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第百四話 ジュンの帰宅。

予定通り更新。



「た・だ・い・ま・・・。」


ジュンが大面接会を終えて自分の屋敷に帰ってきたのは、ジュンが家を出てからマルっと五日後であった。

ジュンは途中で仮眠や食事休憩をとったりしたが、一日100人との面接をクリアした。

そして500人との面接をクリアするのだから5日かかった訳である。

屋敷にはラムザが使者を出して状況説明をしてあった為に屋敷の人間に混乱は無かったのだが、帰ってきたジュンを見て、相当激務であったのだろうと想像した。

ジュンはヨロヨロとした足取りで自身の部屋に入ると、そのまま寝てしまったのである。


「お兄ちゃんは死んだように寝ているよ?」


「子供だな!」


「アンタよりは大人でしょ?イイ匂いがするもの。アンタみたいに臭くないわ!」


「なに?!」


「そうそう。お金持ちだし、家もあるし、地位もあるもんね。」


「くっ!俺だって大人になったら・・・。」


「出来る訳ないじゃん?」


「ほんと。ビーチャは馬鹿だから。」


「くっそ!いい加減にしろ!!」


子供たちが騒ぎ出し、大声を上げてドタバタを始める。

この家にはジュンが引き取る形になった孤児だった子供たちが住み込みで働いている。


「いい加減にするのは、アナタもよ。」


「「「げっ!リリー!!それにレイカお姉ちゃん?!」」帰っていたのかよ?!」


この日、レイカとリリーは一緒に買い出しに出ていた。

レイカはビーチャと同い年ながら、既に正規のメイドとしてジュンの屋敷で働いている。

リリーも年の割にしっかり者であり、メイド見習いをスタートしており、メキメキと頭角を現している。

特に、ビーチャを筆頭とした年上の男の子達は、リリーを苦手としていて常に躾られている様な状態だ。


「ビーチャ兄。またですか?」


「ひっ!」


「主人であるジュン様が激務後の睡眠をとっているから、静かにする様にと出掛ける前にお伝えしましたよね?」


「はひぃ!」


リリーの怒りを表すかの様な厳しい口調と視線がビーチャを射抜く。

その近くにいる女の子たちもつられて背筋がピンとなる。


「おう?どうした・・・のでしょうか?」


「おい。やべぇ。リリーがキレてるぞ?」


そこに偶々、偶然に通りかかった男の子が二人いた。

ヤバイと感じた男の子二人はその場を後にしようとする。


「ちょうど良かったです。フラン兄とスペイ兄もこっちに来てください!」


「「はひぃ!なんで俺達まで・・・。」」


「私が知らないと思っているのですか?昨日、ジュン様にと残しておいたお菓子を勝手に食べたのを気づいて無いとでも?」


「「はひぃぃぃ!!」」


「なっ!お前らずりぃぞ!」


「うるさい!ビーチャ兄。元はと言えば、きっちりと纏めなければいけないビーチャ兄がボヤボヤしているからいけないのでしょう?違いますか?」


「うっ!」


「さぁて、ジュン様はまだお休み中です。訓練場にいきましょうね。」


「「「ひぃい!」」」


「タリアとイースの二人も来て頂戴。見張りをしてね。」


「「かしこまりました!リリー姉!!」


「さぁ、行くわよ。」


リリーが先頭に立ち、最後尾にリリーの子分のタリアとイースが見張る様に三人の男の子を連れて行く。

それをレイカは『無茶しないのよ。』とだけ声をかけて見送る。

ドナドナを歌いそうな感じの男の子三人組は連行されていった。

訓練場でおこなわれるリリー隊長による特別訓練という名のシゴキによって屋敷の中が静かになりジュンの安眠は保たれたのである。

ただ、大きく騒いだところで疲れ果てたジュンが起きる様な事にはならなかったかもしれないのだが。


「グロリアさん。戻りました。」


「レイカ?お帰りなさい。不足分はありましたか?」


「はい。この通り。」


「それは良かったわ。」


レイカはグロリアに今日の買い出しによって手に入れた食材を見せる。

いつもはこの屋敷に出入りする業者に頼むのだが、急ぎで手に入れる為に買い出しに行かせたのである。


ジュンは名誉が付いているとは言え公爵に叙された貴族なのである。

王族との関係性も強く、世界一のシャルマン商会とも懇意の関係であるので無碍な対応はされないし、ジュンと関係を築きたい者は多い。

公爵とは普通であれば王族に連なる血族の者が与えられる爵位である。

特例があるとは言え、普通で考えれば侯爵であろう。

だが、名誉公爵を与えられた事が示すのはそれだけオヒューカス家にとって家族と認めた相手であるという事なのだ。

本人は必要としなかったが。


「それにしても、改めてジュン様の凄さを感じましたわ。」


「あら、どうしたの?」


「街並みというか、街の活気が凄いので。」


ああ、なるほど。

とグロリアは思った。

レイカ達は孤児だった。

その頃はお世辞にもこの都市国家オヒューカスは活気があるとは言えなかった。

当代の王様と王妃様が共に未知の病気になられ気を失ったままだったし、貴族たちは自分達の事を考えるだけで手いっぱいだった。

街は静かで人通りも多いとは言えず、他の街や国からの来訪者は皆無だった。

その街の状況を間地かで見ていた者達なのだ。


それが今や来訪者は後を絶たず、新エリアが開拓され学園が建立される予定迄あり、人や物があちらこちらに溢れている。

ジュンが来た前と後では天と地の差がある。


「そうね。たしかにそう。」


遠く思いをはせる様な目になったグロリアは色んな事を思い出しているのであろう。


「でもね。初めて見た時は頼りなさそうだったのよ?」


「ふふふ。見た目は今も変わっていませんね。」


「ふふふ。そうね。変わっていないわ。」


ジュンが聞いていたら『ちょっと、ちょっと。』と言うであろう事を想像して二人は上品な笑い声をもらした。


「でも。あの方は凄いわ。凄すぎて理解できない程。」


「そうですね。今もボケっとしていますが、凄い方です。」


「そう。それは変わらないわね。」


グロリアとレイカは『ふふふ。』と笑い合うのだった。


次回更新は

2021年10月23日(土曜日)20時

よろしくお願いします。

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