第三十四話 白い空間と黄金の輝き。
予定通り更新です。
『まだだ!』
『フハハハハ!まだ、わからんか?お前の攻撃など効かぬ!!』
肩で息をする男の目の前には、恐怖が形造られた存在。
恐怖ソノモノと言って良い存在。不敵な笑いを浮かべ続けている。
そんな存在に向かって剣を振るう男。
その動きは素早く、力量が高い事を伺わせる。
攻撃全ては、恐怖ソノモノを追い払うかのような神々しさに包まれている。
しかし、その攻撃の全てを受けても、恐怖ソノモノの存在は一切のダメージを受けている様子が無い。
そんな存在からのただの一振りの殴打でぶっ飛ばされる男。
『ぐはっ!』
『〇❍~〇!!』
『くっくっく。愛しき男が目の前でなぶり殺しに合う。これ以上の苦しみは無かろう?わっはっはっは!!』
『クソ!!』
ぶっ飛ばされた男の視界には磔にされた女性が見えている。
その顔は涙でグシャグシャになり腫れているのだが、絶世の美女である事がわかる。
その女性の言葉はその男の名前だろうか?なんて呼んでいるのかわからないが、その男の事であると理解させられる。そう、強制的に。
『面白い思いをさせてくれた褒美にお前に教えてやろう。我を倒すには黄道十二宮の勇者では絶対に無理なのだ。絶対に。』
恐怖ソノモノはそう言うと、倒れ伏す男に一撃を加えた。
『マ・・・。』
男は何かしらの言葉を言おうとしたが、言葉は続かなかった。
『いや、いや、いや、いやぁ~!』
磔にされた女性の悲痛な叫び声と高らかに笑う恐怖ソノモノの声が重なり合う。
◇◇◇◆◇◇◇
「おい?ジュン君!大丈夫か?」
「えっ?」
僕は気を失っていた様だ。
何だか悲しい夢を見た気がする。
つうか、なんつう夢だよ?でもあの顔は何処かで見た気がするんだが?
「大丈夫です。えっ?」
「あっ?これか?凄いだろ?」
僕の目の前には黄金に彩られた鎧を纏うマコトさんが居た。
「なんですか?それ?」
「これは、黄道十二宮の勇者なら一人ずつ持つことになる伝説の鎧なんだ。」
何という事でしょう。
その輝きは神々しく、神の存在を表わすかのような威厳を持っている。
♋のマークが左胸の上部についている。
「かっけぇ!」
「そうかい?ちょっと派手すぎるんじゃないかと思うんだけど。」
「そんな事ないですよ。カッコいいです。でもそれ、黄金だから重たいのでは?」
「それが、全然重くないんだよ。魔力によって加工されているらしいんだ。どうやら神が創られた装備だそうだよ。武器はこれさ。」
「二本?あれ?」
「ふふふ。これは仕込み武器の一種だそうだけど、二本とも、もう一本刃が出るんだ。」
「すげぇ!」
「扱うのがすごく難しいハズなんだけど、何故か使えるんだよ。」
武器も黄金に輝いている。
柄の所には♋のマークが入っている。
「それに、魔法の発動体としても優秀でね。伝導率が良いのかな?この武器を装備したら魔法の威力が上がるのに、消費は少ないんだよ。」
キャンサーツインソードとキャンサーアーマーという安直な名前とは違ってその性能は相当高い様だ。神が創りし装備品であれば、そりゃあ有能でないと困るよね。
「良いなぁ~。」
「あははは。金ぴかじゃなければ、もっと良いんだけどね~。」
笑う顔もカワイイなぁ~。カワイイ?!イカン!!
自分の感情に戸惑いつつも、マコトさんを見入ってしまう僕。
キャンサーって蟹とか蟹座の事を言うんだけど、名前やイメージとは違って、金色に輝く鎧に剣は品があり、見た目はしなやかさを感じさせるデザインなのだ。
「僕なんて、これだけですよ?」
そう言って見せたのは『クサナギ』。
僕が与えられた唯一のモノ。国樹神トヨタマ様から頂いた剣。
見た目はショートソードだし、特別に光っている訳でもない。刻印のように⛎の紋章があるけれど。
「これは?!」
「クサナギという名前のショートソードです。」
「違うよ。このマークだよ。ジュン君の手のマークと一緒じゃないか?!」
「あぁ、はい。そうですね。ですけど、国樹神トヨタマ様から頂いた時にはついていました。」
「国樹神トヨタマ様?もしかして、イチョウの神様のかい?」
「えぇ。良くご存じですね?」
「本当だったんだ。」
そう言って、マコトさんはニッコリと笑う。可憐な笑顔。
僕の手をとるマコトさんは、物凄く嬉しそうな顔になっていた。
僕は手を握られてしまい、固まる。
その様子で気がついたのか、マコトさんはバっと僕の手を離す。
「ご、ごめん。つい。」
「ああ、大丈夫です。それより何が本当だったんですか?」
恥ずかしそうな顔で謝まるマコトさんも、また可愛いな。こんにゃろう!!
自分の太ももを抓りながら、質問した。
「うん。アテナ神様から信託を貰ったんだ。たぶん黄道十二宮の勇者全員にあったと思う。僕は直ぐにピンと来て、ここに来たんだ。」
「あの、どういう信託だったんですか?」
マコトさんは嬉しそうな顔で僕にこう言った。
「黄道十二宮の勇者の頂点に君臨する存在が生まれた。かの者は、これから成長する。そして黄道十二宮の勇者では討伐出来ない存在に立ち向かい、勝利する。黄道十二宮の勇者は皆、彼の者に従え。さすれば、平和は約束され黄道十二宮の勇者の役目は終わる。」
マコトさんの眼は一層眩しく輝く。
「僕は、この信託を受けた時に、間違いなく君が、ジュン君がその存在だろうと思ったのさ。」
物凄くさわやかな、物凄くカワイイ笑顔をするマコトさんだった。
次回更新は
明日、2021年4月11日(土曜日)20時
よろしくお願いします。