第三十二話 僕は摂政。
予定通り更新。
「あのな~、アンタは自分の立場を分かっているのか?摂政だぞ?この国の二番手なんだぞ?」
「いや、それは分かっているよ?」
「わかってないだろ?護衛を置かなければ、問題が起こったら大変な事になるんだぞ?」
「まぁ、でも貴族様じゃないし・・・。」
「馬鹿垂れ!それが甘いと言うんだ!」
こんなやり取りをビアンカさんとした。
『激怒』である。激おこプンプン丸である。これは死語だ。失敬。
で、仕方なく、国からの派遣を頼む事になったのだが、これがまた問題だった。
一気に権力者になってしまった為に、他の貴族の心証が悪い。
なので、老兵ばかりが用意されてしまったのだ。
「抗議に行ってくる!!」
そう言って、ビアンカさんは飛び出して行ったが、まぁ無理だろう。
「ありゃあ、ビアンカ隊長はかなりキレておいででしたね?」
「ええ。そうですね。あははは。」
「私らみたいな老兵を送り込む貴族連中は、どうやら貴方に恨みがあるようでしたから無理でしょうな?」
「たぶん。無理でしょうね。」
このお爺さんの言う事は間違いない。
いくら、アンジェラ王女殿下の護衛隊長であっても、中々に権力者からの横暴には逆らえないし、抑え込まれるのが関の山だろうな。
「で、私らはどうしたら良いでしょうか?」
「えっ?あぁ、そうですね~。」
老兵は全部で10名いる。二小隊が派遣されてきている人数だ。
「とりあえず、ビアンカさんからの指示が出る迄は、半日交代で見張りについて頂けますか?問題ありますかねぇ?」
「いえいえ。かしこまりました。では小隊毎に半日ずつで対応させて頂きましょう。」
「はい。とりあえず、正門に三名。裏の勝手口に二名でお願い出来ますか?」
「かしこまりました。見回りはどう致しましょう?」
「ああ、それはビアンカさんが戻ってから指示を仰いでください。戻るまでの対応という事でお願いします。」
「かしこまりました。」
その後、メアリーさんに護衛の皆さんの部屋を案内してもらった。
見習いメイドの数名もメアリーと共に行動を共にしている姿を見かけた。
一生懸命やっている姿はやっぱ眩しいね。うん。
「僕も頑張らないと!」
◇◇◇◆◇◇◇
ビアンカさんの口酸っぱい説教を受けるのがイヤで、馬車での移動だ。
毎回これかよ?!って思うけど、まぁ仕方ない。
僕は、執務室のソファに深く腰掛け思案にふける。
家と孤児の件については、およその道筋はついた。
お金もグロリアさんにある程度は渡してあるから、服とかも購入してくれるだろう。
執事を用意してくれって言われたから、アンジェラ王女に依頼しているから、問題ないだろうと思う。
さて、僕は摂政という立場の仕事をしなければならない。
どうの様にしていけば良いのだろうか?
実は、特に案があった訳では無い。なってから考える。というスタンスを今回はとった。
すいません。カッコつけました。行き当たりばったりです。はい。
先ずは財政の立て直しや、借金の返済等をどうするのか?という事になる。
この間、財務大臣に見せてもらった資料によると、国家予算の約五倍の借金があった。
しかも、色々な所に借りている感じだ。そうなると、借金の利率もマチマチで、一貫性が無い。ある意味、損をする事が多い。
借金の返済を一括に纏める事が出来ないだろうか?
とは言え、国家予算の五倍の金額の借金を纏めてくれる所なんてないかな?
「ジュン様!ジュン様!」
大声を上げながら、走ってくる音が聞こえる。
城の中でそんな事をしていたら、問題じゃないか?とか思ったりしたが、本人が到着した。
ドンドン!と荒いノックをしてから入ってきた少年リク。僕の小間使いだ。
「どうしたんだい?そんなに慌てて?」
「ジュン様は黄道十二宮の勇者様と知り合いなんですか?しかも、シャルマン商会とかも知っているんですか?」
「あぁ、そうだよ?それが要件で、そんなに慌てているのかい?」
「えっ?あっ!ジュン様にお客様が来てらっしゃいます!」
どうやら、慌て過ぎて本題を忘れていた様だ。
マコトさんが来てくれたのかな?じゃなきゃ、聞かれないよな?
「わかった。ここに通してくれないかい?」
「いや、あの、何て言いますか、ジュン様は摂政様であらせられますし、お客様も黄道十二宮の勇者様なので、謁見という形になってしまうんですけど・・・。」
以外だ。結構しっかり教育を受けている様だ。
「かまわないよ。同じロックフェラ連合国内の勇者だし、それに私の友達だからね。ここにお連れしてくれ。」
「いや、でも・・・。」
「大丈夫。僕が責任を持つから。」
「わ、わかりました。」
リク君は来た時と同じ様に慌てた感じで、出て行った。
それから、少ししてノックされた。
「ジュン様。お連れしました。」
「ありがとう。入ってくれ。」
返事を返すと、ドアが開けられた。
ドアの向こうには、懐かしいと感じてしまう人の顔と、あのデパートの様な所で会った人が立っていた。
「やぁ、ジュン君。久しぶり!」
「失礼します。」
そう、黄道十二宮の勇者であるマコトさんと、シャルマン商会の謎の女性リスターさんが立っていたのだった。
次回更新は
明日、2021年4月4日(日曜日)20時
よろしくお願いします。