第四十九話 ケンドラゴの洞窟へ到着。
予定通り更新。
「なんか、仰々しい造りだね。」
塀がしっかりあって、門まである。
なんか、よく見る国境とかの雰囲気だ。
「そうね。その通りだと思うわ。でも、それには理由があるのよ。」
「理由?」
「そう。さっきも話したと思うけど、この洞窟は他世界という話をしたと思うけど、その根拠となりえる神託があったのよ。」
神託とは神の言葉・伝言とされているのだ。
このケンドラゴの洞窟について、アテナ神殿の巫女が神託を受けたそうだ。
『近く洞窟の入口が東に現わる。その洞窟には幸運と絶望が並び立つ。』
『我の創造では無い。』
『我の使徒(黄道十二宮の勇者)の領分では無い。』
こう言った内容の神託だったそうだ。正直、別の神の話はされていないが、アテナ神様の創造では無いのは間違いないという事で、時の権力者によって不可侵地域とされたという経緯があり、その為に国境扱いとなり、区分けされている様だ。
しかし、洞窟から産出される資源は有益な物が多く、これもまた時の権力者により入る事が許可されたらしい。その時もアテナ神にお伺いしたらしいけど、明確な返事は無く、自己責任という冒険者の信条と相まって、今の様に入れる様になったという経緯があるそうだ。
「へぇ。つまりロックフェラ連合国としては管轄扱いだけど、管理している訳では無い洞窟なんですね?」
「ええ。管轄なのに管理してない。ややこしいのだけど、そうする事で他国に口を出させない様にしているという訳なのよ。」
世間体という奴がこの世界にも居る様だ。
「うちで、面倒を見るというのは難しいんですか?」
「難しいかもしれないわ。今まで試みる者は居た様だけど、その全ては却下されていると聞いているから。」
まぁ、難しいだろうけど、絶対できない訳では無いな。
これはもしかすると、都市国家オヒューカスとしては有益な話なんじゃ?
そうだ国樹神様に一度聞いてみるか?
それに、近いうちにロックフェラ連合国の会議に呼ばれる事になっているから、丁度良い機会でもあるかもな。
「何事ですか?!」
外からの大声で僕の思考は一旦停止する。
「ああ。そうだったわ。」
そう言い残して、ビアンカ様が馬車の外へ出て行く。
「ごめんなさい。今回は緊急で先触れを出していなかったわ。」
「どうしたんです。」
「当国の摂政が洞窟へ入る事になったの。自国民を助ける為にね。」
「そ、そうだったんですか。ですが、摂政ともあろう立場の方が自国民の為とは言え、洞窟に入られるのですか?」
「ええ。今回は特別に。」
「かしこまりました。どうぞお通りください。」
「ありがとう。」
こんなやり取りが聞えた。
急いでいた為、騎乗の人も一緒だった。先触れを出さずに国の馬車と分かるモノが通るのはビックリするのは当然だな。
「これも全て、ジュンの所為だからね。恥ずかしい。」
「なんで?」
僕が何かしたかな?
全ては護衛隊長ビアンカ様の指示の元動いたハズなのだけど?
「なによ?その顔は?アンタがしたい事をしているから、私が恥ずかしい目に遭っているでしょ?」
「えっ?それは・・・。」
「なによ?こんな事を私がしたいと思っているとでも言いたいの?」
鋭い視線で僕を見る目が怖い。
あれは人を殺せる視線ではないだろうか?
「いえ。これも全てはビアンカのおかげです。はい。」
「わかれば良いのよ。」
プイッと視線が外れた。
危ない、危ない。もう少しで死線を潜ってしまう所だった。
「あははは!兄ちゃんは、紅蓮の騎士ビアンカに弱いんだなぁ~。」
「だからフレヤ!そのあだ名は止めなさいって言っているでしょ?!」
「お~こわっ!わかったから、そんな怖い目で見るなって。」
フレヤさんのおかげ?で僕から話題が逸れた。
正直、助かるが、『紅蓮の騎士ビアンカ』って事が気になるモノだ。
「アンタも、変な事考えない!」
ギクッとした。
どうして、分かるのだろうか?
そう言えば、【女性の感】というモノがあるというのは昔から聞くけどな。
「なんの事?」
とぼける方が良いととっさに思った。
「ふん。まぁ良いわ。」
追求は免れた。
「帰ったら、しっかりと話をしましょう。」
どうやら、免れてはいない様だ。
でも、おかしいと思うんだよね。僕が主人で護衛隊長ビアンカ様が従者のハズなんだけどな。
「さぁ、着いたわよ。」
馬車が止まったのを確認して、さっさとビアンカ様が降りた。
それに続いて、他の面々も降りていく。
「これが、ケンドラゴの洞窟かぁ~。」
つい、僕は言ってしまった。
洞窟の入り口部分は、大きく広がっている。
人の手で大きくしたのかな?横に10メートル。高さ5メートルはあるかな?
山の麓にポッカリ空いているという感じだね。
崖の下にある洞窟という訳では無いね。
僕が感想にふけっている間にも、隊長ビアンカ様の指示の元でテキパキと皆は行動している。先ずはベースキャンプの設置だ。
洞窟の入口付近にテントを張る。
怪我人が出る可能性を考えての簡易病院だ。
ここの設営と活動の基本にビアンカ様が連れて来た騎士達があたるらしい。
「後は頼んだわね。さぁ、私達は行くわよ。」
「「「おー!!」」」
こうして、ビアンカ様の指揮の元で捜索隊はケンドラゴの洞窟へと入って行く事になったのだ。
「ちょっと待って。」
危うく置いて行かれる事になりそうだった。う~ん。しまらないなぁ~。
次回更新は
2021年5月22日(土曜日)20時
よろしくお願いします。