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第百一話 朗らかな笑顔が咲き誇る。

予定通り更新。



「すげぇっす!」


「だろ?」


ジュンは『すげぇっす!』を言うだけのマシンと化した。

目の前でザバルティが起こす奇跡を目のあたりにしているからだ。


「いったいどうなっているんっすか?」


何処の下っ端なのだろうか?

言葉に知性と品が感じられない。

それほどに驚いていると言える。


なぜなら、欠損。

つまり失われたハズの腕や足が生えるのだ。

傷口から生えるというよりも無から造られる様な感覚を与える。



「ただの回復魔法ではないからね。身体の時を戻すと言う方が正しいかな?」


「回復魔法じゃないのなら再生魔法ですか?」


「う~ん。違うんだよね。あえて言うなら神力かな?」



実際、どの様に復元されるのかは見えない。

ザバルティが手をかざし、その力を請うと強い光が辺りを包みこみ視界を遮られる。

治療される者にも見えず、何か痛みが走る事もない。



「理解しているのは再生では無いという事と、時の力を感じる事だね。」


「何ですかそれ?でも見えないからそう思うしかないのかな?」



ザバルティはジュンの指摘を受けて苦笑いをするだけだ。

『神の奇跡』としか言えない解明できない力だ。

だが、とザバルティは思い周囲に視線を動かす。

これだけ、泣いて喜ぶ存在が居るのだから、ありがたく使わせて貰うだけだと思う。


現在ではこの力に慣れて、複数名を同時に回復できる様になっているザバルティは一度に18名全員の欠損を直してしまう。

欠損どころか、日々の生活によって生まれた人の身体の歪みも治してしまう。

美容整形とは違うが、身体的に整うのである。


部屋中のあちこちから声にならない泣き声が上がっている。

そのどれもが感謝を表しているのが分かる程に幸せな空気が部屋を占めている。


欠損を直す為に奴隷となったスカニアは覚悟があった。

覚悟があったのにも関わらず、やはり声にならない泣き声を上げていた。

止まる事を知らないのか、後から後から出てくる涙と嗚咽に自分自身が驚きを感じている。

自身がこれほどまでに欠損という事を苦しんでいたのだと感じている。

両手を肩から失い、両足を太ももの付け根から失った。

その失った両手を使って足をさすり目から流れる涙を拭う。

たったそれだけの事で幸せを感じるスカニアは天国に召されたのではないかと思う程に幸福感で一杯であった。

『感極まる』を体感したスカニアである。



全員が落ち着くのを見てミーリアが全員に向けて言葉を掛けた。


「これより皆様には我が主であるザバルティ・マカロッサ様の奴隷としての人生が始まります。先ずはザバルティ様よりご挨拶がございます。」


「私がザバルティだ。アスワン王国マカロッサ子爵家の長男として生を受け、君達の主人となった。君達は奴隷であるが、沢山の先輩が居る。当面は自身の身体の調子を確かめてもらう期間を設ける。その後適性に合わせて仕事についてもらう事になる。」


誰もが自分の今後についての話の為、聞き逃すまいと真剣に聞いている。

ある種の緊張感がある。


「もう君達も気がついていると思うが、この空間は亜空間であり、先ほどの欠損回復はこの世界において異常と言える現象だ。よって私が関わる事についての私の家族以外での発言は禁止とする。」


この魔法がある世界でも異質な能力である神力。

精巧な亜空間に転移ゲート。

どれ一つとっても脅威である。

人は自分より強い者には畏怖の念が産まれる。

そして畏怖は排除へと移行する。

魔女狩りが分かり易いもっともな例であろう。


この世界でも抑止力という言葉が存在する。

抑止する力が必要な世界であるという事でもある。

異質な力を持つザバルティは世界の脅威になる事も英雄になる事も求めていない。

ただ自分の周りにいる者を助ける事が出来るのなら、無理をしない範囲で助ける。

助けた相手を最後まで面倒をみるつもりで無理をしない。


地球、日本で考えるならば、ペットを飼うマナーに近いかも知れない。

途中で捨てる等の行為が一番問題となる。

面倒を見続ける事が一番大切なのだが、それと同じ感覚なのであろう。

生命に対する責任を持っているのだ。

なので、奴隷自らが開放されたいと言わない限り野に放つ事はしていない。

まぁそもそもが離れようとする者が居ない。

多くの者がザバルティの力を知り、『信者』になってしまうからなのだが。


「では、行こう。私達の家へ。」


これだけ聞くと新興宗教や、某国で社会問題となっているコロニーを造る宗教団体の様な感じであるのは否めない。

だが、死者が出ていないのも事実であるし、私刑(リンチ)も無ければ、身内内での犯罪も起こっていない。

国に対して大きな反感を持って反社的な行動も取ってはいない。


それはザバルティ個人の能力が超越している事もあるが、マカロッサ家が特殊な家柄である事や、シャルマン商会の商会長との強固な関係が影響しているのも事実である。


18名の元欠損奴隷たちはザバルティ達に連れられて、真っ白い亜空間から出て行く。

そして幾つかの扉を通り抜けアスワン王国の王都テーストにあるザバルティの屋敷へと到着した。

皆が驚きゲートの説明を受けた時には目の輝きが変化していた。


「さぁ、私達の家です。ゆっくりとくつろいでください。皆さんの部屋も用意されていますよ。後で案内しましょう。その前に食事です。」


朗らかな笑顔が辺り一面に咲き誇るのは、いつも受け入れる度に起こる現象の一つである。


次回更新は

明日、2021年10月10日(日曜日)20時

よろしくお願いします。

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