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第九十九話 東の大将。

予定通り更新。


「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。主人も首を長くしてお持ちしております。どうぞこちらへ。」


古く大きな建物に辿り着くと、その建物の敷地前にある門に一人の男がたっており、ジュン達四人を見かけると直ぐに声を掛けてきて、こちらの返事も聞かずに案内を始めた。

燕尾服をきた初老の老人らしき男に案内されて大きな部屋へと辿り着いた。


「どうぞ、こちらへお座りください。主人を呼んでまいります。」


進められたソファは金の刺繡が入った白色であり品がよく見える。

四人が進められたまま座ると飲み物が目に前に置かれた。

ほどよくして、部屋の扉が開いた。


「ようこそ。わっちの屋敷へお越しくださいました。」


扉から入ってきた人物。

それは女性であった。


「わっちはマンドナ・ティックアートでござんす。お見知りおきを。」


真っ赤なドレスを着ており、その派手さに負けないスタイルと胸元に光る大きすぎない宝石は品性を感じさせる。

男の視線を釘付けにする豊満な胸とキュッと引き締まった腰からお尻にかけての曲線美。

身体全体から発せられているのか生命力に溢れている雰囲気。

そして何と言っても整った顔立ちであり金髪蒼目であり、耳が尖っている。

そうエルフであるエルフであるが色々とエルフらしくないエルフである。


「ふん。こちらがラムザ様。こちらがザバルティ様。そしてジュン様だ。」


乱暴さを感じさせるチャンプリンの紹介である。

ただ、これほどの女性が目の前に来たと言う割にここに居る男どもの反応は薄い。

そこに違和感を覚えたマンドナであるが、それを表情には表わさない。


「遠い場所までお越しくださり、誠にありがとうござんす。」


「ふん。お前がごねたのであろうが。」


チャンプリンは素直に悪態をつくが、それをモノともしない雰囲気でにこやかに笑うマンドナは扇子を広げた。


「ふふふ。誠に申し訳ございません。ウチの奴隷が我儘を言いまして。わっちから厳しく言うておきますので、あしからず。」


涼し気な目元に変化は無いが、口元を扇子で隠しているので口元は見えない。

整った顔立ちと整ったスタイルに妖しい所作が混ざり合い、妖艶さが滲み出る女。

直情的なチャンプリンでは太刀打ちできまいとジュン達は思った。

直情的な事が悪いのではない。

こういう輩との交渉が上手く行かないのは目に見えているだけである。

ただ、それは先方も同じ事。

妖艶さに取り込まれない芯の強いチャンプリンとは交渉出来ないというのも間違い時は無いであろう。

ジュン達をこの場に連れてくるだけに留めたチャンプリンもやはり凄腕なのだ。

他の男では、惑わされ全てを飲まされるに違いないのだから。


「そうか。で、わざわざ来させたんだ。それなりなのだろうな?」


ラムザの鋭い眼光がマンドナに突き刺さる。

少しブルっとした感じがしたマンドナは薄っすらと目尻を下げる。


「まぁまぁ、そんなに凄まなくてもこんなちっぼけな女なんぞ、直ぐに吹き飛ばせれますでしょう?」


流し目を向けるマンドナ。


「たしかに、ただの女であればそうだね。ただの女であれば。」


「はて?なんのことでしょう?わっちには一つも思い当たる事は・・・。」


「なら、先ずは周りにいる武装している奴らを退かせ。話はそこからだ。」


「あら怖い。」


「あ~、後、本人を出せ。傀儡と話を続けても意味は無い。」


そこで初めてマンドナの雰囲気が変わった。


「威嚇は必要ない。それとも死にたいのか?」


びくっとしたマンドナと隣の部屋で大きな音がした。

マンドナは膝をつき、頭を下げた。


「も、申し訳ございません!わっちは・・・。」


「謝罪は良い。本人を連れて来い。」


「本人?ザバルティ様?」


チャンプリンが驚きの顔でザバルティとマンドナの顔を交互に見る。


「・・・はい。かしこまりました。」


ぶるぶると震える体を手で押さえながらマンドナは隣の部屋へと姿を消した。


「どういう事ですか?」


「うん?まぁあれだ。アイツは交渉役だな。」


「ラムザ。きちんと説明してあげてくれ。チャンプリンさん。彼女は表の顔であってトップじゃない。」


「ま、まさか?!」


「そう。この商館のボスは他に居る。」


「それでは、私は騙されていたという事ですか?」


「ちょっと、違うな。彼女は自ら自分がトップだと言ってないんじゃないかな?」


「ですが・・・。あっ?!」


「思い当たる節はあるみたいですね。そうあたかもそうであるかのように振舞っていただけです。」


「ですが、あの貫禄は早々つかないと思いますが。」


「そうですね。それこそが肝です。彼女は英才教育を受けた経歴の持ち主でしょう。」


「なんと?!」


「そして、その上で彼女は頭が良い。だから成り済ますなど簡単なのでしょう。」


「ですが、なぜそれにお気づきになられたのですか?」


「まぁ色々ありますが、違和感があってね。」


「違和感?」


「そう。まぁもう来るみたいなので、答え合わせは戻って来てからにしましょう。」


「は、はい。」


浮かない返事をチャンプリンが返してから、少ししてマンドナが一人の女性を車椅子に乗せられて連れてきた。


「試すような事をして申し訳ない。」


車いすの女性が謝罪を口にした。


「私がこのティックアート商会の会長、スカニア・ティックアートです。この体ゆえこのままでの挨拶をご容赦いただきたい。」


スカニア・ティックアートには両腕と両足が無かった。


次回更新は

明日、2021年10月3日(日曜日)20時

よろしくお願いします。

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