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7:つよつよ少女と知り合い爺さん

お越し頂き誠に有難う御座います。

本日は書きたかった話…出したかった人物の登場回となっております。



「あ」

「…アビたん?」

「たん…違う。」


刀鍛冶の居る街を目指して馬車に揺られていたら、短い黒髪の少女に出会った。


「アビたんも刀鍛冶探し?」

「……そう。」

一つため息をついてから答えるアビたん。

たん付けは諦めるようだ。


「そっか、アビたんもあの人の刀持ってたのか。」

「…知り合い?」

「いーや、有名人だから。」

「…一緒。」

「そうなんだ?アビたんはどこで聞いたの?」

「有名人。」

「鍛治師に聞けばそりゃ出てくるか。」


「勇者さん、私、何を話しているのか分かりません。」

困ったように笑うキューロックさん。

大丈夫だ。俺も勘で話している。


「アビたんは他に何か武器手に入れたの?」

「秘密。」

そう言って右手を人差し指だけ伸ばして後の指を握り、口に当てるアビたん。

目も瞑っている。

さらさらと風で黒髪が揺れている。

「か、かわいい。」

「なるほど、これは…」

なぅ、と先生が鳴いた。

三者三様の反応をする俺達。


「アビたんアビたん。」

「たん…違う。」


アビたんが可愛いのでこの後めちゃくちゃ話しかけた。













「その様はまるで小さな女の子に迫る変態の魔の手のようでした。」

「ねぇ、その語り酷すぎるからやめない?」

「事実ですよ、勇者さん。」

「事実無根だよ!」


「早く降りる。」

「はーい、アビたん待ってー。」

「気持ち悪いですね。勇者さん。」

なーう、と頷く先生。

「先生まで?!そうか、やめよう。」

短い黒髪の少女を追ってスタッと地面に降りる。


アビたんは馬車から降りて少しその場から離れると大きく伸びをした。


風で靡いている彼女の髪に夕陽の色が映って、オレンジ色に輝いていた。



「ついたなー。」

目に映るのは比較的大きな街である。


刀工はこの街の近くの山に住んでいる。


「キューロックさん、何か宿知ってる?」

「おや、私に頼るとは珍しいですね。明日は世界の終わりですか?」

「そんなに珍しいことかな?!…まぁ、アビたんに聞くのも今はちょっとアレかと思ってさ。」


「なに?」

ととと、とこちらに寄ってくるアビターン。


「宿探しててさ。」

「宿…」

「私が案内してもいいですよ?」

ずいっと、こちらによってくるキューロックさん。

「アビたんは宿一緒にする?」

「する。」

こくん、と頷く黒髪の少女。


「可愛い。」

「もう全肯定ボットですね…」

キューロックさんが何か言ってくるがどうせ悪口か何かだろう。













部屋は二つ取った。

一つは一人部屋でもう一つは二人部屋だ。


当然二人部屋に女性陣が入り、俺はカタマリ先生と一夜を共にするつもりだ。




だったのだが。



「いや、こうはならんだろ。」

「なってますよ?勇者さん。」

何故か、カタマリ先生とアビたん、

俺とキューロックさんで部屋分けが確定した。

今はベッドに腰掛けている。


「いや、これ、体拭く時どうすんの?」

「同じお湯に入って、その後は肌を見せあった仲です。最早何の問題があるのでしょうか?」

「問題しかないねぇ…」




早速とばかりに受付の人からお湯とタオルを貰って体を拭いているキューロックさん。


「しかし、目は逸らさないんですね?」

「いや、まぁ、何と言いますかね。

…至福の一時ですね。ご馳走さまです。」

「お粗末さまです。」

手を合わせておく。

目は瞑らない。

キューロックさんは地味に手で隠しながら体を拭いてくれているので、目を瞑る理由がないのだ。


「体、拭いてあげましょうか?」

「いえ、それは結構です。」

それは限界を超える。


「ほらほら、遠慮しないで。」

手招きをする金髪の美女。

危うく立ち上がりかけた自分を制止させ、座り直す。


「仕方ありませんね。それではまた後日としましょう。」

「また同じ部屋になる可能性があると?!」

「私たちの冒険はまだまだ始まったばかりです。」

「それは一体どういう冒険なんだ…」

気になるような、気にしちゃいけないような


クスクスと笑う金髪の女性が印象的な夜だった。













「昨晩はお楽しみでしたね?勇者さん。」

「何を?!」

スマイルを欠かさないキューロックさんにツッコミを入れながら朝の支度をする。


今日は山に入って刀工に会い、最悪、刀を作ってもらう約束をしなければならない。

アビたんの分もあるので結構な時間がかかるとみていた。

俺は大急ぎで欲しい訳ではないとアビたんに先を譲ったら、もう自分の分は作り終わっているそうなので受け取りに行くだけのようだ。

え?そういう話だったっけ?

どうやら、勇者育成機関に入っている間に刀工に連絡をつけ取りに行くから打って欲しいと頼んだようだ。


「俺、今から頼むんだけど…普通に頭悪いな」

「勇者さんの頭が残念なのは昔からみたいですね。」

「アルレイ、落ち込まない。」

アビたんが励ましてくれたのでもう少しだけ頑張れそうです。


先導するキューロックさんの後に続きながら進む。

何故彼女が刀工の家を知っているのか、最早疑問にも思わない。

「だってキューロックさんだし。」

「えぇ、キューロックさんですよ?」

「?」

アビたんは少し不思議そうだ。


「そういうもんだよ。」

「私、信頼を獲得したと見ていいですね?」

「そういうもんか、と諦めたんだ…」

「信頼度98パーセントですか、ベタ惚れですね。」

「その2パーセントはどこから?」

「メイリーさんとアマリアさんです。」

「うちの最かわメンバーなんだけど…パーセンテージ低すぎない?」

「お二人には、特にメイリーさんには申し訳ないですが勇者さんの心は既に私にあります。」

「ありませんねぇ。」

「全く?」

こちらの顔をジッと見つめてくる青色の瞳。

「……ちょっとだけ。」

「勝ち確ビージーエム下さい。ルート入りましたよ!私がメインヒロインですね、間違いありません。」

「着いた、探してくる。」


だらだらと、無駄な話をしている間に、目的地に到着してしまったようだ。


アビたんがスタタっと、民家に入っていく。


家の隣には鍛冶場があって、今は使われていないようだ。


「到着してしまった、と思いましたね?実はもう少し私と話していたかったんじゃないですか?」

ほら、ほら、白状するといいです、と詰め寄ってくる金髪の女性から目を逸らし空を見上げる。


空は少しだけ曇っている。

雨が降らないといいのだが。












「居た。」


シュタッと、帰ってくる黒髪の少女。


後ろには筋骨隆々の爺さんがいる。


「刀が欲しいって言ってんのはそこの小僧か?」

「そうです。」

一歩前に出る。

体の大きな爺さんで平均的な男子と比べれば背の高い俺だが完全に見上げる形となっている。


しばらくお互いに目線を交わし続けた。


「ちょっと待ってろ。」


そう言って鍛冶場に歩いていく爺さん。


少し待っていると、すぐに爺さんがその手に一振りの刀を持ってやってきた。


それを俺の前に持ってくる。


「振ってみろ。」


刀を受け取ると軽く振ってその調子を確かめる。


爺さんは腕組んでジッとこちらを見ている。


少し離れて周りに何もない広場のようになっている場所に行く。

ちょうど家があったところの隣で、鍛冶場からは少し離れたところにある。






刀を軽く握り、息を吸った。


刀を握り締め、息を吐いた。


いつも通り、剣を振った。


ごくり、と息を飲む音が聞こえた。


「お前さん…」


そちらを見ると目を大きく開いている筋骨隆々の爺さんがいた。


「あの、爺の弟子か…」

どの爺かは知らないがこの爺さんの中では既に決まったことらしい。


「ちょっと待ってろ、あの爺の弟子なら話は早い、あいつの為に作っといた刀があんだよ。」

そう言ってこちらに背を向けその場を去ろうとする爺さん。

「ちょっと待った!それ多分、無くなってたら怒りますよね?」

「いや、別に頼まれてたわけじゃねぇ。あの爺に振らせたかっただけだ。お前さんが持ってくならいいだろう。」

「俺!多分今は弟子として覚えられてないと思うんですけど!その、いいんですかね?」

筋骨隆々の爺さんはこちらを向くと不思議そうに眉間にシワを寄せる。

「覚えられてねぇって…まぁ、あの爺のことなら、なくはない、か。…別にいいだろ、俺がお前さんにくれてやりたいだけだ。それでさっさと魔王とやらでも斬ってこい。」


それだけ言うと爺さんは後は知らんとばかりにドシドシと歩き去っていく。


「まぁ、貰えるなら貰っていけばいいんじゃないですか?勇者さん。」

「後が怖いんだよなぁ。」

「師匠、怖い人?」

「怖いっていうか、理解できないから…もしこれが原因でキレたら斬られる…。」

自分で言っていてゾッとした。

あの頭のおかしい爺が人を斬るために剣を振るなんて…。

「考えないようにしよう…。」

「現実逃避ですね、勇者さん。」

「あ、後ろ。」

アビたんが右手を上げ、ピッと人差し指を俺の後ろに向ける。


「うひゃぁぁぁあ!師匠!無実です!俺はただ刀を探していただけで別に師匠の刀を横取りするつもりなんかなかったんです!」


咄嗟に前転し、急いで立ち上がりながら振り向き、手に持っていた刀を構えて前を見る。


そこには誰も居なかった。


「後ろ!?いや、と見せかけて上か!」

気配を探る、しかし、何も感じることができない。


「師匠!本当に!無実なんです!なんでしたら今からあの筋肉爺さんに師匠に刀を渡すように言いますから!お願いだからせめて気配くらい出して!」


「おい、何やってんだ、小僧。」


後ろから声がかかる。声からして筋骨隆々の爺さんだろう。

「下がって!師匠は本気だ!というか、その刀もう、師匠に渡して!多分それで解決するはずだから!」


刀を構えて必死に周囲の気配を探る。


「あの、勇者さん。」

キューロックさんが静かな声で語りかけてくる。


「もしかしてもう俺の首飛んでる?!ねぇ!死んだの?!斬れ味が良すぎて死んだことに気付いてないだけなの?!」


「嘘、だった。…ごめん。」


黒髪の少女は申し訳なさそうにそう言った。


「あ、嘘か。」

ドサリと地面に倒れる。

緊張の抜け方が違う。

魔王と戦ったときだってもう少し余裕があった。

いや、それは嘘だな。


「あ、勇者さんが死んだ。」

「アルレイ?」

「おい、本当に大丈夫かよ!?」

黒髪の少女が駆け寄ってくる。

刀を左手に持った爺さんも一緒だ。

金髪の女性だけはどこか面白そうに事態を見守っていた。


あとでなんかしてやろう。


とりあえず今は、


生きていることに感謝したい。

お読み頂きありがとうございました。

片翼の天使を聞きながら次の次の次あたりのプロットを書いていたのですが、ちょっとまずい予感がします。

しかし、まぁ、あれはあれで味があるか、と投稿される日が来、ました。(追記)

ではまた次の投稿でお会いしましょう。

皆さまのご来場を心よりお待ちしております。

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