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第二十九話 城に帰ってから。

予定通り更新。


城に戻ると、例の如く、こっぴどく叱られた。


「アンタは何やってんだ!!」


アンジェラ王女の護衛であるビアンカさんの大激怒をもろに受けてしまった。

そもそも、摂政という職位を貰う事になった事も気に入らなかったのだろうし、その前にアンジェラ王女と二人だけでの失踪が相次いであった事もあるのだろう。

長~い長~い導火線の先にあった大きな花火に火がついてしまったのだろう。


「もう、許せぬ!」


「落ち着いて、ビアンカ?!ねっ?!」


「アンジェラ王女。私は冷静です。こういう輩は一度、締め上げた方が良いのです!」


なんて会話を繰り広げている。

怒りマークの眼は、僕を見据えて離さない。

あれは、危険な目だな~とか思いつつも、あの孤児たちの事を考えていた。


あの子たちは、例のこの都市国家オヒューカスを襲った災害により生まれた孤児たちだった。

災害は大変厳しいモノだったらしく、多くの命を奪った様だ。

レイカさんの両親も例に漏れず、瓦礫の下敷きになってしまいレイカさんの目の前で息絶えたそうだ。その時は弟と妹の二人も同時に亡くしてしまったという。


「辛かっただろうな。」


「あぁ、つらいとも!!お前が適当な事をしているからな?!胃に穴が空くわ!!」


僕の呟きに反応するビアンカさん。


とてもじゃないが、僕には耐えられないな。

両親も兄弟も失うなど。

でも、彼女は違った。同じ様に失った者達と一緒に生きていく事を考えた。

仲間を募った訳じゃないだろうけど、同じ境遇の子達を放っておくことは出来なかったのだろう。とても凄い事だ。僕に同じ事が出来るだろうか?

難しいだろうな。僕に彼等に何かしてやれる事はないだろうか?

偽善かもしれないけど、知った以上はどうにかしてあげたい。


「さて、ここからが問題だ。」


「ここからも、これからも無いわ!もう既に問題だ!!」


僕の呟きに反応がある様だが、今はそれどころじゃない。


彼女達は、あげた果物が無くなれば、また罪を重ねるしかなくなるだろう。

罪を犯さない様にする為に、飢餓感を我慢できる年頃じゃない。

であるならば、どうにかお金を、生活費を稼げるようにしてやらなければいけない。

少なくとも、食える状況にはしてやりたいと思うのは僕だけじゃないはずだ。


「どうすれば良いんだ?」


「先ずは謝れ!それから腹を斬れ!!」


「ちょっと、ビアンカ、落ち着いて!」


僕は頭を抱えしゃがみ込んだ。


「あああああ~!!」


僕は声を上げた。

どう解決したら良いのか。どうしたらいいのか。それが思いつかない。


「どうしたのです?ジュン様?」


アンジェラ王女の声が僕の耳に届く。


「いや、どうやって解決したら良いのか?と思いまして。」


「えっ?」


「僕なんか、兵隊レベルしかないただの男ですし、お金も無限にある訳じゃないし、チートなスキルが有る訳じゃない。どうしたものか?と。」


「何を今更!お主はこの国の摂政となったのだ。出来ない事など少ないであろうが?!」


摂政?そうか、僕は摂政になっていたんだ。


「そうでした。そうでしたよ?!ビアンカさん!!」


僕はビアンカさんの両肩を両手で掴んだ。


「ありがとうございます!!」


「えっ?!いや、まぁ、ああ。」


そうだよ。この国の摂政という立場だった。

であるならば、孤児院を設立するとか、仕事を作るとかすればいいんだよ。

いっその事、僕の屋敷を構えてそこに住まわせれば良い。

何という事は無いじゃないか。

それに、僕の仕事の手伝いをする事で、少なくとも根本的な解決をするまでの時間が稼げるじゃないか!

僕は解決するための光を見つけ嬉しくなった。

僕は目の前にいる人を抱きしめた。


「そうですよね。僕はこの国の摂政ですよ。この国の!やろうと思えば何かしら出来るんですよ!!」


「おあわわわわ?!」


「ちょっと、ジュン様?!」


変な反応を示すビアンカさん。そして慌てるアンジェラ王女。

その様子を遠巻きにしてみているメイドさん達。


「うん?!」


アンジェラ王女の眼がスワっている。

メイドさん達の視線も、痛々しい。


「あれ?僕は・・・?」


僕の腕の中には目を回しそうな感じのビアンカさんが居る。


「あれ?ビアンカさん。何で僕の腕の中に?」


「・・・。」


返事がない屍の様だ。


「それは、ジュン様が抱きしめたからでしょう?」


「えっ?本当ですか?僕がそんな大胆な行動をするとは思えないんですが?」


「現に、今、そうしているではありませんか?」


「あっ?!」


僕が慌てて手を離すと、崩れ落ちそうになるビアンカさん。

僕は再度、抱えた。

よく見ると、真っ赤になった顔で、目が回っている。

力が抜けている様子だ。


「と、とにかく、ビアンカをこちらのソファへ。」


アンジェラ王女の言葉に素直に従い、僕は改めてビアンカさんを抱きかかえた。

鎧があって邪魔なのだが、仕方がないね。えっ?僕が悪いからやって当然?

でも、本当に重いんですよ。鎧って。訓練していて良かった。


ビアンカさんを指定されたソファに横にすると、メイドさん達が直ぐに集まって来て介抱を始めた。


「さて、ジュン様。色々とお話し頂かなければいけないようですね?」


いつも、可愛らしいアンジェラさんの笑顔は、ピクピクした怖い笑顔になっていた。

これは、本当にヤバいね・・・う~ん。どこで間違えた?


次回更新は

2021年3月27日(土曜日)20時

よろしくお願いします。

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