第二十四話 立ち向かうのか?立ち向かわないのか?
予定通り更新です。
期待と侮蔑の混ざりあう沢山の視線を受けている僕。
「王女。流石に一ヶ月では無理ですよ。」
「ぐっ!しかし!!」
「ほぉ。ジュン様はアンジェラ王女の期待に応えられないと?」
ニヤつきが深くなる侯爵。
どうやら、僕を貶めて、責任問題で王女を引きずり落とし権力も持ちたい輩かな?
「そうですね。候爵様の言う通、僕には一ヶ月では出来ません。」
「くっくっく。そうでしょう。落ちこぼれ勇者には荷が重いでしょうね。」
「ジュン様?!」
ほら、口に出しちゃったよ。
僕はアンジェラ王女に落ち着く様にと手で合図する。
「ですが、一年あれば、国の借金は無くなり国庫は潤い、安定した国に出来ますね。」
「そうでしょう?!無理でしょ・・・今なんと?!借金が一年でなくなる?馬鹿な?!どれだけの借金を抱えているのか知っているのか?!それにこの国の現状を分かっているのか?!」
「さぁ。」
「さぁ?!そんな無責任な答えがあるか?!そこまで言い張るのなら、やってみるが良い!!出来なかったときは分かっておろう!!」
「ええ。但し、それには一つ条件があります。」
「条件?」
「はい。私がアンジェラ王女の後見人兼代理として政務の権限を頂く事です。言うなれば摂政ですかね?」
「ば、馬鹿な!?そんな事が許される訳がない!!」
「ご安心ください。一年間という期限付きです。保証が必要なら、黄道十二宮の勇者の一人に保証人になって貰いましょう。」
「許可します!」
「「アンジェラ王女?!」」
侯爵とグランツ伯爵は顔面蒼白になって驚いている。
「ならん!認められん!!」
「そうですぞ。アンジェラ王女。」
慌てて反対を示す侯爵とグランツ伯爵。
「もう、決めました。略式ですが、私アンジェラ・フォン・オヒューカスの名において命じます。ジュン様を摂政に任命致します。」
「「なっ?!」」
「これで、よろしいですか?ジュン様?」
「はい。その任、承りました。一年間という期限付きですが、宜しくお願いします。」
「なっ!?認められん!!」
「そうですぞ!こんな横暴を誰が認めるものですか?!」
喚き散らす二人に取り巻きが頷き抗議の声が大きくなる。
バン!という音を立てた人が居た。一斉に黙り込み、その音を立てた人に注意が向く。
「では、誰か、一年で借金を無くし、国庫を潤せるという自信が有る者がおるか?もちろん、責任を負えるものでなくてはならんぞ?」
白髪のその人からは、高貴な雰囲気と威厳が放たれている様な気がした。
「こ、これは先王様。」
「その呼び方はもう止めよと申したハズ。儂はもう引退した身じゃ。」
ギロリという音が出ていそうな感じで、グランツ伯爵を睨む白髪の老人。
「御爺様。」
アンジェラ王女のお爺さん。で、先王様か。
「おぉ~アンジェラ。話は聞いたぞ。」
先ほどとはうって変わって目じりが下がる先王。
侯爵とグランツ伯爵はグッと手を握っている。
「御爺様。申し訳ありません。」
「よいよい。アンジェラ。お前が決めた事だ。儂は全て認めよう。ブラムス侯爵も良いな?!」
「はっ!」
下を向き震えながらも直ぐに返事を返す所を見ると、どうも逆らえないらしいな。
白髪の先王は僕を見る。
「ジュン殿と申したな。」
「はい。」
「儂はアンディス・フォン・オヒューカスじゃ。孫達を、この国を頼みますぞ。」
正直、この人がやれば良いんじゃないの?
そう思うのは僕だけでは無いのだろう。
「アンディス様が復権して頂ければ・・・。」
そんな声が、貴族から聞こえてくる。
しかし、アンディス・フォン・オヒューカス様は、それに答える事は無かった。
復権できない何かしらの理由があるのだろう。
そう思う事にした。
「わかりました。お任せください。」
僕はアンディス・フォン・オヒューカス様と握手を交わす。
その際に、僕の耳元でこっそりとお話になった。
『儂はもう寿命を迎えておる。気力のみで生き長らえておるに過ぎんのじゃ。力になれるのはここまでじゃ。カワイイ孫達と息子達を頼みますの。』
そうおっしゃった。
目に涙を浮かべて居たのは間違いない。
すっと離れるアンディス・フォン・オヒューカス様。
「話はここ迄じゃ。失礼する。」
そう言って、部屋を出て行かれた。
空気感が悪い状態の会場も、アンディス・フォン・オヒューカス様が離れられてからは気を利かせた宮廷演奏家達が音楽にて気分を変えさせようとしてくれた。
「私も失礼する。グランツ伯爵。帰るぞ。」
そう言って、ブラムス侯爵は取り巻きを連れて去って行った。
思惑が外れて、苛立つかのように去って行った。
その事で、ようやく落ち着いた空気感により、宴は進んだ。
その後は何事もなく終了した。まぁ、一部の貴族が僕の方へすり寄って来ていたりしたが、ほとんどの貴族は遠回しに見ているだけだった。
翌日、早々に謁見の間にて、僕は摂政という役を頂く事になった。
その場には全貴族が出席していた。残念ながら、アンディス・フォン・オヒューカス様は来られなかった。引退した身なので出席しないという事らしい。
反対の立場であったブラムス侯爵とグランツ伯爵も出席していたが、不満そうな顔を隠すでもなく、表していた。
「ジュン・カンザキ様を私の後見人として、また、代行として【摂政】の任を与えます。期限は一年間とします。」
「はは。承りました。」
こうして、事実上の権限を貰った。
国のNo2になった訳だ。二番手であった。
次回更新は、
明日2021.3.7日曜日20:00です。
よろしくお願いします。