第十九話 王女様の行きたい場所。
予定通りの更新です。
絶対、約束だよ?!という言葉を残してフロイド王子は、専属メイドの方と共に部屋を出て行った。
それにしても、王子も凄いよな。
まだまだ小さい子供なのに、両親があんな状態でも、シッカリしている。
僕が同じ状況ならって思うとね。正直、凄いなぁと思う。
「すいません。ジュン様。」
そう、この王女も凄い。
いまだに【様】を外してくれないけれど。と、それは関係ないね。
まだ、十代の初めだろうに、王の代理として動いている。
凄く立派だと思うし、僕には無理だなとも思う。
「いえ。大丈夫です。」
「そうですか?ありがとうございます。」
真面目だよね。僕としてはお転婆姫ぐらいが丁度良いのだけど。
そうは言っていられない状況だよね。親が昏睡状態じゃあね。
「すいませんが、休む前にどうしても一緒に来て頂きたい所があるのですが、よろしいでしょうか?」
「えっ?はい。まぁ、良いですよ?」
「では、行きましょう。」
困惑気味の僕の腕を引っ張り、部屋を出ようとするアンジェラ王女。
「王女様。どちらに?」
「あなた方は結構です。ゆっくりくつろぎなさい。」
「ですが?!」
護衛のビアンカさんに止められる。それはそうだ。
普通に考えて王女様と勇者では無い男。二人にする理由がない。
なのに、それを許可しないアンジェラ王女。
「私は、ジュン様と二人で行きたいのです。」
「いくら王女様の頼みでも、それはきく事は出来ません。」
「聞いて欲しい訳じゃありません。命令です!」
「なっ?!」
これにはビアンカさんも驚いただろうけど、僕も驚いた。
「ビアンカ、大丈夫です。神の加護があります。それにジュン様と一緒ですから、危険があっても助けて頂けますよ。ね?ジュン様?」
「えっ?!えっと・・・はい!!」
眼力というのだろうか?
半端ないプレッシャーを受けた。これはもしや威圧か?
これが、強者の証の一つ威圧というスキルか?!と戦慄した。
「ね?ビアンカ。大丈夫ですから、少しの間、二人きりにして頂戴?」
「わ、わかりました。」
「ありがとう。ビアンカ。」
押し切ってしまわれた。
本当に子供なのだろうか?怪しい。と心の中でツッコミを入れた。
「さぁ、ジュン様こちらです。」
そう言って、僕の腕を引っ張って歩くアンジェラ王女。
この強引さを実は嫌いじゃなかったりする。
そうして、連れて行かれたのは城の中庭的な場所。
中庭と言っても、普通の人は入れない場所だね。そこには、ひと際大きいイチョウの木が立っていた。
「でか!」
イチョウの木ってこんなにデカくなるモノなの?
「凄いでしょう?」
「ああ。これは凄いね。ここまで大きいのは見た事が無いよ。」
「実は、このイチョウの木は下にも続いているんですよ。」
「ええ?」
よく見ると、木の周りには隙間がある。その周りをブロックの様なもので囲んでいるだけだ。
もしかして、この太さより更に太いって事?ヤバいっす。
「ふふふ。そんなに驚いて貰えるのは嬉しいですね。」
「本当に驚きですよ。」
「では、驚きついでに見てもらいたいモノがあります。こちらです。」
中庭の端。
丁度色々と死角になる場所へと案内された。
腕を思いっ切り引っ張られて。
「ここです。」
「ここですか?」
僕はキョロキョロとして辺りを見渡す。
「特に、変わったモノは無い気がするんですが?」
「よ~く、あそこを見てください。」
城の壁の方を見させられる。
高さは腰より少し高い位置。地面より一メートル位の場所かな?
そこを、アンジェラ王女が指さしている。
ここの中庭の城側の壁は紋様が幾重にも重なった感じのデザインが施されている。
お洒落な壁だ。お洒落なだけだと思うんだけど?・・・あれ?
「あれ?」
僕は目を擦った。疑ったとも言える。
そこには、見覚えのあるモノが見えてきた。
「もしかして?!」
「そうです。⛎の紋様が浮かび上がってきませんか?」
「たしかに。」
「それに、他とは感じが違いませんか?」
アンジェラ王女が言う通りに、何か違う。
僕の左手を自分で見ると逆に見えるのだけど、他の人が僕の手を取ってみると⛎になる。
どう説明して良いのかな?そこだけが浮き彫りになっている?そんな感じ。
一見するとただの壁の模様の一つとして違和感はない。
僕はフラフラと近づいて、その違和感のある場所を触れた。
「「あっ!」」
僕とアンジェラ王女は壁をすり抜けてしまった。
これは、マズいヤツじゃない?
僕は慌てて壁を再度すり抜けようとすると、普通に中庭に出れた。
「ほっ。」
安心した僕は胸を撫でおろす。
「あ~あ。」
アンジェラ王女はちょっと不満そうだった。
反応の違う僕等はとりあえず、一旦外に出た。
「これは、隠し扉を発見したつう感じですかね?」
「そのようですね。すいません。ちょっと良いですか?」
そう言って、アンジェラ王女は僕の腕を開放してから壁をすり抜けようとした。
「やっぱり駄目ですね。資格が必要なのですね。」
壁をすり抜ける事は出来なかった。
アンジェラ王女はとても残念そうだ。
「でも、ジュン様となら。」
僕の腕を再び拘束し、壁をすり抜けようとする。
結果は、無事にすり抜ける事が出来た。
「やっぱり、ジュン様が必要なのですね。」
「そ、そのようですね。」
目を輝かせるアンジェラ王女。
何故、目を輝かせるのだろうか?
「つまり、選ばれし者という事ですね。」
ニコッと笑うアンジェラ王女の笑顔はとても眩しかった。
次回更新は明日。
2021年2月21日日曜日20時です。
よろしくお願いします。