第二十一話 剣の名前。
予定通り更新です。
僕とアンジェラ王女は揃って、国樹神様の元へと歩く。
『よくぞ、ここまで来てくれました。』
「あれ?今、声が聞えませんでした?」
「はい。聞こえました。」
唐突に頭に響く声。
僕だけじゃなく、アンジェラ王女にも聞こえた様だ。
『今、そちらに向かいましょう。』
「「えっ?」」
僕とアンジェラ王女は、その言葉に驚いた反応をした。
少しして、僕とアンジェラ王女の前にスーッという感じで、白い女性が現れた。
「お待ちしていましたよ。ジュン。」
「えっと?」
スーッと現れたのに、幽霊だ!ギャー!!とはならなかった。
僕は少なくとも知っている人?だと思ったからだ。
ただ、誰かは分からなかった。
「覚えていませんか?アンジェラはどうです?」
「すいません。」
「そうですか。それほどまでに、あの者は力があるという訳ですか・・・。」
とても残念そうな顔になった。白い女性。
しかし、誰なのか?少なくとも国樹神様にゆかりがある方なのだろうけど。
「わかりました。では、改めて私はこの世界で国樹神と呼ばれる存在です。神と名前を付けて頂いていますが、精霊神とでも申しますか、精霊から神の道に進んだ存在です。」
神様?亜神みたいな感じかな?
良く分からない世界の事はまぁ良いか。
「私はこの国を長く見守ってきました。しかし今回の様に危機になったのは建国当時以降にはありませんでした。」
うん?もしかしてこの都市国家だけが災害にあった事だろうか?
それとも、アンジェラ王女の両親が昏睡状態である事を言っているのかな?
「ふふふ。相変わらず、ジュンは察しが良いですね。その両方の事です。そのどちらもこの国にとっては重大なダメージになっています。そこで、ジュンにこちらへ来て頂いたのです。」
「では、選ばれし者で間違いないんですね?」
「はい。アンジェラの言う通り、ジュンは選ばれし者です。」
「なぜ、僕が選ばれたのですか?」
寂しそうな顔になる国樹神様。
だけど、僕には思い当たる節が無い。薄情な感じではないよ?
「そこまで、奪われてしまいましたか・・・。ジュン、貴方はどうやら色々と失ってしまっている様です。いや、この場合は奪われたと言う方が正しいですね。」
奪われた?この僕が、いつの間に?
そもそも、誰に奪われたのだろうか?その記憶すら無い。
沈黙がこの場を支配する。
しかし、奪われたからと言って、僕の存在は無くなっていない。
つまり命は奪われなかったという事だ。なら、悩んだりくよくよしても始まらない。
時間は有限だ。僕にはそんな勿体ない時間は無い。あれ?
「ふふふ。ジュンは変わりませんね。残念ながら、私との契りの記憶は失われてしまっている様ですが・・・。わかりました。貴方がそう思ってくれるのであれば大丈夫でしょう。」
「それはどういう事ですか?」
つい、聞いてしまいたくなるよね?
「私の名は、トヨタマ。こちらでは別名で呼ばれておりますが、ジュンと逢った時はそう呼ばれていました。ジュン。貴方との契約を世界に表しましょう。」
トヨタマと名乗った国樹神様の手が輝きだす。
光の強さが強くなって、光が収まると、トヨタマ様の両手には一振りの剣が乗っていた。
「ジュン。さぁ、これを。」
僕に向けてそのまま剣を差し出すような感じで、トヨタマ様は僕に目を向ける。
僕はそれを察して、両手で剣を受け取った。
「その剣は・・・、いえ、ジュンの成長と共に強くなります。名前をつけてあげてください。ジュンの呼びかけを待っています。」
「剣に名前ですか?う~ん。僕はそういうのは苦手なんですけど・・・。」
そう思った瞬間に電撃のようなモノが走った。
そして頭の中に映像が流れ込んでくる。
「うっ!」
「ジュン様。大丈夫ですか?」
頭の中の映像は次々と現れては消えていく。
断片的な映像とでも言うのか、次々に流れ込んでくる為に、頭が追い付いて行かない。
そんな感じだろうか?僕の頭はオーバーヒートしてしまうのを防ぐかのように、僕は意識を失った。
◇◇◇◆◇◇◇
「うぅ~ん。」
僕は寝返りをうつべく横に体を反らそうとした。
ぷにっ?あれ?何で?この感触?そう言えば!
僕は目を開けた。
目の前には心配そうに僕の顔を除いているアンジェラ王女の顔があった。
「お気づきになられましたか?」
「はい!つうか、はい!」
ガバッと起きるに起きれず、ゆっくりとズレながら起きた。
僕はどれくらいの間、倒れていたのだろうか?
「すいません。大丈夫です。どれくらい、寝ていたか分かりますか?」
「小一時間位ですね。」
「一時間も、ですか?」
「はい。」
かなり長い時間を寝ていたな。
アンジェラ王女の隣には剣が置いてあった。
「ジュン。剣に名前をつけてください。」
「はい。」
一時間経っているらしいけど、そこにはトヨタマ様も居た。
もう一度、恐る恐る剣を持つ。が、今度は電撃が流れる事も、映像が頭に流れ込んでくる事もなかった。だけど、不思議な感覚が僕の体をめぐる。
「この剣の名は・・・クサナギだ。」
僕の記憶?わからない。だけど、名前はハッキリと思い浮かんだ。
僕が考えた名前でもない。ただ、この剣の名がクサナギであると分かったのだ。
あの、地球の、日本の、伝説の武器の名前と同じ名前を持つ剣だ。
次回更新
2021年2月27日土曜日20:00
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