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第二十七話 イチョウ並木の近くで。

予定通り更新です。


城を出て直ぐにイチョウ並木に入って行く。

メインストリートのこのイチョウ並木の周囲にはお店が並んでいる。


都市国家は壁の中の国だ。

壁の中に林があったりするし、畑もあったりする。


僕はこのメインストリートを歩く。

そう、城の近く住民の感情などの情報を手に入れる為だ。

次からは早々、城を抜け出す事がしにくい状況になるのは明白だ。


近くに屋台もある。

串焼きを売っているお店だ。


「オジサン。一本いくら?」


「おう。銅貨1枚だ。」


「じゃあ、三本もらうよ。」


「まいど。」


焼きたての串焼きは鳥の肉の様だ。

塩のみの味付けだけど。かなり美味い。

胡椒(コショウ)があれば、もっと感じが違うかもね。

後、タレとかあれば感じが違うかもしれないな。

味噌(ミソ)醤油(ショウユ)は普及していたりしないのかな?

シャルマン商会であれば用意していそうだな。あのデパートみたいな所で食べた食事は凄かったし、色々な店が並んでいたから可能性は大きいだろう。


そんな事を考えながら、道を歩いていると頭に物が落ちてきた。


「イテッ!あぁ、銀杏か。」


銀杏って美味しいよね。

銀杏の串焼きとかも美味い。それこそ塩だけでいける。

でも、臭いんだよな~。まぁ、それが季節を感じる瞬間でもあるけどね。


それにしても、銀杏の串焼きって売ってないな~。やっぱ高いのかな?

拾えば良いだけな気がするけどね。店に出すとなれば数が必要になるから難しいのかな?


僕は周辺の屋台とかを見渡すがやはり、串焼きを扱っているお店は無いようだ。


「泥棒だ!誰か掴まえてくれ!!」


その声がする方を向くと子供が数人走っているのが見えた。その先に声の主らしきオジサンが居た。


その子供たちの一人が僕の方へ向かって来ている。

さて、どうしようか?子供たちは見るからにボロボロの服を着ている事から、孤児だろう。

だが、真っ当に商売している人からしたら、泥棒に変わりはない。


仕方ない。捕まえよう。

僕はその子供が目の前に着た瞬間に避けるふりをして横から掴まえた。


「イテッ!!何すんだ?!離せ!!」


元気そうな子供だな。


「少し落ち着いたらどうだい?」


「うっせぇ!!離せ?!」


それにしてもガリガリだな。随分と食べていないのだろうな。


「すまねぇ。捕まえてくれて感謝する。」


オジサンが到着したみたいだ。


「いいですよ。ところで何を取られたんです?」


「店に並べていた果物だ。まったく、こいつらは!?」


「とりあえず、お店に戻りましょう。」


「おお、そうだな。」


そんなやり取りをオジサンとして店に向かう。

その間も元気な子供は抵抗しようとしていたが、声を出すだけで精一杯という感じだ。


「ここが、俺の店だ。」


オジサンがそう言って一つの屋台の様な店に辿り着いた。

たしかに果物を売っている場所だ。


「被害は?」


「ちょっと待ってくれ計算する。」


少しの間、オジサンが計算していた。


「そうだな。銀貨1枚ってとこか?」


「じゃあ、それは僕が払いましょう。」


「「へっ?」」


オジサンと子供が同時に驚きの声を出す。


「僕が払いますよ。」


「いやいや、それはありがたいが、本当に良いのかい?」


「ええ。でも今回はこの子たちを許して貰えませんか?」


「いや、しかし・・・。」


「この子たちも生きる為に盗んだのでしょう。盗みは罪ですが、今回だけは見逃してくれませんか?もう二度とさせないようにしますから。」


「まぁ、アンタがそう言うなら、払って貰えれば、今回は見逃そう。」


「ありがとうございます。後、幾つかこの子たちが盗んだ果物と同じ物を貰えますか?」


「ああ、もちろん良いが。」


僕は金貨一枚出した。

その金貨を見て慌ててオジサンは驚く。


「アンタはお偉いさんか?」


「まぁ、そんな所ですね。それで買えるだけの果物を貰えますか?」


「いやいや。そんなに無いよ。」


「詫び料も入っていますから気にしないでください。」


「そうかい?それなら。」


そう言ってオジサンは準備しだす。


「ここに、君の仲間を連れておいで、この果物は全部君達にあげるから。」


「えっ?良いのか?」


「良いよ。ほら、あそこで君を心配そうに見ている子達が君の仲間だろう?」


「う、うん。」


「早く連れておいで。」


「わかった。」


そう言って男の子は僕から離れて、見守る子供達の所へ向かった。

ただ、本当に戻って来るのか分からない。まぁ、子供の純粋さに賭けたという訳だ。


「これ全部を持つにしても、台車が必要なんだが、持っているか?」


「持ってないな~。借りれるかい?」


「若いの、これを持っていけ。」


隣の屋台のオジサン。串焼きのオジサンだ。


「良いんですか?」


「あぁ、話は聞かせてもらった。丁度買い替えようと思っていた所なんだ。好きに使ってくれや。」


「ありがとうございます。」


僕は台車を貰ってその台車に買った果物を載せてもらう。

果物屋のオジサンはホクホク顔だ。


さて、賭けの結果はどうなるかな?


「あの。」


「よく、戻って来たね。」


「本当にくれるのか?」


「ああ、あげよう。但し二つの言葉が欲しい。」


「言葉?」


「そうだよ。『ありがとう』という言葉と『ごめんなさい』という言葉だよ。」


代表した男の子は唇を噛みしめる。


「ねぇ。本当にその言葉を言ったらくれるの?」


他の女の子がそう聞いて来た。


「そうだよ。この果物屋のオジサンに『盗んでごめんなさい。』『盗んだのを許してくれてありがとう。』とちゃんと言えたら、ご褒美にあげよう。」


「やった?!ビーチャ早く言おう。」


「そうだぜ。ビーチャ。」


「ぐっ?!」


ビーチャと呼ばれた男の子は下を向く。

そして、決心したのか顔を上げる。


「わかった。」


その後直ぐに、子供たちによる大声の謝罪と感謝の声が合唱のように響き渡ったのだった。


次回更新は

2021年3月20日土曜日20時です。

よろしくお願いします。

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