第二十話 王女と探索。
予定通り更新です。
「では、行きましょう!」
ニコニコ顔でおっしゃるアンジェラ王女様。
いやいや。それはダメだろ?流石にどんな場所かもわからない所に王女様を連れてはいけないだろ?
「流石にそれは・・・。」
「今、行かないで、いつ行くのですか?!」
「えっ?」
「今でしょ?!」
「はい?」
というやり取りの後、そのまま強引に引っ張られました。
だって、強引なのは嫌いじゃないんだもん。しょうがないでしょ?
と、心で反論しつつも、引っ張られて進む僕。
すり抜けた壁の先は、緑色の光が常に周囲を照らしており、幻想的な景観を創り出している。
緑色光は石?か何かが発光しているのかな?良く分からないや。
「綺麗ですね。」
「そうですね。綺麗です。」
ぎゅっと掴むアンジェラ王女の手は徐々に強くなっている気がする。
目の輝きは失われていない事から、好奇心と恐怖心が競い合っている。そんな感じだろうか?
いくら、緑色の光で照らされているとはいえ、やっぱり薄暗さはあるからね。
「何処に繋がっているんですかね?」
「どうでしょうか?徐々に下っている事を考えると、国樹神様の根の方へと繋がっている気がしますけど。」
「国樹神様?」
「あっ、はい。中庭にあるイチョウの木の事ですよ。」
「あぁ。なるほど。国の樹って事かぁ~。」
「はい。それで、国樹神様と呼ばせて頂いています。」
神様かぁ~。イチョウの木って日本では神社とかお寺に植えられていたっけ?
そういう意味ではないだろうけど、城の中に取り込むぐらいだから、昔からこの地域に根付いていた宗教的シンボルなのかな?
「国の皆さんも遠くからこの国樹神様に向かって手を合わせる人も多いいのですよ?」
「そうなんですか?」
「ええ。それほどまでに愛される存在なんです。」
もしかしたら、都市国家中の地下に根が張り巡らされていたりして。
まぁ、流石にそんな事は無いかな?
僕等は、少しずつ下る、少しずつ曲がっている道を歩く。
道は徐々に緩やかな曲り道になっていくような感じだ。
「けっこう、長い道のりですね?」
「そのようですね。」
そんな会話をしたからだろうか?
道の先に今まで以上に緑色の輝きが強い場所が見えた。扉の様なモノも見える。
「ゴールですかね?」
「そうかもしれませんね。」
状況に慣れてきていたのか、腕を掴むアンジェラ王女の力は弱くなっていたのだが、扉を前にしてまた緊張しているのか、僕の腕を掴む力が強くなった。ちょっと痛い。
僕等は扉らしき前に着いた。
扉だと思えるモノは、あの⛎マークが大きく掘られており。その場所にあの緑色の石?が嵌め込まれている様な感じだ。その下には、何かの目的で線がひかれている。なんだろう?
どっかで見た気がするな?紋様?いや違う。何かを模ったモノだとは思うのだけど。
さらに、扉の色が白いので、幻想的な様子に拍車が掛かる。
綺麗さは幻想的な様子と重なって、少しだけだけど、夢なんじゃないか?って、思ったりもする。
「入りましょうか?それとも一度、戻りますか?」
「今でしょう?!」
ですよね~。
退却という文字はアンジェラ王女の辞書には無いご様子。
まぁ、アンジェラ王女だけとは言わず、こんな状況では先が気になる。
本来は、そこに危険かもしれない事を天秤にかけて考えるのだろうけどね。
それはアンジェラ王女の護衛であるビアンカさんの役目なのだろうけど、今はここに居ない。
つうか、そもそもアンジェラ王女はあまりこういう強引な感じは見せないんじゃないかな?ビアンカさんもあの時ビックリしていたから。
「では、行きますよ?」
「はい。ジュン様。」
ゴクリと唾を飲み込んで手を扉に近づける。
少しバチッとした感じがあったので、手を離してしまう。
「どうしました?」
「いや、今、電気が走った気がして。」
「そうですか。でも・・・。」
「勿論です。気を取り直して開けますね。」
「はい。」
このまま、ここに居ても仕方がない。
僕は覚悟を決めて、もう一度、扉を触る。
今回もバチッとしたが、一瞬だけだった。
そのまま、扉を押したら、予想外な開き方をした。
シューと横にスライドしたのだ。
「おっと!」
「キャッ!」
僕とアンジェラ王女は一緒に前につんのめる感じで倒れそうになる。
僕は何とか踏ん張り、アンジェラ王女をお姫様抱っこの様な感じで受け止める事が出来た。
ある意味、本当のお姫様ダッコであろう。
「ありがとうございます。ジュン様。」
「はい。」
恥ずかしいのか、ちょっと赤い顔になるアンジェラ王女。
そのまま、僕は辺りを見渡す。
やはり、緑色の光が煌々と照らしていて明るい。
少し広い部屋?中央には国樹神様の根本の部分かな?
地面に直接繋がっている。直径10メートルぐらいかな?いやもっとあるかな?
「大きいですね~。」
「私も初めて見ました。」
しめ縄かな?日本のご神木にある様な縄が巻いてある。
それにあの白い雷の様な形を模った紙。
あれなんていうんだっけ?神誰?紙垂?だっけか?
それにしても、凄く日本的なご様子。まぁ、ご神木なんて日本的なんだけどね。あははは。
「あの、もう大丈夫です。降ろして頂けませんか?」
オズオズと僕の腕の中に居たアンジェラ王女は切り出した。
「すいません。」
僕は、そっとアンジェラ王女をおろしたのだった。
次回更新
2021.2.23日火曜日(祝日)20:00です。
よろしくお願いします。