記念SS(1ー1) 紅蓮の騎士 その一
初!記念SS!!
PV10000♪祝い('◇')ゞ
ええ、そうですとも。書きたかっただけです。
楽しんで頂けたら幸いです♪
いつもありがとうございます。
『私は、随分と恵まれている。』
目の前に、仕えるべき主君を戴き私はそう思った。
私はこの度、近衛騎士団の第三護衛隊長の役を戴いた。
そうなるが為に、ガムシャラに頑張ってきた結果、私は自信の願いを勝ち取ったのだ。
全ては、この主の為に・・・。
◇◇◇◆◇◇◇
私は都市国家オヒューカスの伯爵家に長女としてこの世に生を受けた。
上に二人の兄を持ち、下には弟と妹がいた。
全員が同腹の兄弟である。
これはこの国の貴族としては稀なのだが、私の父は私の母以外の妾を娶らなかった結果でもある。
父は母を溺愛していた。
そう、字のごとく溺れる程に愛していたのだ。
そうは言っても、貴族である。
子供が必要な立場である。
が、ここは母の凄さであろう。子供を五人も産んだのだ。
実績によって、周囲を黙らせたのだろう。
だから、私の父には妾が必要では無かった様だ。
厳格な様子を見せる父は、母の前だけは緩々な様子を見せていた。
母はよく『男は躾けるモノよ。』と私だけに聞こえる様に耳打ちしていた。
その時は良く分からなかったが、今では恐ろしいと思う。
母によく似た私にも父は激アマだったそうだ。
『だからアナタは!』と母が父に呆れながら怒っていたそうだ。
父に怒られた記憶が無いので、実際にそうだったのだろうと思う。
長男と次男のお兄様達は、厳格な父の教育の元、武芸に教養にと厳しく教育されていた。
私の記憶の中には、いつも剣術や魔術に躾にと日々を忙しく動いていた二人の姿がある。
そしてそんな二人は休憩の度に私にチョッカイを出してきた。
あの時は分からなかったが、今では分かる。カマってくれていたのだろう。
私の後に直ぐに弟と妹が出来てしまい、母から離れるしかなかったから。
だから、寂しいと思った記憶は少なくとも無い。
弟と妹は双子だった。
なかなか珍しいらしい。
いつも二人して『お姉様、遊んでくだちゃい。』と言っては私を追いかけまわした。
二人して、『さい』と言えず『ちゃい』と言っていた。
その言葉を聞いて周りは皆が笑顔になっていた。
そんな家族に囲まれて私は幸せな生活を送っていた。
笑顔が絶える事の無い生活。
何の不足も無い生活。
いつまでも続くと思っていた生活だった。
◇◇◇◆◇◇◇
その日の私は偶然にも、友人の家に行っていた。
同じ伯爵家の友人の家にお呼ばれしたのだ。
楽しい時間は終わり、約束の迎えを待っていた。
が、時間になっても迎えが来ないので、友人の家の従者が送ってくれる事になった。
友人の従者が最初に、異変を感じた。
いつも居る門兵、門番が居なかったのだ。
そして、そのまま『おかしい』と思いながらも、中に入る。
そのまま、従者は馬車を降りて扉を叩く。が反応は無い。
そんな従者の反応をみて彼女は馬車を勝手に降りた。
従者が中に入って行く姿を追って中に入って行く。
入って直ぐに尻もちをついている従者を見つけた。
私はそんな従者を訝し気に見て、従者が見ているであろう場所を見てしまう。
そして私は目にしてしまった。
可愛い妹と弟がバルコニーの上から覗いている顔を。
そしてその向こうの壁に妹と弟の胴体が何かによって張り付けられているのを。
その胴体が弟と妹のである事を雄弁に語ってしまったのはその日の朝に私が彼等に贈った花が彼らの胸にあり、真っ赤に染まっていたからだ。
『ギャー!』という私自身の悲鳴と共に私は意識を失った。
◇◇◇◆◇◇◇
異常と言える凄惨な事件に、若き王と王妃は心を痛めた。
しかし、彼女の立場はより危ういモノになってしまった。
彼女を支えるべき両親と兄弟の全ては死んでしまっている。
八歳になったばかりの小娘が、小さいとは言え独立国家である国の老獪な貴族相手にまともなやり取りは出来ない。
だからと言って、彼女をそのまま庇うには爵位が高過ぎる。
そこで、王と王妃は決断を下す。
爵位は彼女の叔父に継がせて、家の継続をおこなわせ、彼女も死んだ事にしたのだ。
万が一、彼女が生きている事を良しとしない存在が居た場合の対処だ。
少なくとも彼女が生き延びていける程の人としての強さを持つまでは秘匿する事にしたのだ。
彼女はこうして、伯爵家から解放された。
彼女の身の安全の為に、王と王妃は更に心を砕く。
最高の教育をと願ったのだ。
さらに、王と王妃は我が子の様に彼女に接した。
その為、彼女は王宮の奥で助けてくれる大人に囲まれて育てられたのである。
◇◇◇◆◇◇◇
彼女は自分を守ってくれる存在に対して感謝の念を持った。
それだけではなく、その大人達の為に出来る事は何なのか?を考える様になるのは自然の事だった。
彼女は、英雄譚より恩返しをするという内容のお話が好きだった。
助けられたら、助け返す。恩を返す。忠義の士。そういう話を好んでいた。
そんな彼女が、自然と恩返しを考えるのは当然なのだろう。
そして彼女には、知識に対する適正や魔法に対する適正よりも武術に対する適正の方が高かった。
自然と彼女は剣で恩返しをと考える。
『近衛騎士の護衛隊長になる。』
彼女のそんな発言を聞いた周りの大人達は、そんな彼女の希望を微笑ましく思った。
そして、そんな彼女に力を貸す事を厭わなくなったのだ。
彼女はこうして自らを律し、努力を重ねる事になる。
それを見守り、時には協力する周りの大人達はあの手この手を使い教え込んでいく。
それは厳しさの中に優しさと愛を内包した教育だった。
◇◇◇◆◇◇◇
それから数年後に彼女は、自分が守るべき対象から、守る方へと自覚する時が来る。
その日は、黒い雲が都市国家オヒューカスを覆い、水が強い勢いで都市中を打ちつける様な日であった。
王宮の王と王妃の寝室を中心として王宮内が慌ただしくなっていた。
数か月前より、王妃のお腹が膨らんでいたのを彼女も分かっていたし、それがどうしてなのかも教えられていた。
しかし、いざその日になってみると、王妃は長い時間をかけて挑まなくてはならない事態になってしまったのだ。
多くの大人達がピリピリしている状況を初めてみた彼女は怖くなった。
特にいつも優しい顔で接してくれていた王ですらも、緊張感溢れる顔で右往左往している様子は見て居られない程に怖くなった。
それを助長するかのような空模様。
しかし、そんな中にあっても王妃は健やかにいつもと変わらない笑顔を彼女に見せてくれていた。周りの大人達が止めるのも構わずに彼女は王妃の傍に居る事を許された。
『私は大丈夫。貴女は平気?』
『はい・・・いいえ。怖いです。』
『あら、私の所為かしら?』
彼女はビックリした。
なんて強いのだろうか?と。
『私は大丈夫。だから、貴女もそんな顔しないで。貴女の妹の新しい家族が増えるのだから。』
『妹?新しい家族?』
『そうよ。だから、いつもみたいに笑顔で傍に居て。』
『はい!』
それから少しの間が立って周りの女の人達が慌ただしく動き出した。
そして王妃も少し苦しそうにしだした。
彼女は懸命に、王妃の手を両手で抱きながら、神様に祈った。
少しでも苦しさが和らぐようにと。
『おぎゃあ!』
小さな新しい生命の誕生の合図が鳴る。
周囲は安心した顔になった。
王妃も疲れは見えるが意識をハッキリと保っていた。
『産まれて来てくれてありがとう。』
そう言って、小さな新しい生命に笑顔を向ける王妃が眩しかった。
とても綺麗だった。
『ほら、貴女の新しい家族よ。』
それは自分を助け育ててくれた王と王妃の間に生まれた女の子。
『カワイイ。』
『仲良くしてやってね。』
『はい。』
小さな新しい生命は王妃に負けない程、眩しい存在だった。
そして、彼女は心に決める。
『この子を私が護る!幸せな生活を送らせる!』
彼女を祝福するかのように、暗く重い雲の間から光が顔を覗かせ、七色の虹が彩りを太陽に添えていた。
◇◇◇◆◇◇◇
自分の決心を遂行する為に、彼女はより過酷な訓練とより厳しい教育を望んだ。
そんな彼女の思いに応える為に周りの大人達も協力をした。
それから月日が流れ、彼女は最年少での騎士団入りを果たした。
齢14歳の誕生日の日であった。
あの事件から6年という月日が流れていた。
都市国家オヒューカスの一人前と言われる歳は15歳。
普通であれば、成人前に騎士団に入る事は出来ない。
なぜ特別処置がとられたのか?
彼女の生い立ちか?後見人の後ろ盾か?それとも権力か?
その答えはどれも違った。
彼女は自信の力によって特別処置を得たのだ。
特例処置をとられるほどに彼女の武は突出していたのだった。
すでに騎士団の隊長と同等レベルの武を示したのだ。
試験官となる騎士団の面々を相手取り圧勝してみせた。
さらに、騎士団長との一騎打ちも負けなかった。勝つ事は出来なかったが負けなかったのだ。
あまりにも激しい一騎打ちに偶々通りかかった王が止めるという事で決着させたのだ。
『引き分け』という形で。
そうして騎士団入りした彼女は、それに驕る事は無く、更なる高みへと昇る為に研鑽を続けた。
彼女に足りなかったモノは『経験』しかなかった。
騎士団に入り直ぐに実力で頭角を現す。
騎士団で一年も経たないうちに、彼女は正式に騎士爵を与えられる。
そして近衛騎士団への転属が決まったのだ。
その彼女の名は、王と王妃から与えられた。
『ビアンカ・フォン・スプレンデン』
過去の家を捨てなければならなかった彼女。
新たな家と新たな立場を手に入れた瞬間であった。
『はっ!ありがたき幸せ。生涯の忠誠を誓います!!』
赤い長い髪を靡かせ、その精悍なる美貌は武神さえも虜にする彼女の紅い双眸から流れる一筋の雫。
それを暖かく見守る彼女を知る多くの者は彼女に涙と共に祝福を贈ったのである。
その時、彼女は15歳。
まだ、妹分が5歳になったばかりの頃だった。
本編は、通常通りの更新予定です。
今後も何かしらのタイミングを見てSSの続編を書きます。
だって、『紅蓮の騎士』の騎士しかまだ解明されてないもの( ̄▽ ̄)