第五話 歓迎会
「無理です。」
「ムリ~?!」
あの後、直ぐにファフニール王女がアテナ神様の巫女様経由で聞いてくれたのだが今のやり取りとなる。
アテナ神様からの返事は即答だった。アテナ神様では送還出来ないそうだ。
僕の絶叫は王城内に響き渡った事だろう。
そもそも、アテナ神様も、この世界の召喚の儀式を行なう巫女さん達の力も必要であるらしい。神様だから何でも出来る訳じゃないみたいだ。『世界の理』というルールに縛られているとも言われたみたい。つまり、僕はどうやったら元の世界に帰れるのかが分からないという訳だ。他の、黄道十二宮の人達も元の世界に帰れる保証は無いとの事。
「ジュン君。仕方がないよ。」
うぬぬ。イケメンのマコトさんは落ち着いている。
まぁ、彼らの場合は事前に、アテナ神様に会って話を聞いてから来ている。
状況などの説明は無かったらしいけど、覚悟して召喚を受け入れたと聞いた。
僕にも聞いて欲しかったよ。
「マコト様、ジュン様。歓迎会の準備が出来ました。ご案内致しますので、着いてきて頂けますでしょうか?」
「はい。」
「は~い。」
僕等を呼びに来たメイドさんに連れられて宴会場に来た。
「気が重たいな~。」
「まぁ、そう思うよね。でも大丈夫さ。」
マコトさんは前向きな人だな。
「勇者召喚の儀式により、召喚された【巨蟹宮の騎士・マコト様】、そして【ジュン様】の入場です。」
目の前の扉が開けられると、一斉に拍手と歓声が巻き起こった。
「すげぇ!」
「確かに、これは凄いね。」
圧倒されるマコトさんと僕。
笑顔で迎えてくれる人達にお辞儀をしながら、進むレッドカーペット。
そのまま、メイドさんに先導されて、僕等は主賓席らしき所へと案内される。
「間もなく、王様が来場されますので、暫くお待ちください。」
そう言って、メイドさんは僕等の後ろの壁の方へと行った。
マコトさんと僕は、勧められた椅子へと座る。
「ナサニエル王の入場です。」
その声が掛かると、座って居た人達が一斉に立ち上がる。
マコトさんも僕も他の人達を見習って立ち上がる。
少しして、王様と王妃様等王家の人達が入場してきた。
王家の人達は、上座に並ぶ。
ナサニエル王が代表して挨拶をされた。
「ここに、我が都市国家ガリレオに、今期の黄道十二宮の勇者を迎える事が出来て光栄に思う。【巨蟹宮の騎士・マコト様】には、我が都市国家ガリレオを上げて支援させて頂くつもりである。皆もそのつもりで励んでほしい。では乾杯を致そう。」
皆が右手に各々のグラスを持つ。
「乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
「【巨蟹宮の騎士・マコト様】に栄光を!」
「我ら、都市国家ガリレオに栄光を!」
「我ら、ロックフェラ連合国に栄光を!」
口々に意気込みを語りながら乾杯をした。
僕もマコトさんとグラスを重ねる。カチンという高音が鳴る。
会場のボルーテージはマックス迄上がった。
次々に貴族の人がこちらに挨拶に来る。皆の期待に目を輝かしており希望に満ちている。
「【巨蟹宮の騎士】様、我らを導いてください。」
「【巨蟹宮の騎士】様、我らと共に。」
そんな内容が隣から聞こえてくる。
その対応に追われているマコトさんは大変そうだ。律義に一人一人に時間を割いて丁寧に対応している。
隣に居る僕は場違いだなって思う。僕が黄道十二宮の勇者では無い事をもう皆が知っている様だ。
まぁ、仕方が無いか。
少なくとも、僕はファフニール王女に帰りたいと願い出たのだから、この場所に居させて頂けるだけでも良しとするしかないね。
そう、思い直し、僕は食事に集中する事にした。
僕は食事が並べられている場所へ行くと、そこにはシェフらしき人が取り分けてくれている。いくつかの料理を貰い、席に戻るか悩み、隅っこにあるテーブルが空いていたので、そちらに向かい食事を始める。
「超うめぇ!」とは思えなかったが、美味しく頂いた。
こう考えると、日本の食事は本当に美味しい物なのだと思う。
そう言えば、こういう異世界では魔物の肉とか使っているのかな?
流石に、王城ではないか?
2度目のお替りを貰いに行くと、そこにはお寿司らしき物とから揚げらしき物があった。
シェフに聞く所によると、何代か前の黄道十二宮の勇者が伝えた物だそうだ。
ただ、完成したのはつい最近だとか。失われたレシピになっていたそうだ。
それを復活させたのが目の前のシェフらしく。
「今では、この様な古のレシピの復活はなかなか厳しいのですが、最近アスワン王国で、レシピが発見されたのです。レシピを買うだけでも結構するんですよ。」
と教えてくれた。
この異世界でも、日本料理が食べる事が出来るのは嬉しい。
アスワン王国か。確り覚えとかないと。
「ふん。平民風情が、ガッツいておるわ。」
「品がありませんね。」
「それに比べて、【巨蟹宮の騎士】様は、なんと優雅な立ち振る舞いをされる事か。」
「そうですね。やはり黄道十二宮の勇者様は元々高貴な生まれなのでしょう。」
「くっくっく、そうよな。だからこそ、アテネ神様の加護があるのだろう。」
「加護が無いのは愚民の証拠。異世界から来たわりにはみすぼらしいのも頷けますなぁ~。」
「そう言えば、【永遠の二番】という称号をお持ちとか。」
「なんと!永遠に二番?所詮、予備なのでしょうな。」
「「わっはっはっは!」」
僕を中傷する言葉が聞えた。
僕をネタに笑いあっている。悔しいが、僕は反論できなかった。
僕は、一度マコトさんの横に戻った。
「マコトさん。僕は美味しい食べ物を食べ過ぎてしまったみたいだ。先に部屋に戻らせてもらうね。」
「そうかい?わかった。ゆっくり休むと良いよ。」
マコトさんは優しく僕に言ってくれた。
僕は、一人ひっそりと、宴会場から抜け出した。