第三話 ドッキリ・・・じゃない?
さて、そろそろドッキリの看板が出て来ても良い頃だろう。
そう思って、僕は辺りをキョロキョロと見回した。
「どうした?ジュン君。」
そんな様子をみた隣の爽やかイケメンが僕に声をかけてくる。
今は謁見の間では無く、控室に通されている。なので、もう一人の召喚者であるマコトさんと一緒に居る。
「いや、そろそろ終わるんじゃないかな?って思って。」
「なにが?」
不思議そうな顔で僕の方を見るマコトさん。気がついていないのだろうか?
ここはやはり、絵的にも知らせない方がいいんじゃないだろうか?そう思って黙った。
そのタイミングで、扉をノックする音がした。
「勇者様。ファフニールです。この世界の説明をしにまいりました。」
「どうぞ。」
マコトさんが返事を返すと、ファフニール王女が部屋に入って来た。
その後ろには、先ほど迄と違い、豪華な鎧を着た男性と巫女さん姿の女性も入って来た。
最後にメイドさんの様な格好をした女性が飲み物ワゴンに乗せて持って入って来た。
僕の横のソファには勿論だけど、マコトさんが座っており、テーブルを挟んで向こう側に王女様達が座っている。
メイドさんがそれぞれの前に飲み物入りのコップを置いて行く。
「先ずは、お二人には申し訳ないとおもっております。急に異世界であるこの世界にお呼びしてしまった事を謝罪致します。」
あれ?そこはドッキリでした!とかじゃないの?それともまだ続くのかな?
「いえ。お困りなのでしょうから、私は構いません。」
「僕も大丈夫です。」
咄嗟に、マコトさんの後に続いて問題ないと告げた。
安心されたのかファフニール王女は、にこやかな笑顔になる。
「先ずは、この世界の事を説明しましょう。」
この世界には認知されている大陸が5つあるらしい。
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イグナシオ大陸
・一番大きい大陸であり、中央に位置する大陸。
ロードスト大陸
・二番目に大きいとされる大陸、イグナシオ大陸の西南に位置する大陸。
アーダム大陸
・イグナシオ大陸の南、ロードスト大陸の東に位置する大陸。
フレシア大陸
・イグナシオ大陸の東に位置する大陸。
ガリバー大陸
・イグナシオ大陸の北に位置する大陸。
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その中のロードスト大陸の中央南部に位置するのが、ロックフェラ連合国であり、この大陸内で二番目に大きい国となっているそうだ。
ロックフェラ連合国はトゥウェルヴと呼ばれる12の都市国家を中心に、全187の都市国家の連合国であり現在いる都市国家ガリレオはトゥウェルヴの一員で由緒ある都市国家だそうだ。
そして、ロックフェラ連合国の南西にはカーリアン帝国という大国があり、北東にはヘイル王国で小さい王国があるそうだ。その向こうには三国同盟を確立しているアスワン王国がありその北にジェスター王国、その東の位置にフリーア王国がある。またロックフェラ連合国の北は大小いくつかの国があるそうだ。その中には宗教国家もあるそうだ。しかし、ロードスト大陸の覇権は、先ほどの西の大国であるカーリアン帝国が一番の大国であり、他には三国同盟をしているフリーア王国、ジェスター王国、アスワン王国の三国同盟とこのロックフェラ連合国が争う形であるそうだ。カーリアン帝国の先にもアスワン王国の先にも国が興っており、まだまだ覇権が定まっていないとの話だ。
で、聖神の使徒はアスワン王国の貴族らしい。
また、邪神の使徒は滅んだ国の貴族だったようだ。今は鳴りを潜めている様だが、いつ活動するのかと戦々恐々というのだ。
どこまで、深い設定なのだろうか?地図まで用意して・・・ドッキリだよね?
「世界の情勢はある程度わかりましたが、私達が勇者召喚されたという事は?」
「はい。この内のカーリアン帝国の一部の都市がロックフェラ連合国に加入したいとの打診があった為にアテナ神に祈願した所、勇者召喚の儀式を許可されたので、貴方達勇者をお呼びする事になった次第です。」
「なるほど。つまり、カーリアン帝国から守る事が、一番の任務と言う事ですね?」
「そうなります。」
過去にも勇者召喚の儀式は行われた事があるようだ。
一番近年では、アーダム大陸のクリーマン皇国が世界の覇権をかけてアーダム大陸を一時統一し、他の大陸への侵攻を行った時だと教わった。・・・ドッキリ?
「先代勇者たちは各々が宿命づけられた黄道十二星座により与えられる黄道十二宮にて力を得て活躍なさいました。先ずは自身の宿命黄道を調べてもらいます。」
「どうやって、調べれば良いのでしょうか?」
「ステータスオープンと唱えればウィンドウが開くはずです。」
「ステータスオープン。」
隣でマコトさんがそう唱えた。
うぬぬ。もしかして、マコトさんもドッキリの仕掛け人側なのか?
「称号欄に出ているハズなんですが。」
「ありました。えっと、【巨蟹宮の騎士】とあります。」
「そうですか、では蟹座がマコト様の宿命星座ですね。では次にジュン様やってみてください。」
えっとやるの?本当に?
あぁ、もしかして出なくて僕が焦る?そんな感じなのかな?
「どうしました?」
不思議そうな顔で僕をみるファフニール王女に、マコトさんのやってみなよという視線を受けた僕は仕方がない、ドッキリさせられようと思った。
「いえ。ステータスオープン。」
すると僕の前にゲームの様なステータス欄が表示された。
「うそ?!これはドッキリなんじゃないの?」
「ドッキリ?」
目の前でコテと頭を傾げたファフニール王女。
僕の横からも驚きの顔をしたマコトさん。
僕は本当にビックリした。
まさか、本当に出てくるなんて・・・ドッキリじゃないとしたら、本当に異世界に来てしまったのか?
「大丈夫か?ジュン君。」
「あ、はい。でも本当にステータスが出てるんですけど?」
「ああ、私も少し驚いたが、ここは異世界だ。それが普通なんじゃないのかな?あれ?君は神様から少しは説明を受けたんじゃないのかい?」
「神様?説明?」
僕は何の事かさっぱり分からなかった。
どういう事?これ・・・ドッキリじゃないの?もしかして現実?!
僕は、この時になって初めて現実である事が分かった。
だって仕方がないでしょ?あの神社のいつもの場所に座っていただけなんだから。
・・・やっぱ鈍感なのかな?