第四十四話 御姉様。
予定通り更新です。
ズゴン!
という音と共に、男は倒れ込み、腕は地面に埋まる。は言い過ぎかな?
折れただろうけど。骨は。
「イテェェェ!!」
男の大きな声が響き渡る。
「大丈夫かな?」
僕は子供の方へ顔を向けて聞くが、子供は何が起こったのか把握できないでいるという感じだが、頷いた。
「うん。それじゃ、中に入ろう。」
「は、はい。」
子供を伴い中へと入ろうとするが、中から男の声を聴いてか、人が出てきた。
「おい!どうした?!」
「なんで腕が埋まってんだ?!」
色々と男に声を掛けている様子はあるが、男はただ、痛いと喚いている。
それを横目で見ながら、僕は子供を伴ってシレっと中に入る。
護衛隊長ビアンカ様達も何も言わずについて来る。
中に入り、適当な場所を見つけて子供を座らせる。
「僕はジュンだ。君の名は?」
「僕はテ、テオです。」
「テオ君。とりあえず、何があったか教えてくれないか?」
「わ、わかりました。」
まだ、どもっている。緊張が解けていないのかな?仕方ないか。
どうみても、10歳ぐらいだからな。
「僕は、僕達は孤児です。」
どうやら、テオ君の後ろには何人かの孤児が居る様だ。
「僕達は、ケンドラゴの洞窟の一階層で最下級の魔物を狩るって、ドロップ品を売ったり、近くの森で薬草を集めたりして、お金を稼いでいました。」
先日、テオ君の仲間の内、テオ君を除いた5人が二階層へと向かったという事らしい。
「なんで、そんな事になったの?」
「僕が知らない間に、勝手に決めていたそうです。たぶんですが、僕達のカルテロお姉ちゃんが、病で倒れていて、お金が居るからだと思います。」
泣けるねぇ~。僕はこういう話に弱いんだ。
「お願いします!どうか捜索してもらえませんか?もう一日経っているんです。」
「いい「テオ君と言ったからしら?冒険者は自己責任のハズ。人様に頼ろうだなんて冒険者として失格じゃない?」」
僕の返事を遮って、ここまで黙って聞いていた護衛隊長ビアンカ様が喋った。
なんで、僕の言葉を遮るかなぁ?と思ってビアンカ様を見るとギロリと睨まれた。
「そうですけど。」
「彼らが激怒するのも分かるわ。やり方はどうかと思うけれど、冒険者としての反応としては真面だわ。アナタが甘えていると言うだけじゃない。」
「わかっています。わかっていますけど・・・。」
「ううん。分かってないわ。責任の重さを理解していないわ。だってそうでしょ?洞窟は命を落とす危険がある事は初心者でも分かる事。そこに自ら行った者を探しに行ってくれだなんて、虫が良すぎるでしょ?探す方も命を落とすかもしれないのよ?」
「は、はい。でも・・・。」
「でも?何?」
「カルテロお姉ちゃんが!・・・この国のお偉いさんの所為じゃないか!!マトモに復興してくれない国の所為じゃないか!なんで僕達がこんな目に遭わなきゃいけないんだ!!お父さんやお母さんを返してくれ!!」
テオ君は思いの丈をあるがままブチまけた。
たぶん、それが本心だろう。
「それだけ?」
「・・・。」
バチン!という音が辺りに響く。
「甘えるな!皆、等しく苦しんでいるのは同じだ!お前達だけがそんな思いをしていると思うな!!しっかりしなさい!アナタが頑張らないと、イケナイのでしょ?薬なら国が用意しているし、駐屯所に行けば、ある程度の支援が受ける事ができる様になっている。しっかりとそういう情報を手に入れて対応しなさい!」
テオ君はぶたれた左頬を擦る。
「いらっしゃい。」
さっきまでの鬼の形相は嘘のように消えた護衛隊長ビアンカ様はニコリと笑ってテオ君を招く。テオ君がそれにつられて、ビアンカさんに抱きつき、ビアンカさんは受け止める。
「うぅうぅうぅ・・・うわぁ~ん。」
泣き出したテオ君の頭を擦りながら優しい笑顔の護衛隊長ビアンカ様。
「安心しなさい。君の仲間を助けに行ってあげる。それに、この国はこれから元の良い国へと変わるわ。だから、もう少し頑張りなさい。」
「・・・はい・・・。」
泣きながら返事を返すテオ君。
これは、僕の出る幕は無くなったな。
「アナタは運が良いわ。本当に運が良い。」
そんな事を護衛隊長ビアンカ様はおっしゃっておられる。
そこからは、ビアンカ様が動かれた。
キャスにテオ君を連れて騎士の駐屯地へ先ずは向かわせた。
それから、パルルに馬車の用意をさせる為に王城へと戻し、シャルに回復魔法の使い手を探させ、ベスに食料の調達と洞窟へ潜る為の準備に向かわせた。
その指揮ぶりはテキパキとカッコよく。見惚れる。
これが、隊長の動きなのだろうな。ズズズ。
「アンタのお守をする余裕は無くなったわ。って、なに飲んでくつろいでいるのよ?!」
「えっ?僕がする事ないじゃん?」
「アンタはアホか!!アンタはギルド長にでも話をつけてきなさいよ!」
「へぇ~い。」
やっぱり、僕にも仕事があるらしい。
まぁ、そうだよね。これだけの事をしておいて報告したり連絡しとかないと色々と面倒だもんね。かなり注目も浴びちゃったしね。
「出発は二時間後!それまでに、キッチリかたをつけときなさい!」
「はいはい。」
「はい。は、一回!」
「・・・はい。」
なんかなぁ~。僕の行動を奪われてしまった気がするんだけど?
まぁ、これも二番手って事になるのかな?
精々、この称号の効果を発揮してやりますかね?
僕は、ギルドの受付へと向かうのであった。
次回更新は
明日、2021年5月5日(水曜日・祝日)20時
よろしくお願いします。