屋を出て行き、目的地であるザバルティ邸の食堂へと入って行った。
「よう。」
「なんだい?また来たのかい?」
「そんな冷たい事、言うなよ。ここの飯が美味いから来たくなってしまうんだよ。で、今日は何?」
「まったく。しょうがないね~。今日は【天ざる】だよ。」
「マジか?!よっし!!」
ガッツポーズを作るラムザを苦笑いで見守る様な顔になる食堂のおばちゃんとラムザの後ろで苦笑するエリザ。
「ラムザ。後ろが閊えちゃうから席に行こう。」
「おお、そうだったな。おばちゃん。今日も特盛で頼む!」
「はいよ。」
苦笑いをしながら食堂のおばちゃんが返事をする。
その様子を見る限り、嫌われてはいないらしいが、呆れられているのは間違いなさそうであるが、本人のラムザは気にした素振りも無く、エリザが座った席の横にどっかりと腰を下ろす。
子供の様な仕草をするラムザを横に居るエリザはニコニコしながら見守っている。
それはいつもの風景である様に自然である。
「はい、お待ち。特盛だよ。」
そう言っておばちゃんが持って来てくれたお盆をそのままラムザの前に置く。
お盆の上には、上にはドンと乗せられた【ざるそば】と【てんぷらの盛り合わせ】と【つゆ】が乗せられていた。
同じ様にして、エリザの前にも置かれる。
「美味しそう。」
「これは、美味いぜ。」
二人は食べる前から期待に膨らんだ言葉を漏らす。
「これ『は』じゃなくて、これ『も』だよ。僕とミーリアにもくれるかな?」
さらっと、訂正させるような言葉をラムザに言いながら、目の前に座る者が居る。
「はい。直ぐに、お持ちしますね。」
食堂のおばちゃんはラムザとのやり取りとは違う言葉を選び答える。
その言葉の使い方には親愛と尊敬とが混じった感情がある事が伺える。
その相手は銀髪銀眼の色白の美男子。
高貴な者が持つ独特の雰囲気と気品さを持っており、所作の一つ一つが洗礼されている。
そしてその横にはメイド服を着たこれまた美女である。
金髪金眼の色白でありながら、スタイル抜群であり、出る所は出ているのに、引っ込む所は引っ込んでいるという、世の中の男が望むスタイルの持ち主である。
「うん。お願いします。で、ラムザ。また、うちの食堂で盗み食いかい?」
「おいおい。盗み食いとはひどいな。たしかに、食事をしに来ては居るが、それは仕方がない事だと俺は思うね。こんなに美味しい料理は中々食べられないんだからよ。」
「なに言ってんだ?お前の所のお店に行けばもっと良いモノが食べれるだろ?」
「バカ。あんな堅苦しい所じゃ、ゆっくり出来ないだろうが?それに従業員がみんな固まっちまう。」
「それは仕方が無いだろう?お前は世界でも有数の商会長なんだから。」
「ちっ。うっせぇ。なりたくてなったわけじゃねぇ。」
そんな二人のやり取りをエリザと、ミーリアと呼ばれた女性は優しい眼差しで見守っている。
親友同士の他愛もないやり取りなのだから。
「そんな、ことより少し面白い事になって来たぜ。」
「面白い事?」
「ああ。」
ニヤリと笑うラムザの顔は悪戯っ子のような無邪気さを兼ね備えている。
それを見た親友であるザバルティは、また『始まった』と、苦笑いを浮かべたのだが、話を聞くにつれて、ラムザと同じ様に悪戯っ子の様な笑顔へと変わっていった。
「まったく。お二人とも子供なんですから。」
ボソッと言ったミーリアの言葉にエリザが頷いた。
次回更新は、
2021年7月3日(土曜日)8時
この日は一挙7話ほど更新する予定です。
8時・10時・12時・14時・16時・18時・20時
よろしくお願いします。