第三十話 名裁き、ここに有り。
予定通り更新。
こってりと絞られた。
ちょっと、間違えて抱きしめただけだというのに。
可笑しいぜ。ふぅ。
僕は自分を慰めて、やる気スイッチを自分に押す。
正直、僕が悪い事は分かっている。そりゃあ、女性を抱きしめたらダメだよ。
日本だったら、職を失うレベルだもんね。あははは。
ただ、良い事もあった。
アンジェラ王女とビアンカさんは、僕の要望を一つ叶えてくれる事になった。
そう、僕が街に出る事だ。もちろん、当面という限定だけども。
問題が起こった時点で、許可は取り消される。
後、屋敷を一つ手に入れる事が出来た。
今は無き、旧貴族の屋敷。跡継ぎも無く潰れた一族。
そう聞くと怖いけど、屋敷は手に入れる事が出来た訳だ。
後、給金も出るとの事で、屋敷の運営も気にしなくて良くなった。
ただ、一年間の摂政という立場の話でしかないので、その間にどうにかしなければ、職が無くなるだけではなく、屋敷も失ってしまうのだけどね。まぁ、何とかなるさ。
「という訳で、皆を屋敷で雇いたいのだけども、どうだろうか?給金は少しだけになるだろうけど、ご飯はちゃんと食べる事が出来る様にするし、寝る所も用意する。どうだい?」
僕は摂政という立場を伏せつつ、孤児の皆へ依頼した。
もちろん、どうするかは、孤児の皆に決めてもらう事だ。僕が強制する事じゃない。
「本当に、良いんですか?」
「もちろんさ。」
「本当にお腹いっぱいに食べる事が出来るの?」
「もちろんさ。」
「訓練してもらえるって本当なのか?」
「もちろんさ。」
「あの人は誰?」
「もちろんさ。えっ?あぁ、あの人は僕の護衛だよ。」
同じ返事ばかりをしていると、関係ない質問が飛んできた。
そう、僕には護衛という名のお目付け役【監視役】が出来てしまった。
その、担当者というか、責任者はあのビアンカさんだ。
『お前の様な危険な男には、監視するモノが必要だ!』とかなんとか言っていた。
ビアンカさんを筆頭とした一隊5名が選抜された。う~ん。問題児みたいだね。
「そうなんだぁ~。カッコいいなぁ~。お姉さ~ん。」
そう言ってリリーちゃんは、僕の前から走ってビアンカさんの方へと向かって行った。
どうやら、騎士の嗜みで剣を装備していたのが気になった様だ。
それにしても、リリーちゃんは物怖じしないな。彼女の長所の一つだな。
「本当に良いのでしょうか?」
「本当に良いよ。どうだい?」
「私の一存では・・・。」
「良いじゃん。行こうよ。」
「リリーちゃん?」
「だってさ、凄くこの人誠実な感じがするもん。」
この人とはビアンカさんの事の様だ。手を握っているもんね。あははは。
「それに、ここに居てもさ、食べる事は出来ないし、寝食が保証されるんだから良いじゃんん。ねっ、ビーチャもそう思うでしょ?」
「あっ?あぁ。俺は賛成だ。」
『僕も』とか『私も』とか、周りの子供達の賛成の声に包まれる。
が、ここで、僕はしっかりと確認しないといけない。
「ありがとう。でも、本当に働けるかい?働く意思はあるのかい?」
「「「もちろんだ!」」」
「厳しい事もあるぞ?キツイと思う事もあるかもしれない。それでもかい?」
「「「もちろんだ!」」」
「よし!約束だぞ!」
「「「おぉー!」」」
つい、ノリが『なんとか横断クイズ』の様になってしまったが、それで決意を固めさせた。
そして、その様子を見せて彼女の、レイカさんの顔を覗き込む。
「で、どうかな?」
「わかりました。お世話になります。」
「ありがとう。よろしく。」
僕はレイカさんと握手を交わした。
「やった~!」
「よし!頑張るぞ~!」
「いっぱい食べれるぞ~!」
等など、子供たちは嬉しそうな顔になる。
やっぱさ、子供はこうじゃないとね~。
「本当に、全員連れて行くのか?」
僕に近づき、小声で聞いてくるビアンカさん。
この空気に気を遣ってくれたのだろう。
「もちろんだよ。多少、食費とか投資が大変になるだろうけどね。ダメかな?」
「お前が、そう言うのなら私には反論する余地はないが。本当に大変だぞ?」
「気を遣ってくれて、ありがとう。」
「ふん。それにしても本当に、変わっている奴だ。」
「あははは。よく言われるよ。」
少し照れくさそうな顔でソッポを向くビアンカさんに笑って答える僕。
昔から、変わり者のレッテルは張られていたのは、まぁ事実だ。
自覚もあるから、反論できないね。
「メアリーもグロリアも大変になるな。」
「えっ?それはビアンカさんも一緒なんじゃ?」
「うん?うん?!そうだった!!」
愕然とした顔になるビアンカさん。
どうやら、自分が僕の監視員になったのを忘れていたっぽい。
事実を突きつけられて、愕然とするぐらいだからね。あははは。
「どうすれば・・・。」
「ビアンカお姉さん。だいじょうぶ?」
さっそく、リリーちゃんが見つけて、ビアンカさんに声を掛けている。
「もう!オジ・・・ジュンさんダメだよ?!ビアンカお姉ちゃんを虐めたら!めっ!!」
あれ?僕が悪者みたいになっている?
「ご、ごめんね。」
「うん。お利口さんね。ちゃんとゴメンナサイが出来たね~。」
リリーちゃんはそう答えてウンウンと頷いている。
その様子を見ていたみんな。
リリーちゃんの裁きに、みんなは笑う。
愕然としていたビアンカさんも、レイカさんも、孤児のみんなも。
そして、僕も大声を上げて笑っていた。
次回更新は
明日、2021年3月28日(日曜日)20時。
よろしくお願いします。