第六話 不思議な体験。
僕は暗くなった王城の中を散歩した。
真っ暗な空間を歩くと、寂しさが増す。
廊下などにはランタンの様なものが等間隔に壁に吊るされているが、その明かりはその周辺を照らすだけだ。
ふと、夜空を見上げると、月が輝いている。
あれをこの世界でも月と呼ぶのか分からないが、月の神秘的な明かりは暗闇を照らしている。
「僕は、どうなるのだろうか?」
ぼそっと、思いのたけが口から洩れた。
ツーっと目から流れる涙を、無意識の内に拭う。
『ジュン。』
どこからか、聞こえてくる声。
『こっちよ。』
僕はその声のする方へとフラフラと歩く。
その声は何処かで聞いた気がした声色。
分岐点に来るたびに、示される方向。
声を頼りに、僕は進む。
どうやら、城の裏側へと出てきてしまったようだ。
屋根のない場所に出た僕の前には、銀杏の木と真っ白な女性が立っていた。
その白い女性が手招きする。
『こっちよ。ジュン。待っていたわ。』
そう呼ぶ白い女性の顔は近くに来ても良く分からない。
しかし、何故か懐かしい気がする。
「僕に用ですか?」
『ふふふ。相変わらずジュンはセッカチね。』
「何処かで会った事がありましたか?」
『ふふふ。そうね。逢っていたわよ。』
何処で会ったのだろう?
僕は自分の記憶を引っ張り出すが、どうも思い出せない。
『ジュン。貴方に渡したいモノが有るのよ。手を出して。』
僕は言われるがままに、手を差し出す。
白い女性は僕の手を両手で包むように持つと、口をつける。
そのとたん、眩しい程の光が僕を包む。
『ごめんなさい。遅くなって。』
白い女性の声が聞えた。
暖かい。僕は優しい光に包まれ、目を閉じた。
◇◇◇◆◇◇◇
『ジュン君。』
「ジュン君。」
そう呼ばれて、目を開ける。
目の前には僕を呼ぶ人が立っていた。
ガバッっと僕は上半身を起こしベットに座った。
ベット?あれ?さっき迄、木の前に居たハズじゃ?
「ジュン君。大丈夫かい?」
僕の様子がおかしかったのか、マコトさんが心配そうな顔になっている。
「えぇ、大丈夫です。」
咄嗟に答えた返事はそんな言葉だった。
「そうかい?もうお昼だから、起こしに来たんだけど、調子が悪いのかい?」
「お昼?」
「あぁ、朝も起こしに来たんだけど、深い眠りについていた様だから、そっと外に出たんだ。お昼は王様との会食だったから、起こした方が良いと思ってね。」
「すいません。ありがとうございます。」
「いいよ。じゃあ準備してくれ。私は外で待ってるよ。」
「は、はい。直ぐに準備します。」
僕はそう返事を返し、ベットを出た。
フカフカの気持ち言いベットだ。
ベット?あれ?やっぱりオカシイ。僕はベットに入った記憶が無い。
頭の中はパニックだったが、マコトさんが待っている。
『他人に迷惑をかけるな。』
という言葉を思い出し、直ぐに準備する。
あれ?左手の甲に何か紋様がある?
これは何だろう?
「ジュン君、まだかい?」
マコトさんの僕を呼ぶ声で、頭の世界から戻って準備をした。
「もう少しです。」
僕は慌てて顔を洗い、寝癖を直して部屋を出た。
◇◇◇◆◇◇◇
王様との会食は和やかに過ぎた。
その中で王様から、マコトさんと僕は一か月後のロックフェラ連合国会議に一緒に来てくれるようにと告げられた。その会議には、他の黄道十二宮の勇者も参加するとの事だった。
そして、この一か月の間に基礎訓練を行なう事も告げられている。
戦闘初心者では、いざ戦う時に困るからだそうだ。
更に、会議後にマコトさんは【巨蟹宮の神殿】に赴く事になるそうだ。
そこで、強化の儀式に入るそうだ。強化の儀式と言う名の特訓だと僕は思っている。
そして、僕の処遇だ。この問題は難しいようだ。
アテネ神の勇者召喚である事は間違いないとのお墨付きをもらっているのだが、残念ながら黄道十二宮の勇者では無いとの事。じゃあ、何なの?って言いたいが、アテネ神様からはそれ以上のご神託は無いそうだ。なので、一度、ロックフェラ連合国会議にて、話し合いを設けるとの事だった。
この先どうなるか分からない僕の身の上。
出来るだけ、この世界に順応できるように出来る事は全てやろう。
「ジュン君。ちょっと良いかな?」
「はい。」
マコトさんが僕の部屋の扉をノックして顔を覗かせる。
どうぞと中に入って貰った。
「どうしたんですか?」
「少しステータスの事で情報交換できればと思ってね。」
「なるほど。」
「それに、全てをここの世界の人に話すのは気が引けてね。」
あはは。と笑うマコトさん。
疑っているとかではないけど、この世界にも真面な人ばかりじゃないだろうし、と付け加えた。同じ勇者召喚された異世界人の方が安心できるしね。と笑うマコトさんはやっぱりイケメンだ。僕が女の子なら、きっとこの笑顔にやられると思う。
「わかりました。ではご一緒させてもらいます。」
「うん。よろしく。」
イケメンの笑顔って破壊力ある!
惚れてまうやろ!といつぞやの芸人さんの言葉が頭の中を過った。
ちなみに、僕は女の子が好きです。ノーマルです。いや、ノーマルだと思います。
だけど、このドキドキは何でしょう?変な感じを頭を振って追い払う。パシン!と両頬を両手で叩く。
「じゃあ、何から考察しますか?」
「そうだね・・・。」
僕達はこうしてステータス内にある能力やスキル。称号などを一緒に考察した。