第一話 勇者召喚
人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり。
僕の好きな戦国武将・織田信長公を表現する時に使われる敦盛の一説。
意味は、【人の世の50年間は天界の時間と比すれば夢幻のように儚いものだ。】
という事らしい。
僕がここから感じる事は、人間の一生なんて短い。
儚いものだから、一生懸命に生きろ。と言われている気がする。
織田信長公自体も通説では49歳で家臣の明智光秀に殺されている。
それまでの人生は本当に一生懸命に生きた人なのだと思う。
とはいえ、一生懸命に生きても織田信長公の様に何かを成せる人は少ないだろう。
僕もその一人だ。特に何かを成した訳じゃない。
『まだ、出来る。こんなもんじゃない。』
と思う時もあれば、
『僕には、もう出来ない。無理だ。』
と思う時もある。
皆もそうでしょう?それとも僕だけなのかな?
少なくとも、織田信長公や豊臣秀吉公や徳川家康公などの歴史に名を残した偉人達は皆、有名になる事が上手な人達なんだと僕は思う。
今なら、芸能人とか?ユーチューバーとか?あの人達はそうだよね。
でも、今と昔では発信する媒体が優れているか優れていないかの違いはあるけど。
僕は、目立つのは得意じゃない。
得意じゃないけど、目立つ行為をしてしまうらしい。
例えば、学級委員とやらされた。挙句の果てには、生徒会まで。
もしかして、これって虐められてただけかもしれないけどね。あははは。
自分で言うのも何だけど、僕は小さい時から何でも出来た。
けど、どれも一番には成る事は出来なかった。
つまり器用貧乏って奴かな?
出来ないより出来る方が良い。
確かにそうだよね。だけど、その分、挫折は沢山味わったよ。
だって、一番に成る事は出来ないのだから。
【井の中の蛙】
という言葉が当て嵌まるのかもしれないね。
一定の評価はされるよ?されるけど、一番じゃない。
一番じゃないと、地球の現代日本では評価されない。
「アイツは凄いと思うけど・・・。」
凄いなら凄いで終わってくれれば良いのにね。
う~ん。難しいね。
ついたあだ名が【永遠の二番】だってさ。酷いよね?
何でこんな話をするのかって言うと、見事に【永遠の二番】が発動したみたいなんだ。
◇◇◇◆◇◇◇
僕は学校から帰る途中で、神社に寄った。
信心深いって訳じゃない。家の近くの神社にはよく遊びに行っていた。
この日も僕はいつものルーティンの様に神社に足を運んだ。
境内にある銀杏の木の麓が僕の定位置だ。
そこにはちょっとした座れるスペースがある。樹齢何百年って言われている神木指定された木なんだけど、いつも僕は勝手にロープを跨いでその定位置に座る。
「やっぱここが一番良いね。」
僕は一番には成れないけど、僕には一番が結構沢山ある。
僕は持っていた鞄を横に置いて、ペットボトルの蓋を開けてコーラを飲む。
「ふぅ。旨い!」
落ち着くな~。
『ふふふ。』
あれ?笑い声が聞こえたような?
そう思っていると急に僕の周りが輝き出した。
「えっ?」
そう呟いた時には僕は真っ白な世界をひたすら落ちていった。
「ちょっと~!」
僕の声はむなしく響くだけ。そして、ドン!と僕は固いモノに尻もちをつく。
「イテっ!」
僕はお尻を擦りながら、立ち上がる。
「ここは何処だよ?」
辺りを見渡すと、四方を白い壁で囲まれた大きい部屋のようだ。
僕が居る場所を囲う様にして、五つの篝火が焚かれている。
床を見ると、僕が居る所を中心にした円が描かれているし、篝火はその円に等間隔に置かれている様だ。
四方の壁の一つに扉がある。
僕は恐る恐るその扉に向かった。
「どういう事だ?!」
「巫女様が、神託を受けたのです。もう来ているハズです。早く、姫様をお呼びください。」
大きな声で怒鳴る男の人の声と、慌てたような女の人の声が聞こえた。
これは、今は出て行かない方が良い気がして、僕は慌てて何か隠れるような場所を探した。
・・・無いな。どうしよう?つうか、どうしたら良い?
僕は、考える人という像の様なポーズになっていたんだと思う。
「はぁはぁ、勇者様?」
気がついた時には遅かった・・・目の前には物語に出てくる姫様と言った容姿をした女性が立っていた。幾分か困惑気味の顔であったのは、僕のポーズの所為だろう。
「あははは。」
僕の口からは乾いた笑い声が出るだけだった。・・・恥ずかしい。
そんな僕を見た姫様の後ろにいた衛兵らしき人がゴホンと咳をする。
それを聞いて王女様は困惑の表情をキリッとした表情に戻した様だった。
「私はロックフェラ連合国の主導国の一つである、都市国家ガリレオの第一王女ファフニール・ガリレオです。」
えっと、ロックフェラ連合国?都市国家ガリレオ?そんな国あったっけ?
そもそも、第一王女ってなんですか?
僕の頭には疑問がドンドン湧き上がってくるのだけど、口から出た言葉は。
「僕は、ハンバーグが大好きです!」
WHY?
何故なんだ?僕の選んだ言葉はそれだった。
だってさ、目の前に来た王女様が金髪美女でさ、胸もスッゴいんだよ?
男なら、わけわからん事言っちゃうよね?
「そ、そうですか?それで、ハンバーグというのは何でしょうか?」
王女様にはハンバーグという食べ物はわからなかったようです。
「ハンバーグは、「無礼であろう!」」
後ろに居た衛兵さんらしき恰好をした人に怒鳴られた。
ですよね~。でもこれって、ドッキリとかですよね?
そんなに本気で怒らなくても良いんじゃない?ってこの時の僕は思ってました。