18:仲良し組
どもです。
三人で地面を駆けてホリアス達のところに向かっていると
「とゆーか、白髪先行っててよくない?儂らより早いじゃろ」
「あ、たしかに」
「そういうことを言わないでくれよ?私一人じゃできることに限りがある、ホリアスとトーレラが居るなら二人は無事だろう」
「遠回しにエレンス達は死んでるかもねって言ってるよねそれ」
「ははは、どうかな」
「こんなやつと戦ったの、儂?本当災難じゃったな……」
「あ、見えてきた」
ダラダラ話していると金髪の男とその仲間達が黒い影達と戦っていた。
黒い影は残り二体となっていた。
地面に焼け跡があるのでホリアスも戦っているのだろう。
「あれ、ホリアスどこ?」
肝心のホリアスが見当たらない。
「飛んどるな」
「飛んでるよ」
上を見ると、一人の少女を抱えたまま自分の周囲に火の玉を浮かべている男がいた。
「魔王?」
「確かにそれっぽい雰囲気あるの」
「そうなるとトーレラは拐われたお姫様かな?」
「喋ってないでさっさとやれ、近接組!」
「わー、怒ったー」
「きゃー、儂怖〜い」
「ははは、怒ってるね」
何かアマリアのテンションがおかしい。
いつもはもうちょっと冷静な気がする。
「さて、アルレイに銀色、残り二体だ」
「おい、白。お前働く気ないな?」
「そんなことはないさ、補助を掛ける」
「……ロリマー、もう諦めようよ。あの子なんかテンションおかしいって」
「誰がロリマーじゃ!ロリと魔王でロリマーって?上手くないわバカ!町ごと吹き飛ばすぞ!」
「わー、儂ちゃん怖ーい」
「さっさと動け!!」
「……そろそろ焼き切られそうなので動こうか」
「儂じゃああの短剣の」
「そうなると俺は槍女か」
槍女……
「まあいいか。」
息を吸う。
「エレンス!横から失礼します!」
エレンス達が離れる。
三歩、距離を詰める。
剣を振る。
横で銀色の魔王が短剣持ちの影を盛大に打ち上げていた。
そして、落ちてくるのを待って拳に魔力を溜め、殴りつけて爆発させた。
「派手だなぁ」
「まぁ、そっちのはどっちかっていうと地味じゃな」
首がポトリと落ちた。
影達はそのまま消えていった。
「お疲れさまでした、と。エレンス!そっちは大丈夫だったか?」
「あぁ、問題ない。むしろ君こそ平気だったのか?」
「あー、向こうは本気じゃなかったから」
「そうか……それではな、アルレイ。私は君に追いついてみせる」
「……待ってるよ、第一勇者」
彼は颯爽と去っていく。
それに続いて彼の仲間達も去っていった。
「よっと、そっちは大丈夫そうだな、相棒」
「そっちこそ余裕そうだったな?相棒」
「余裕ねーよ、俺に町の近くで戦わせるとか頭沸いてんだろ」
「仕方ありませんよ、ホリアス。ここを守る必要があったのですから」
「そーかも、しんねーけどよ」
「あー、イチャイチャしやがって、やっちゃえロリマー」
「だから違うって言っとるじゃろ……」
「あれ、元気ないじゃん?お腹空いた?」
「お腹が空いて力が出ないんじゃー、って違うわ!儂ってば疲れたのー。見とらんから分からんかも知れんけど、大激突だったんじゃよ?」
「ほえー、マジかーすげーなロリマー」
「もうそれでいいわい……ぐすん」
「泣くなよ銀ロリ、そういえば名前ないの?」
「今更?!儂ってば知っててそうやって呼んどると思ってたんじゃけど?!」
「え?知らないけど……」
「いや、まぁ、確かに。儂別にあんまり名乗らんし知らないならそれは無理もないと思ったけれども、なう。………んー?あれ、それってつまり儂に興味津々ってこと?いやー、愛されるって辛いなー、儂の魅力でイチコロじゃったかー」
「んーで?名前は?」
「シルじゃ」
「シルバーから取った?」
「分かりやすいじゃろ?」
「確かに分かりやすいけれども……というか自分で付けた?」
「そーじゃの、角族は基本名前なんてそんなに必要ないからの。付けたきゃ付けるし好きにしとる」
「なるほどねぇ」
「アルレイ、とりあえず危機は去ったようだし、みんな疲れてるだろうから宿を取って休もう」
「この町宿少ないらしいんだよなぁ、急がなきゃ」
「空いてなかったら今から隣町に出発じゃな」
「おいおい、そりゃ勘弁してくれ」
「……町に被害が出なくてよかったです」
「あ、宿取っときましたよ?勇者さん」
「有能!好き!」
「単純じゃなぁ……」
「とゆーわけで二人部屋です!」
「なんだかシルさんと仲が良かったようで、それなりに日が空きましたね、勇者さん」
いつも通り、と言ってもいいのか分からないがキューロックさんとの二人部屋である。
「そういえば名前知ってたの?」
「知ってましたよ、興味無いようだったのでお伝えしませんでしたが」
「なるほどね。お気遣いどもです」
「どういたしまして」
彼女はペロリと紅茶を飲む。
「勇者さん?効果音が変です」
「だって今のは紅茶飲むんじゃなくてお辞儀するとこでしょ?ペコリって」
「なるほど、これでどうですか?」
そう言ってクッキーを食べながら下を向くキューロックさん。
「もうそれでいいです」
「そうですか、大人になりましたね勇者さん。私としてはもう一段階くらい盛り上げても良いと思いましたが」
「今日はお疲れちゃんです」
「なんだか返事も投げやりですね、そういうことなら早く寝ましょうか。そして早起きして予定を立てましょう」
「予定立てるって言っても、もう魔大陸行くくらいでしょ?」
寝る支度を整えながら話す。
「そうなりますね。やはりレベル高めからのスタートですから終わるのが早いです」
「相変わらず何言ってるか分かんないね。まぁ、そろそろメイリーに会えそうかな。」
「……そうですね。会えると思いますよ」
「会えるといいんだけどなぁ」
「生きて帰らないとですね」
「よし、寝る。おやすみ!」
「えぇ、おやすみなさい勇者さん」
今日は静かな夜だった。
「おはようございます、勇者さん。起きて下さい、馬車に乗り遅れますよ?」
「ねむ」
なんとか目を開け、体を起こす。
「じゃあ、俺はとりあえずアマリアに話してくる。んで、後はよろしくしてくるよ」
「それなら彼女は今食堂に居ますから、ついでに朝食を取ってきたらどうでしょうか?」
「はいさー」
白髪の少女が一人静かにパンを食べていた。
「おはようアマリア」
「おはようアルレイ、それで、もう魔大陸へ向かうのかな?」
「うん、特にこっちでやること無さそうだし。みんなに伝えてきてもらってもいい?」
「あぁ、丁度食べ終わるところだし構わないよ」
「アマリア」
「何かなアルレイ?」
「これ、よかったら貰って?」
そう言って紫色の髪飾りを渡す。
彼女はそれを受け取ると
「ふむ、ありがとうアルレイ。……どうかな?……落とすといけないから付けるのはよそうかな」
それを髪に付けてから鏡を取り出して確認し、外してポケットに仕舞った。
「似合ってた」
「それはよかったよ。それじゃあ馬車に遅れない程度にゆっくりしているといい」
「ありがとー」
彼女は食堂を去っていった。
トテトテとフードを被ったロリ魔王がやってくる。
「あー眠い眠い。馬車に乗る日ってどうしてこんな朝早いんじゃろな?」
「馬車に乗ってる時に夜になると前見えなくて困るからじゃない?」
「魔法で照らせるじゃろ?」
「害獣が寄ってくるとか」
「あー、そういうもんかの」
彼女は買ってきたスープをちびちびと飲んでいる。
「それにしても、魔大陸か。山越えなきゃかなぁ」
「海は……まぁ、ちっと、面倒じゃよな」
「うん、海は喰われそうで嫌かな」
「儂も海行くくらいなら山越えるのからの。あっちの方がまだいいわい」
「とはいえ、山もなぁ。害獣が大変なんだよなぁ」
「しょうがないじゃろ。行かないという選択肢があるなら儂はそれでいいけどな」
「ないよねぇ」
「じゃあやっぱりしょうがないの」
「……洞窟とかないの?」
「儂らからしたら侵入がちょい簡単になるだけでいいことないわ」
「角族って頑丈だし、それに比べて人族は……まぁ、角族が入ってきても困るから作らないよなぁ」
「ほれ、もうちょい気合い入れろ。そんなんじゃと山でお迎えが来るぞ」
「それは勘弁願いたいね」
パシッと頬を叩き目を覚ます。
「さて、うちの有能少女が色々やってくれてると思うしそろそろ動きますか」
「ほんとお主役に立たんな」
「……否定はしない」
フードを被った少女は小さくため息を吐いた。
お読みいただきありがとうございました。
次の話はちょっと閑話みたいな感じにしようと思います。