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第五十六話 ミノタウロスとの戦い。

予定通り更新。


「なにそれ、あれで初級かよ?」


僕の言葉を聞いて口の端をニヤリと上げる女神テティス様。


次の瞬間には、最後に名前を呼んでくれた女神テティス様の姿はそこには無かった。

そこは目前にミノタウロスが見える。


視界はハッキリしないがスキルでハッキリと分かる。

『気配察知』が発動しているからだ。

それにしても、元の場所に戻すにしてもやりようはあると思うんだけどな。

神様なんだから。


そう思いながらもスキルを一つ発動する。

『瞬間移動』目に見える場所に瞬時に移動させるというスキル。

魔力を使わないスキルの為、瞬時に移動出来る範囲は僅かだ。

目に見える範囲でしかないが、今はそれが役に立つ。ミノタウロスの後方にある壁へと『瞬間移動』する。このスキルはいつでも使えるが、一日の使用上限回数がある。


さて、とりあえずは攻撃を避ける事は出来る訳だが、とりあえず体が回復しない事には攻撃は出来ない。回復はスキル『自動回復』と『自然治癒』のダブル掛けで回復するのを待つ。

魔法も使いたいが、この後の事を考えると、魔力を使いまくるというのは悪手だろう。

それに残念ながら回復ポーションの持ち合わせも無い。

だからスキル『回復補助』と『薬学』は使えない。


ミノタウロスが僕の場所に気がついた様で、斧を持ち直し、こちらへ向かって来る。

スキル『鑑定』を使い、ミノタウロスを鑑定する。


やっぱり強い。レベルは80。

パワーは圧倒的。

スピードは僕と変わらない。

知力や魔力もレベルが高い分あるね。

耐久力もヤバイ。

しかも普通のミノタウロスじゃない。ハイミノタウロスと呼ばれる存在だ。


とりあえず回復しない事には倒せないな。

不思議と怖さは無くなっていた。

まぁ、あんな経験したからな。と自分で納得した。


何回かの『瞬間移動』を発動させて攻撃を避けた。

うん。ようやく体が動く様になったぞ。

痛みはあるけどね。


「イテテテ。」


痛みを我慢しながら、立ち上がる。

クサナギを持ち直し構える。


スキル『金剛』スキル『韋駄天』を発動してパワーとスピードを上げる。

そして、魔術を発動して魔力を剣に纏わせる。


ダッと足の力を爆発させる。

最高速度が乗った所で『瞬間移動』を発動させてミノタウロスの上空へ移動して

そしてスキル『水月斬』を発動する。

僕が悠久の時の中で身に着けた斬スキル。『水月斬』。

水に反射する月を斬るかのようにさっくりと、僕のクサナギがミノタウロスの首を斬る。

そして瞬間移動でミノタウロスの後ろへ移動する。


ミノタウロスは僕の方へと体を向けようとする。

そこで初めて、首に赤い線が浮かび上がりミノタウロスの頭がずり落ちた。

そして首元から真っ赤な血が吹き上げてそのまま後ろへと倒れた。


そこからは僕の頭の中にピコンピコンとレベルアップを知らせる音が鳴り出した。

僕のレベルは50を越えた事を確認した後、僕はぶっ倒れた。

気を失ったのだ。



◇◇◇◆◇◇◇



「べリー!どういう事?!」


物凄い剣幕でビアンカはベリーに詰問している。

それはそうだ。幼き頃より知っているベリーに都市国家オヒューカスの摂政の護衛を任せたのはビアンカだ。ただの待機である。居なくなりようがないし、生命の危機に直面するハズが無いのに、今の現状は摂政ジュンだけが、ボスの部屋に入っているのだから。


しかも、報告を聞く限り、ベリーに咎は無い。

ジュンが勝手に入ってしまった。否、吸い込まれる様に扉の向こうへ行ってしまったというのだ。ベリーはひたすらに謝罪をするのみ。


「申し訳ありません。この様な事態になってしまったのは全て私の所為です。この責は私の命と引き換えに取らせて頂きます。」


本当に申し訳ないという面持ちで、そう謝罪するベリー。

ベリーも何もしなかったわけでは無い。

扉が閉まる迄の間に入り込もうとしたのだが、見えないバリアの様なモノに弾かれて入れなかったのだ。


「貴方が死んでどうにかなる訳じゃない。軽々しく言わないで!」


「はっ!」


ビアンカの言う事はもっともである。

如何に言おうとも、責をとろうとも、現状が回復する訳では無い。

最悪の場合は、自国の摂政を殺したとして都市国家オヒューカスがロックフェラ連合国により潰される可能性もあるのだ。

何故なら、摂政ジュンはあの世界的に影響力のあるシャルマン商会から支援され、多額の金銭を持っているのである。更には、ジュンは勇者召喚により召喚された存在でもあり、それが故意に殺されるという状況は国の威信と信頼が地に落ちてしまうのである。

必ずや、ロックフェラ連合国からの査問団が調査に入るであろう。

何をでっち上げられるか分かったモノでは無い。


「私の判断ミスね。」


実際の所、ビアンカはベリーを詰問しながら自分を責めていたのだ。


「隊長!扉が開きます!!」


「えっ?!」


ビアンカはその報告を受けて直ぐに門へと向かった。

もちろん、ビアンカだけではない。

皆が皆、門の前に集合した。


「何とか倒したのかな?それとも・・・死んだのかな?」


「パルル!不屈な事は言わない!!」


「だってぇ~。」


パルルだけではない、他の面々もジュンの力量は知っている。

死んでしまったが故に扉が開いたのではないか?そう思っている。

この洞窟のBOSS部屋が自動で開くのは、BOSSを倒したか、挑戦者が死ぬと開く様になっている。冒険者が死んだ場合は死体がそのまま置かれているのだ。


扉が開き中を伺える様になった。


「うそ?!」


皆が口に手を当てて驚く。

何故なら、目の前にはこの階層に居るはずのないハイミノタウロスの頭がこっちを向いているからだ。


そんな中、ビアンカはいち早く中に入って行く。


壮絶な戦いがあったであろう事が伺える跡が、いたる所に見てとれる。

目の前のハイミノタウロスの頭を避け、その先に仰向けになっている胴体を見て倒したのだと思ったビアンカは更に奥に向かう。


そこには倒れた姿のジュンが居た。


「ジュン!」


ビアンカは動けなかった。

全体に血が付いており倒れている姿は死を予想させたのだ。


「隊長。」


気がつくとビアンカの隣には、シャルが隣に立っていた。

ビアンカは恐る恐るジュンの傍により、膝をつける。

その目には涙が溜まる。


「嘘でしょ。」



何度目かの同じ言葉を吐き、意を決してジュンを抱きかかえようとする。


「う~ん。そんなに怒らないでよ~ビア・・・。むにゃむにゃ。」


「はっ?!生きてる?!」


「ああ、ジュン殿は寝ている様だな。」


フレヤも無言で近づいて来ていたのか、隣に立っていた。

ビアンカの心は安心した気持ちが広がるが、それ以上に沸々と湧き上がる感情があった。


「この馬鹿野郎!さっさと起きろ!心配させるな~!!」


「オイ!」


怒り爆発のビアンカを慌ててフレヤや部下が止めに入る。

そして、その怒られている当人は幸せそうな顔でまだ寝ていた。


次回更新は、

明日、2021年6月13日(日曜日)20時

よろしくお願いします。

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