第五十五話 神様の試練。
予定通り更新。
あれからどれくらいの時が経ったのだろうか?
僕はあの後、女神テティス様によって直ぐに、今いる場所へと連れてこられた。
「ふぅ。終わった。」
僕は無限とも言える時間をここで過ごした。
その間に幾度となく、僕は死んだ。
そして、幾度となく蘇った。
『時の間』と言われる試練の洞窟が、僕が今居る場所の名前だ。
何度、息絶えても、息を吹き返す場所。安らかな死を与えてくれない場所だ。
この洞窟には魔物も居れば、変なギミックがあったりする。
人生経験知とも言えるレベル経験値は手に入らない。
外の世界は魔物を倒すだけでも経験値は上がるし、訓練でも上がる。
つまり経験を積む事が数値化されたモノが所謂『経験値』でレベルアップはこの経験値がモノを言う。
しかし、この『時の間』の洞窟はその経験値が手に入らない。
代わりに、スキルが上がる経験値、所謂『スキルポイント』が手に入る。
つまり、この『時の間』の洞窟の中ではスキル習得ないし、スキル上昇を目指すという事になる。
そして、この洞窟の特徴はさらにBOSS部屋ならぬ試験部屋がある。
試験とはスキルレベルや習得スキルが必要な試験だ。
この試験にパスしないと次の階層へ行けない仕組みになっている。
こう聞くと、死にながらスキル習得をすれば良いと思うだろう。
しかし、ここで問題が一つ出る。
死ぬと、この洞窟に入った時の状態に戻ってしまうという事だ。
「本当に極悪だよ。創った奴の顔が見たい!」
独り言もよく言う様になったものだ。
そして、死を味わう経験は痛みも伴うモノなのだ。
正に、死を味わう訳だ。
初めて死んだ時は、そのショックでもう一度そのまま死にかけた。
今も死は慣れない。
本当に恐ろしい。
やはり死ぬもんじゃない。と心から言える。
こんな経験を某主人公が味わっていると思うと震えが止まらない。
「あの主人公の魂と覚悟は相当のもんだな。それだけでも英雄だよ。」
現代地球で呼んだ小説の主人公の『黄泉返り』の恐ろしさをこの身を持って経験する事になるとは思っていなかったが、本当に凄い事だと思う。
「おりゃ!どうだ!!」
もう何回目のチャレンジなのか分からない。
100回を越えてからは数えるのを止めた。
しかし、ようやく10個目の試験をクリアした。
その時だった。
『なかなか楽しませて貰ったよ~。』
気の抜ける声が聞えて来た。
「誰だ?」
そう僕が声を出したら目の前にその存在は現れた。
『忘れたの?ここに入れてあげた僕を。』
そう言ってその存在はニコリと笑った。
おかっぱ頭の少女の様な姿をしておられ、髪は金髪で蒼い目をしており、フランス人形姿に日本人形の雰囲気を持った感じと言えば良いのだろうか?整った顔立ちは美少女然としており、神々しさを纏っている。
そう、女神テティス様だ。
「仕方がないと思いませんか?あの一瞬だけしか合っておらず、会話もあの間だけ。声を覚えているハズが無いじゃないですか?」
それを聞いた女神テティス様は驚いたように目を開いた後に、鈴が鳴る様な笑い声をあげた。
『そうだね。そうだった。』
笑いは止まらない。そもそも女神テティス様は止めようとも思ってない様だ。
『あれから百万時間ぐらい経っているからね~。』
「はぁ?そんなに経っているの?ってあんまり想像つかんけど。」
『そうだなぁ。君が元居た世界で言うと、およそ四万日以上でおよそ114年以上という所だな。』
「そんなもん?」
僕は正直もっとかかっていると思っていた。
まぁ、それが早いのか遅いのかは分からないけど。
『早いぞ?今までニ番だな。』
「本当に?」
『ああ。まぁ奴は規格外じゃし、他の者は精神が壊れてしまったからね。』
「えっ?それって?」
『ふむ。君が二番目だよ。クリア出来たのは。』
「はぁ~?!」
マジかぁ~。
つうか、ここでも二番なのね。
それとも二番目だから戻って来れたとか?う~ん。
戻って来れない確率がめっちゃ高そうじゃん。
戻って来れて良かった~。
『流石、一族のモノじゃな。』
「うん?一族?」
『なんでもない。ふふふ。』
なんだろう?まぁ、僕には関係ないかな?
『これで、トヨちゃんも喜ぶだろうよ。』
「そうですかね?」
『うむ。間違いない。』
何を根拠に言っているのだろうか?
『ふふふ。君は僕に恐れを抱いて居ないだろ?それが証拠だよ。』
「えっ?それはセーブしてくれているからじゃないんですか?」
『してないよ。最初に会った時と同じ状態さ。君の格が上がったという事だよ。』
確かにあの時の様な、細胞が頭を下げようとする様な感覚は無い。
『理解したかい?』
「ええ。」
『さて、クリアしてくれた訳だから、何か記念品をあげないといけないね~。』
そう言って女神テティス様は指を鳴らした。
『パチン♪』
『ステータスを見てごらん。』
「はい。」
頷いて、ステータスを開く。
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テティス神の寵愛
『時の間の洞窟』の踏破者
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二つの称号がついていた。
『驚いたかい?君には僕の寵愛をあげよう。』
そう言いながら女神テティス様は鈴の音の様な笑い声をあげた。
『そして、もう一つこの腕輪をあげよう。』
女神テティス様はスッと僕の所へ来て腕はをつけてくれた。
銀色に輝くそれは蒼い三又の矛が嵌め込まれている。
シンプルで品があるデザインだ。
「これは?」
『簡単に言えばマジックバックだよ。腕輪の中には入らないけどね~。その腕輪を媒介にして異次元空間につながるんだ。その中に収納できるって事さ。』
「ありがとうございます。」
『感謝されるのは良いね~。久しぶりの感覚だよ。』
そう言ってまた笑う。
とても上品な笑いは神様であるからなのか神々しい。
『さて、では君を君の刻へ戻してあげよう。準備は良いかな?』
「はい。」
『では、また会おう。ジュン君。次は中級にチャレンジしてくれよ。』
『パチン♪』
女神テティス様の指音が鳴り響いた。
次回更新は、
2021年6月12日(土曜日)20時
よろしくお願いします。