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第十七話 都市国家オヒューカス。

予定通りの更新です。


都市国家オヒューカス。


僕がお世話になる都市国家だ。

目の前に見える都市の事だ。外壁は高い。よじ登るのは大変そうだ。

貧乏都市国家と聞いていたから、ボロいのを予想していたが、良い方に裏切られた感じだ。


「不思議ですか?」


「え?」


「壁がシッカリしているのが。貧乏なはずなのに。って、思っていませんか?」


何この子。心読めるのかしら?怖いわ。


「そうですね。すいません。正直そう思いました。」


「ふふふ。そうですよね。でもこれが都市国家なのです。」


「ええ?どういう事ですか?」


「ここまでの都市の壁も立派だったでしょう?」


僕は思い返す。確かに立派な壁だった。


「そうですな。立派でした。」


アンジェラ王女は頷く。


「ロックフェラ連合国の都市国家は全てを壁の内側に入れます。それは知っていますね?」


「はい。あっ。」


「そうです。もうジュン様は察したと思われますが、壁だけはキッチリ造らなければいけません。たとえ王国が貧乏になろうと、民を守る壁だけは壊れたままには出来ないのです。」


国は民を守る。それが第一だ。

それを無くして国は成り立たない。支配者がしなければならない事。

優先しなければならない事は、自国の民の安全だ。


都市国家はその最大の安全をこの壁によって守っているという訳だ。

その立派な状態を維持するにはいくらでもお金を用意する。

プライドもあるのだろう。壁だけは立派なモノを維持しなければいけないのだな。


「なるほど。王も支配者も大変なのですね。」


「そうかもしれません。」


その目は少し悲しみを孕んでいたが、その時の僕には何も言ってあげる事は出来なかった。


そんな状況でも馬車は進む。

都市に近づくにつれ、人が増えていった。

入場門には長蛇の列が出来ている。


馬車は入場門で止められる事は無く、別の入口が開けられた。

僕等を乗せた馬車はそのまま都市の中へと入って行く。


都市国家オヒューカスの街並みは、写真で見た事がある外国の古い町並みに似ていた。

特徴的なのは、イチョウの木が道の両サイドに街路樹として植えられている事だ。


「イチョウの並木ですか?」


「はい。街路樹としてオヒューカスでは古くから植えられています。」


「綺麗だ。」


「ありがとうございます。」


素直に誉めると、アンジェラ王女は嬉しそうな顔になって感謝を述べた。

お世辞なんかじゃなく、本当に綺麗な景色だ。


元々、ロックフェラ連合国においての道は整備が行き届いている。

ロックフェラ連合国は全ての道は整備されており、交通の便を良くしているそうだ。

これは初期のころから拘っている事らしい。都市の中の道も同様に整備されている。

それでも、この街は綺麗だ。整備されているだけじゃなくて景観も維持している様子が見られる。ゴミらしいゴミが無い。それに計画的に街路樹も植えられている。


後から聞いた話だけど、このイチョウ並木の街路樹は、このオヒューカスの人々の誇りだそうだ。だから、自主的に街の人は綺麗にしているそうだ。

何も無い都市国家オヒューカスの誇り。【イチョウ並木の街路樹】は僕の頭の中に強烈な印象として入ってきた。


「私達の自慢の並木通りです。都市内の道という道にはイチョウの木を街路樹として植えてあります。」


庭師・作庭師・樹木医という三種の職業がオヒューカスには多いそうだ。

都市内には公園や、林に森、泉や池が多くあるという事だ。

小さな山も都市内にあるというので、この都市を建造した人は、相当に自然が好きだったのかもしれない。


「イチョウの木を育てる専門の場所もあります。」


イチョウの木に特化した街。

これは、ある意味で相当に凄い事じゃないだろうか?


「災害を受ける迄は、裕福とまではいかなくても、貧乏では無かったんですけどね。あははは。」


乾いた笑い声になるアンジェラ王女。

本当にそうなのだろう。これだけ立派なイチョウ並木を維持できる技術は相当高い事が伺える。とは言え、イチョウ並木で飯が食える訳じゃない。利益も出しにくい。

安定した状況であれば、問題ない事も緊急時にはどうしても厳しいだろう事は僕にもわかる。


「アンジェラ王女様、ジュン様。もう直ぐ王宮へ着きます。」


「ありがとう。ビアンカ。」


「さぁ、ジュン様。先ずは父と母に会って頂きたいと思います。」


「わかりました。」


父と母という事は、王様と王妃様って事かな?それとも女王様と王配様かな?

どちらにしても、この都市国家のトップと会う事になる訳か。

何か緊張してきたな。


「ふふふ。ジュン様。そんなに緊張されなくても大丈夫ですよ。」


「はい。ですが僕は小市民ですから、やはり緊張はしますよ?」


「あれ、私には緊張して貰えてない気がするのですが?」


「そんな事はありません。頑張って平常心を保つ様にしているだけです。」


「そうなのですか?」


「ええ。そうです。」


僕の断言を聞いて、いたずらっ子の様な顔になるアンジェラ王女。


「まぁ、そういう事にしておいてあげましょう。」


ちょっと、王女様っぽく高圧的なモノ言いをするのだが、恥ずかしかったのか、チロリと舌を出したアンジェラ王女。


年相応な女の子である事を意識した瞬間だった。

アンジェラ王女は王女であり少女である事を思い出す。

こういう仕草が無ければ、彼女を少女だと認識する機会はない。


「さぁ、着きました。」


「「「「「お帰りなさいませ。アンジェラ王女。」」」」」


アンジェラ王女を出迎える沢山のメイドや従者が並んでいたのだった。


次回更新

2021年2月14日日曜日

よろしくお願い致します。

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